大学初年度学生のための微分積分学の教科書は数多く出版されており, それぞれが特徴を持っている. 本書ではまずはじめにいわゆる数学的な厳密性をある程度犠牲にして, 概説的な形で微分積分の基本的な事柄について述べた. その後あらためて数学的に厳密に考えてみるように章の配置を考慮した. このため例えば第 6 章は場合によっては講義の最後にまわすあるいは理工学部系の学生であれば学生の自習にまかせるなどの読み方も考えられるであろう. このように本書は微分積分学の入門書として適当であることを第 1 目的として書いた. したがって本書は,工学部や理学部など理工系 1 年次学生のための教科書としてのみではなく, 数学になじみの薄い学生のための教科書としても適当であると考えている. 今述べたように,数学の入門書として適当であることを第 1 に考えたために数学書としては完結したものではなく, 数学的な厳密さという点では様々な点で不備があるかもしれない. また同じ定理を場合によっては 2 度以上述べるなど無駄な点も多い. しかし,筆者はこのような無駄は数学教育においては大切なものだと考えている.

この数学基礎コースの教科書の企画が出されてから長い年月が過ぎた. 当初は,1 年くらいで完成するつもりであったが生来の怠け者であるために, 完成がずいぶんと遅くなりサイエンス社をはじめとしこのシリーズの他の執筆者諸兄にも迷惑をおかけした. ここに慎んでお詫びしたい.

本書は当初は長瀬だけで完成することを考えていたが途中から芦野が執筆に加わり様々な点で改良を加えた. さらに,大阪大学理学部数学科の学生飯森洋一君は原稿を詳しく読み詳細な点に至るまで本書の改良と完成に協力してくれた. サイエンス社の田島伸彦氏には本書の完成まで気長に待っていただきさまざまなご忠告を頂いた. さらに同社の鈴木綾子氏には本書のレイアウトや校正など細部にわたって完成にご尽力いただいた. これら本書の完成にご協力いただいた人たちに対して感謝の意を表したい.

1999 年 10 月

長瀬 道弘

芦野 隆一

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