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ウェーブレットの基礎

各章ごとの内容

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各章ごとに内容を概観しよう.

前書き

Meyer が本書の内容に関連した話題の概観を述べており,重みがある.

序文

導入,本書の哲学,本書の内容,読者への注意にわけて述べており,平行移動(translation)と拡大縮小(dilation)という作用素とウェーブレットの関連を述べた導入はユニークであるが,理解するにはある程度の関数解析の知識を必要とする.

第1章 L2(R) の基底

短時間フーリエ変換を離散化して得られる正規直交基底があったとしても,基底関数のよい滑らかさとよい局所化は同時には満足できないことを示す Balian-Low の定理から始め,Coifman と Meyer による smooth projenction の理論をもとに,サイン関数のような関数をうまく使って,任意の滑らかさとよい局所化を同時満たす正規直交基底を構成する.さらに,Lemarie と Meyer による正規直交ウェーブレットを構成する.また,folding operator の観点から smooth projenction を説明する.これらの説明は,ユニークであり,正規直交ウェーブレットを関数解析的に理解する上で大切である.

第2章 多重解像度解析とウェーブレットの構成

ウェーブレットの構成を統一的に説明する標準的手法である多重解像度解析の方法を丁寧に説明する.多重解像度解析の定義に現れるいくつかの条件の間の関係を調べ,これらの条件が独立でないことを示している.Daubechies のコンパクト台を持つウェーブレットを周波数領域における解析を重視する Meyer の流儀で構成する.内容は非常に標準的である.

第3章 帯域制限ウェーブレット

帯域制限,つまり,フーリエ像がコンパクト台を持つウェーブレットについて詳しく述べている.また,Lemarie と Meyer のウェーブレットもこの観点から再び述べる.これらは,7章のウェーブレット理論における新しい特徴付けにつながる説明であって,本書のユニークな点である.

第4章 ウェーブレットのその他の構成

Haar のウェーブレットのある種の一般化である Franklin のウェーブレットとスプラインウェーブレットを述べている.本書のように,Franklin のウェーブレットについて丁寧に述べている本は希有であろう.

第5章 ウェーブレットによる関数の表現

関数のウェーブレット展開とその収束について述べている.本書では,ウェーブレット基底をヒルベルト空間の正規直交基底としてのみならず,バナッハ空間における無条件基底として扱う.このことは,ウェーブレットを使って各種関数空間を特徴付ける基礎となる.バナッハ空間における無条件基底を丁寧に述べたウェーブレットの本としては,本書が最初であろう.ルベーグ空間における収束や各点収束が扱われ,ハーディ空間などのいくつかの関数空間も導入される.この方面の非常によい入門となる本書の優れた章のひとつである.

第6章 ウェーブレットを使った関数空間の特徴付け

Shannon の標本定理から始めて,Littlewood-Paley の理論を経て,各種関数空間のウェーブレットによる特徴付けを述べている.これには Calderon-Zygmund 作用素を使うので,結果として,これらの重要な作用素の研究にどのようにウェーブレットが使われるかを見ることができる.

第7章 ウェーブレット理論における特徴付け

著者たちの新しい結果を含む正規直交ウェーブレットの特徴付けを与えている.基本的な関数方程式により,多重解像度解析やローパスフィルタ,スケーリング関数の特徴付けも与えている.これらの結果はウェーブレットのフーリエ像を調べることにより導かれ,本書の主要な特徴であるフーリエ解析を駆使して行うウェーブレット理論の面目躍如の感がある.

第8章 フレーム

特にフレームとそのウェーブレットに対する重要性に注意を払い,もっと一般のシステムの扱いを通して,別のタイプの基底をもっと与えている.関数を分解し,再構成することができる方法に特に注意を払っている点が評価できる.また,Balian-Lowの定理を拡張している.ただし,双直交ウェーブレット(biorthogonal wavelet)に関する記述は章末に少しあるだけである.これは本書の主題からはそれるし,紙面の関係からも仕方がないことであろう.

第9章 離散変換とアルゴリズム

ウェーブレット理論の応用に関連し,重要なある話題を述べている.数学的理論を離散信号に適応するとどうなるかを示している.コンピュータのアルゴリズムに適した普通の取り扱い方とは違う扱いで,離散フーリエ変換と離散コサイン変換を展開する.また,ウェーブレットの分解と再構成のアルゴリズムを説明し,最後にウェーブレットパケットで締めくくっている.ウェーブレットの数値解析的応用を紹介するユニークな章として,注目に値する.

参考文献

フーリエ解析を駆使して行うウェーブレット理論に必要な数学の文献は網羅してあるといえよう.

著者名索引

丁寧な著者名索引が評価できる.

索引

必要な項目は網羅しているといえよう.

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