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研修内容の説明
(物理分野)
1 液体窒素を用いた様々な演示実験 神鳥和彦
マイナス196度の液体窒素を用いて、様々な物質の状態変化に関する演示実験や、さらに気体や液体といった物質の状態変化に関する演示実験について実習します。この実験を通じて、生徒に対しよりインパクトのある授業の創成を図る事を目的とします。水が氷に変化するのは発熱反応であること、気体は温度によって大きく体積を変化させること、気体はさらに冷やすと液体状態になること、空気を冷やすと液体空気となり酸素も液体になること、ニクロム線を液体窒素で冷やすと電気伝導度が上がることを学び、これらの知識を授業に反映させることができます。
2 ミクロンからナノへ(光学顕微鏡を超えた微細構造) 辻岡 強
微細な物体の観察には学校の理科実験室では光学顕微鏡が用いられています。しかし最先端の科学では、光学顕微鏡の能力(ミクロン程度)をはるかに凌駕する様々な顕微鏡が用いられます。本講義では、その代表的な機器である走査型プローブ顕微鏡を用いて、その解像度(ミクロン程度)を超えたナノの世界を観察します。これにより、科学の奥深さを学んでいただきます。
3 電気の実験 鈴木康文
エジソンによって電球が発明されて130年余りが経過しました。この間,電球の改良、蛍光灯、LED照明の開発などを経て、均一な明るさを持つ平面照明、フレキシブルな曲面による照明なども考案されるようになってきています。本実験では,身近に手に入る材料を用いて、次の2つの実験を行います。@照明器具としての電球・電球型蛍光灯・LED電球の「電圧−電流特性」比較、照度比較、分光シートを用いたスペクトル比較。A交流と直流の理解のため、交流から直流を作る整流器の実験。反対に、直流から交流を作るインバータ回路を用いた実験。
これにより、現在の送電方式および。直流発電機や太陽電池の仕組みを理解するとともに、近未来にスマートグリッドやスマートシティとして計画されている街の電気について学びます。
4 半導体の発光 中田博保
発光ダイオード(LED)として用いられる半導体の発光現象を調べます。市販の発光ダイオードのスペクトルを測定するとともに、多孔質シリコンや窒化ガリウムに紫外線レーザを照射して発光を観測します。観測を通して、物質と光の相互作用の一例について学び、広く用いられている発光ダイオードの原理についても学習します。光が示す多くの性質の内で重要な現象である発光についての理解を深め、また基本的な光学部品である鏡やレンズの使用の練習にもなります。
(無機・物理化学分野)
5 サイクリック・ボルタンメトリーによる金属錯体の酸化還元特性 横井邦彦
鉄(II)イオン錯体の酸化還元反応の進みやすさが、配位子の種類に応じて変化することを実験によって確かめます。鉄(II)イオンがo-フェナントロリンと錯体を生成した場合とシアン化物イオンと錯体を生成した場合で、炭素電極上での酸化還元反応がどの様に進行するのかを実験で確かめます。標準酸化還元電位が配位子の種類に応じて変化することを実験的に認識します。鉄(II)イオンが同じでも、結合する配位子が変われば酸化還元特性が変わることが見られる良い実験例です。高等学校の教科書ではイオン傾向として定性的に記されている内容ですが、酸化還元電位としてとらえれば定量的な意味があらわれることを知ることのできる内容です。イオン化傾向で「鉄」と言えば酸化還元反応の進みやすさが変化しないように思いがちですが、共存する配位子に応じて酸化還元反応の進みやすさが理解できる好例です。
6 比色定量法による河川中のリン酸イオン濃度測定 久保埜公二
大学周辺の河川水中のリン酸イオンの濃度を比色法、並びに光度法により測定し、国が定める環境基準値と比較することで、人間の活動と地球環境とのかかわりについて考察します。比色法は簡便な方法であり、目で見て対象となる成分の量を判断することができることから、演示実験として複数の河川水のリン酸イオン量を簡単に比較することができます。これによって生徒の環境保全に関する興味や知識を広げることができます。また、濃度測定に関する実験は滴定法が一般的ですが、比色定量法は滴定法以外の方法として教材開発に応用可能です。なお、学校やご自宅近隣の河川水(100 mL程度)をペットボトル等に入れてお持ちいただければ、その中のリン酸イオンの濃度を測定することができます。
(有機化学分野)
7 紫外可視分光光度計を用いたアゾ色素の色調測定 織田博則
染料には天然のものと、人間が合成したものとに大別されます。天然染料には植物の根、茎、樹皮、実、花などに含まれる色素やえんじ虫や赤にしなどに含まれる色素などがあります。合成染料は天然染料と違い、より堅牢で安価であることから、現在は天然染料に取って代わっています。また、染料の機能を利用した機能性色素は、液晶や情報記録材料用色素(カラーフォーマー、フォトクロミック色素)、更には太陽エネルギー変換色素として展開され、現在精力的に研究されています。
ここでは@基本的な酸性染料であるオレンジIとオレンジIIについて分光学的な色調の検討。Aナフトール染色技法を用いた繊維上での有機反応(ジアゾ化、カップリング反応)の実際。BpH指示薬(メチルオレンジ;機能性色素)を用いた繊維の染色と学校現場での有効利用法の検討。Cカラーフォーマー(機能性色素)の環境材料としての有効利用の事例と原理紹介、その色素を用いた実験。Dフォトクロミック色素(機能性色素)を環境材料として有効利用した事例紹介及びフォトクロミック色素を用いた実験。以上5点の内、何れか1点を選択していただき実習を行います。準備の都合上、この講習をご希望いただける方は数日前に、@〜Dの内どのテーマを選択されるか、センターまで連絡願います。
8 フェノールフタレインとラインマーカに使用されている色素の簡便な合成 谷 敬太
無水フタル酸とフェノール類から、酸塩基指示薬で有名なフェノールフタレインやラインマーカに使用されている黄緑色の蛍光色素を合成します。表題化合物の合成を通じて、基本的な実験器具の取扱いと実験操作についても説明します。本実験で行う溶液の色の変化を通して化学に対する理解を深めるとともに科学的な考え方を養います。合成に使用する器具は試験管、試験管はさみ、ガラス棒、目安ピペット、ロート、ろ紙、メスシリンダーとアルコールランプだけなので、理科室で十分に生徒が実験することができます。この実験は劇的な色の変化に大学生でも興味を示すほどなので、中学生や高校生にとってはより一層強く印象に残る実験と言えます。
9 ポリスチレンのリサイクル 安積典子
ポリスチレンにブタンなどのガスを吸収させ、熱を加えると吸収したガスが膨張し、発泡して発泡ポリスチレン(発泡スチロール)になります。発泡ポリスチレンやポリスチレン容器の小片を、柑橘類の果皮に含まれるリモネンや、エコソルブなどの回収用減容材中に入れると、溶媒と混和して脱泡、ゲル化します。ゲル化したポリスチレンから溶媒を除いてペレットやシートに加工し、材料として再び利用するのがポリスチレンのリサイクルシステムです。学校現場でより簡単に行える方法で、ポリスチレンの性質とリサイクルを体験します。
(生化学分野)
10 身近な食品の化学 井奥加奈
化学は私たちの食生活に深く関与しています。特に食品加工には食品成分の化学的特徴を生かしたものが多いです。原料から、よりおいしいもの・保存の効くものを作り出すために、ヒトは従来からさまざまな工夫を行ってきました。今回は、タンパク質の性質を利用して、スキムミルク(脱脂粉乳)からカゼインを分離します。さらに得られた化合物がカゼインであることを証明するためにタンパク質の定性反応とリンの定性反応を行います。リンはカゼインがリン酸などとミセルを形成することを証明するものです。身近な生活への応用としては、牛乳からカッテージチーズを調製するという簡単な食品加工の実例と、食品添加物を簡単に作ってみる実験をやりたいと思います。銅クロロフィルは、野菜によって同じ緑色でも違った緑色ができ、ガムなどの成分表示に書いてあるので興味を持ってもらえるのではないかと思います。
11 分光光度計を用いたタンパク質濃度の測定 鵜沢武俊
生体において重要な役割を果たし、また身近な食品や飲料などに含まれているタンパク質を試料から抽出し、その濃度を分光光度計で測定する実験を行います。そして試料に含まれるタンパク質の濃度を知り、機能を発揮する為に必要なタンパク質の量を具体的に明かにします。この実験を通じて、身近な食品などを用いて、生徒がより興味を持てる授業を行う材料を提供することを目的とします。タンパク質濃度の測定は面倒なものであると思われがちですが、近年は高等学校においても広く普及してきた分光光度計を使用すれば、比較的簡単にタンパク質濃度が測定できることを示すことが出来ます。特に、様々なタンパク質濃度の測定方法の中で、ブラッドフォード法を使うことで、感度良く、短時間の内にタンパク質濃度を測定することが可能であることを示すことが出来ます。その為、大学に比べて短い高等学校の授業の時間の中でも、生徒に実験を行わせることが可能です。
12 プロテアーゼを用いた酵素実験 川村三志夫
プロテアーゼはタンパク質を分解する酵素であり、中高の理科の教科書に記載されて来たように、ペプシンやトリプシンに代表される動物の消化酵素が有名です。また、近年、パイナップルやキーウイ、バナナなどの果物にプロテアーゼが含まれることが一般に知られるようになり、果実の切片とゼラチンゼリーを使った定性的な酵素実験が高校の教科書に載るようになっています。今回、身の回りのプロテアーゼを含んだ材料を用いて定量的な酵素実験を企画したいと考えています。その際、デジタルカメラとフリーの画像解析ソフトを活用した簡易吸光度測定を試みたいです。
13 薬物の代謝実験 片桐昌直
高校化学IIでは医薬品が取り扱われていますが、化学系教員にとって医薬品に関する経験等はほとんど無いのが現状と思われます。そこで、大腸菌等で作らせたヒトの薬物代謝酵素を用い、薬物の代謝反応を実際に行わせ、HPLC等での分析を行います。薬物の取り扱い、薬物代謝の研究の一端を見て頂き講義に生かして頂くことを目的としています。医薬品に対する理解が深まると同時に、同じく化学IIで扱われる酵素の活性が実際どのように測られるのかを実際に体験して頂き、実社会と教科内容の結びつきを理解し、授業に生かして頂きます。
(生物分野)
14 走査型電子顕微鏡を用いた生物試料の観察 出野卓也
走査型電子顕微(SEM)で撮影された写真は教科書や資料集でしばしば取り上げられていますが、光学顕微鏡と違ってSEMは中高の教育現場にほとんど普及していません。そこで、こちらで用意した生物試料、あるいは受講生が観察を希望する試料をこちらで作製し、当日(SEM)を用いて実際に各自に観察してもらい、受講生の知見を広げてもらいます。生徒に電子顕微鏡での観察を実際に体験してもらうのは一般に難しいですが、今回は昨年暮れに導入された可搬型SEMを用いますので、将来的には教室への出前SEMも可能になると考えております。なお、観察対象は生物試料以外でも可能です。
15 蛍光顕微鏡による細菌の観察 広谷博史
細菌のDNAを蛍光染色して,観察を行います。環境水に含まれる細菌をメンブランフィルターを用いてろ過し,細胞数の計数を行います。環境中の細菌は分解者としての機能を持つ事を学校では学習しますが,実際どれくらいの数が存在するかを実感する機会は少ないです。また,自然界には細菌以外の微粒子が多く存在することを経験することにより,自然をとらえる視野を広げられます。
16 FISH法による遺伝子の可視化 向井康比己
植物の根端細胞の染色体標本にFISH法で2種類の遺伝子のマッピングを行います。蛍光顕微鏡による観察と画像解析を行います。遺伝子が染色体上に並んでいることを目で確かめることができるとともに、遺伝子が相同染色体上にそれぞれ存在し、姉妹染色体分体上のそれぞれにも乗っていることが把握ができます。遺伝子という抽象的なもの可視化することによって、遺伝子というものが粒子であるということを生徒に示すのに良い実験例です。また、遺伝地図と物理地図の違いや、遺伝子が染色体上に並んでいることを示す教材にもなります。
17 シークエンサーによるDNA塩基排列の決定 鈴木 剛
DNAの塩基配列(アデニン, A; グアニン, G; シトシン, C; チミン, T)の並びをシークエンサーを使用して決定します。材料には植物のDNAをベクターに組み込んで大腸菌にクローニングしたものを利用します。当日は、サンガー法(ジデオキシ法)により反応させながら蛍光を取り込ませたサンプルを、シ ークエンサーという機械にかけます。シークエンサーではサンプルを電気泳動しながら1塩基ずつの並びを蛍光検出により明らかにできます。受講者は先端のテクノロジーに触れつつ「DNA配列はどのようにして決定するのか」を体験でき、ゲノム時代の塩基配列決定がサンガー法と蛍光自動シークエンサーにより行われてきた背景を理解し、授業に役立てることができます。
(地学分野)
18 ダイヤモンドダストと雲を作る実験 小西啓之
雲粒やダイヤモンドダスト(氷晶)の発生および成長など降水形成過程を理解するために、簡単な実験装置を用いた水の蒸発、水の凝結・凍結、水蒸気の昇華凝結など水の相変化を示す実験を行います。これらの水の相変化の過程は、見た目の状態の変化だけでなく同時に熱のやりとりもあることを実験から学び、降水過程が地球の熱循環にも大きな影響を与えていることを学びます。実験はこれまで出前授業や出張授業でも行い、児童や生徒が興味を持つ内容です。使用する実験器具は、既に学校にある器具やホームセンターなどで安価で購入できる物品からできていますので、各学校で容易に使うことが出来ます。
19 小型天体望遠鏡の仕組みと操作法 松本 桂
高校地学(天文分野)の観察・実習で使われる小型赤道儀式望遠鏡の仕組み、組み立て方、使用方法について実習を行いながら解説します。天球上での天体の位置の表し方(赤道座標、地平座標)の説明から始め、望遠鏡の基本用語、概念の解説を行います。次に、実際の器械の組み立てを行い、天体観察を行う前に必要な準備作業および注意事項の解説を行います。実習の中で天体観察の際に選択する倍率の概念を解説し、対象に応じて最適な倍率(アイピースの焦点距離)を選ぶことが重要なことを確認します。また、授業で使う場合の注意点として、太陽を直視しては危険なこと、設置場所を選ぶ場合に考慮に入れるべき点などを強調します。授業等での使用に際して十分対応できる内容をまとめて教授します。また2012年5月の金環食に際し、日食の観察法についても扱います。
20 偏光顕微鏡の原理と鉱物測定法 廣木義久
中・高等学校での鉱物鑑定を実施する為,本研修では簡単な偏光装置を組み立て,これにより偏光顕微鏡の原理を説明します。その後で,実際に偏光顕微鏡を使って,身近にある主要造岩鉱物の鑑定を行います。これにより、教員が自信をもって生徒に鉱物の指導をすることができるようになることを目的とします。
(応用科学分野)
21 草木染めの実際と教材化 任田康夫
タマネギ、および蘇芳を用いて、布(大型ハンカチ)、紙(障子紙、濾紙)に草木染めを行います。また、タンニン酸と塩化第一鉄によりブルーブラックインクを作り、インクとして使用できることを確かめます。草木染めの媒染剤の役割とブルーブラックインクの塩化第一鉄の役割が類似したものであることを実験的に認識します。本格的な布への草木染は時間がかかりますが、使用した紅茶ティーパックの包み紙は、薄い塩化鉄(V)溶液で明瞭に発色します。また、あらかじめタマネギやログウッドに浸しておいた障子紙は、薄い媒染液に浸すだけで簡単に発色し染色模様を作れます。これらは草木染めにおける媒染剤の効果を現場の教室で簡単に演示できる一つの方法です。
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