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研修内容の説明
全体研修 藍染を科学する。インジゴの色は何色か? 任田康夫
科学とは、複雑で多様な自然現象の奥に隠れている自然法則を、科学的思考と実験により明らかにする人間活動のことです。何気ない身近なことでも科学することができる例として、インジゴという染料で染められる藍染めで得られる様々な色、即ち、藍白、覗き色、花田色、紺色、納戸色、浅葱色等の様々な色合いの違いがどのようにして起こるのかを科学的に解明する方法について、簡単な実験を交えながら分かりやすく説明します。
個別研修
1 液体窒素を用いた様々な演示実験 神鳥和彦
マイナス196度の液体窒素を用いて、様々な物質の状態変化に関する演示実験や、さらに気体や液体といった物質の状態変化に関する演示実験について実習します。この実験を通じて、生徒に対してよりインパクトのある授業の創成を図る事を目的とします。
2 ミクロンからナノへ −光学顕微鏡を超えた超微細構造をみる− 辻岡 強
微細な物体の観察には学校の理科実験室では光学顕微鏡が用いられています。しかし最先端の科学では、光学顕微鏡の能力(ミクロン程度)をはるかに凌駕する様々な顕微鏡が用いられます。本講義では、その代表的な機器である走査型プローブ顕微鏡を用いて、その解像度(ミクロン程度)を超えたナノの世界を観察します。これにより、科学の奥深さを学んでいただきます。
3 オパールの光学測定 中田博保
オパールは虹色に輝く宝石であり、最近人工のオパールを光の制御に使用する試みやピンクオパールの作製がおこなわれています。このように最先端技術と関係している美しいオパールの実験を行います。見る角度が異なると色が変わる性質は遊色と呼ばれていますが、これは直径数100nmの石英の小球が規則正しく配列している構造のために起こります。自作したオパールの反射スペクトルを測定し遊色が構造とどのように関係しているかを考察します。
4 中・高等学校で作れる第1世代CT(Computed Tomography)モデル 鈴木康文
医療用X線CTは,人体を挟んで配置したX線源と検出器を回転させ,測定したX線吸収率から人体の断面図を作成しています。現在はコンピュータが発展し,CTも第5世代に至っています。そこでは,膨大な量のデータを瞬時に処理していますが,物理的には単に線源と検出器を用いて透過量を測定しているだけです。この講座では,中・高等学校で比較的簡単に手に入る真空度計測用のガイスラー管を放電させX線源とし,これに対面した位置にガイガーカウンターを配置した簡単な実験装置を使います。試料を回転・左右し測定したX線の透過量をサイエンスワークショップを経てノートパソコンに取り込みます。その結果から試料の断面図を作成し、2,3の断面図を重ね合わせて三次元的な形を推察します。装置の作り方,生徒への教育利用について話しながら実験します。
5 サイクリック・ボルタンメトリーによる金属錯体の酸化還元特性 横井邦彦
高校の化学の教科書で定性的に「イオン化傾向」と説明されている内容は、酸化還元電位を用いて定量的に理解できます。金属錯体や有機化合物の酸化反応や還元反応の進みやすさについて、電極を通して流れる酸化電流や還元電流を測定することで実感できます。「イオン化傾向」をはじめとして、電池や電気分解等の分野の授業改善を図ることを目的としています。
6 RNA構成物質の構造と分子モデルリング 久保埜公二
単結晶を試料とするX線回折測定は、有機物・無機物を問わず、結晶性化合物の構造を決定することができます。この研修では表記装置による測定から解析までの手順を、RNAの構成分子であるリボヌクレオシド(シチジン)を用いて分かりやすく解説します。さらにデータベースからのファイルを用いて、分子モデルをパソコン上で作成する方法について説明します。
7 FT−IR(赤外吸収スペクトル)の原理と温暖化ガスの測定 任田康夫
地球温暖化の原因は、大気中の二酸化炭素を始めとする温暖化ガスが増加し、地表からの赤外線を吸収するためである、と説明されています。この研修では、分子が赤外線を吸収するしくみと、それを測定する赤外吸収分光光度計の原理について説明します。また、二酸化炭素、水蒸気やブタンなどの温暖化効果を持つガスの赤外吸収スペクトルを実際に測定し、上記の理論の理解の一助とします。また、薄膜や固体試料の測定方法についても説明します。
8 CHN元素分析の測定原理と実際 安積典子
高校の教科書に載っている元素分析は、試料を燃焼し発生した水と二酸化炭素、窒素の質量を測定する古典的なプレーグル法です。しかし、現在一般に行われている元素分析法は、その後進歩し、試料を燃焼し水と二酸化炭素、窒素を発生させる点では同じですが、それらの質量を直接測定するのではなく、気体の熱伝導度として測定しています。この研修では本学の研究教育で使われている装置を用い、実際に試料の分析を行い、現代的な元素分析の合理的な方法を実習により説明します。生徒にとって概念的な存在である「元素」を具体的に物質として認識させる一つの教材として、本研修は教育現場で活かすことができると考えています。
9 紫外可視分光光度計を用いたアゾ色素の色調測定
織田博則
基本的な酸性染料であるオレンジI、あるいはオレンジIIについて分光学的な色調の検討を行い、更に色素の合成法についても習得します。この実験を通じて、生徒達に色素の持つ性質と、生活への有効利用性の理解を図ることを目的としています。
10核磁気共鳴装置を用いた有機化合物の構造決定 西脇永敏
核磁気共鳴装置(NMR)の原理の説明および、実際の測定を行ない、高校の教科書に出てくる有機化合物の構造決定が意外に難しいことを体験していただきます。また、そのような技術がMRIとして医療診断 技術に利用されていることを説明します。核磁気共鳴の原理と利用方法を理解することは、科学技術教育を行なう際に大いに役立つものであると考えます。
11旋光度計による光学異性体の分析とハイテク材料への応用 堀 一繁
高校化学の学習内容である「光学異性体」を、旋光計・融点測定器・分子模型を用いてその基本的性質を視覚的に実習します。さらに、「光学異性体」が医薬品・香料・食品添加物などの身近な物質だけではなく、現代社会を支えるハイテク素材にも応用されていることについて、旋光計などを用いて実習します。
12磁場型質量分析装置による分子量測定 谷 敬太
現在、有機化合物の分子量測定で最も信頼性の高い方法は磁場型質量分析計によってなされています。この研修では質量分析計の原理を簡単に説明した後、実際の測定(教科書にあるようなニトロ化合物やエステルの誘導体とフラーレン(C60)) を見ていただき、得られる情報について解説します。
13化学的視点からみた食品機能性の検証 井奥加奈
近年、植物性色素の一種であるフラボノイドは、生活習慣病を予防する物質として注目されています。しかし、健康面に重点がおかれ、フラボノイドそのものの性質に関する理解はまだまだ低いです。ここではフラボノイドの基本的な生理活性であるラジカル捕捉活性を測る実験、および、市販飲料中のフラボノイドを比色法により定量する実験を行い、食品機能という概念について紹介します。
14分光光度計を用いたタンパク質濃度の測定 鵜澤武俊
この研修では、生体において重要な役割を果たし、また身近な食品や飲料などに含まれているタンパク質を試料から抽出し、その濃度を分光光度計で測定する実験を行います。そして試料に含まれるタンパク質の濃度を知り、機能を発揮する為に必要なタンパク質の量を具体的に明らかにします。この実験を通じて、身近な食品などを用いて、生徒がより興味を持てる授業を行う材料を提供することを目的としています。
15走査型電子顕微鏡を用いた生物試料の観察 出野卓也
走査型電子顕微鏡(SEM)は、試料表面の微細な構造を大きく拡大して立体的に観察するのに適した顕微鏡で、SEMで撮影された写真は教科書や資料集でもしばしば取り上げられています。しかし、光学顕微鏡は中高の教育現場に広く普及しているのに、SEMは高価で大きな装置なので、教育現場にはほとんど普及していないのが現状です。そこで、あらかじめ受講生にSEMで拡大して観察してみたい試料やテーマを出してもらい、こちらで試料を作製し、当日各自に観察して、受講生の知見を広げていただくようにします。
担当者の専門からテーマが「生物試料の観察」となっていますが、観察対象は生物試料以外でもOKです。ただし、生物試料であれ、非生物試料であれ、試料の入手や適切な試料の作成が困難な場合があります。また、原理的にいくつかの制約がありますので、SEM観察に適していない試料やテーマもあります。それらの場合は再考していただく必要があります。
16蛍光顕微鏡による細菌の観察 広谷博史
自然界における物質循環を考える時、細菌は、目には見えませんが、大変重要な役割を果たしています。環境中の細菌は,環境条件によって,活発な増殖をしたり,代謝を行わない休止状態をとったりします。本研修では蛍光顕微鏡を使い,さまざまな状態の細菌細胞を区別できることを実習します。そして,環境中での生物の環境要因への応答について教科教育上で実践的な知識と理解を深めます。
17FISH法による遺伝子の可視化
向井康比己
FISH(Fluorescence in situ hybridization、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)法は、特定の遺伝子(DNA)をビオチンやジゴキシゲニン等の標識物質(ハプテン)で標識し、それに対応する染色体DNAにくっつけ、その位置を蛍光色素標識アビジンや抗体を用いて可視化する技術です。複数の遺伝子を同じに見ることができる最新の多色FISH法について紹介し、実際、蛍光顕微鏡を使って観察します。 高等学校の生物においては、染色体と遺伝子との関係や連鎖地図の作成のところでつまずく生徒が多いです。染色体地図は遺伝地図(連鎖地図)と物理地図とに分けられ、連鎖地図は染色体上の遺伝子の相対的距離をあらわしているが、物理地図は遺伝子を直接染色体上に位置づけたものです。FISH法は、染色体上に遺伝子が乗っていることを理解するのに非常に役に立つ技術です。実際高等学校での実験は難しいですが、写真等で生徒に見せることにより、遺伝子というものが実際染色体上に見えるので、生徒に感動を与えることができます。
18ダイヤモンドダストと雪結晶成長実験 小西啓之
簡単な実験装置を用いて雲、ダイヤモンドダスト(氷晶)、雪結晶を作る実験をそれぞれ行い、雨や雪が形成される降水のしくみについて学びます。これらの大気中で起こる水の相変化は、見た目の状態の変化だけでなく同時に熱のやりとりに大きな影響を与えており、地球表層の環境を決定する上で重要な役割を果たしています。本実習を通じて水惑星地球についての理解が深まると思っています。
19偏光顕微鏡の原理と鉱物鑑定法 山口 弘
中・高等学校での鉱物鑑定をテーマとし,簡単な偏光装置を組み立て,偏光顕微鏡の原理に説明します。その後で,実際に偏光顕微鏡を使って,身近にある主要造岩鉱物の鑑定を行います。これにより、教員が自信をもって生徒に鉱物の指導をすることができるようになります。
20小型天体望遠鏡の仕組みと操作法 定金晃三
現在の中学、高校には必ず、小型望遠鏡が設置されていますが、これを適切に操作して、観測したい天体を自信を持って観測できる教員はほとんどいないのが現状です。研修は日中に行いますが、望遠鏡の基本操作について、望む方角にある天体(物体)の観測の方法について具体的に指導します。
21塩基性染料の吸着性を利用した木材内部への着色と利用法 荒井一成
毛管圧浸透法を用いて,一部の組織だけを選択的に着色する木材内部への「部分着色」実験を行います。塩基性染料の中には,木材実質へ強い吸着性を示すものがあり,またその吸着の大きさにも違いがあります。この塩基性染料と木材との関係に着目して,液体の流動方向に2色,3色に,色分けされる着色法を,そのメカニズムを推察しながら共に学び,偶然にできる神秘的な紋様を楽しみます。出来上がった着色木材を利用して,インテリア向けの簡単な工作を行い,利用法についても検討します。
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