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研修内容の説明
全体研修 草木染の実習と中学・高校の教材への応用 任田康夫
人間は科学が発達していない古代から主に植物から染料を取り出し利用してきました。本研修では、タマネギ、紅茶、スオウなどの身近な、あるいは昔から使われている天然染料を用いて、布や障子紙を実際に染め、それが顔料を作る化学反応であることを、実験を通して理解していただきます。また、草木染の媒染の原理を応用して、植物染料をつけたろ紙や障子紙が、ペーハー試験紙としてや、錫(W)、鉄(V)、銅(U)、アルミ(V)イオンなどの検出試験紙として学校教育の現場で用いることが出来ることを示します。これらの研修により参加教員は中学・高校でイオンの説明を分かりやすく説明することができると考えられます。さらに、輪ゴム絞りや積み木による板締めの技法により紙や布に美しい模様をつける方法についても研修します。
個別研修テーマ
(物理分野)
1 液体窒素を用いた様々な演示実験 神鳥和彦
マイナス196度の液体窒素を用いて、様々な物質の状態変化に関する演示実験や、さらに気体や液体といった物質の状態変化に関する演示実験について実習します。この実験を通じて、生徒に対してよりインパクトのある授業の創成を図る事を目的とします。
2 ミクロンからナノへ −光学顕微鏡を超えた超微細構造をみる− 辻岡 強
微細な物体の観察には学校の理科実験室では光学顕微鏡が用いられています。しかし最先端の科学では、光学顕微鏡の能力(ミクロン程度)をはるかに凌駕する様々な顕微鏡が用いられます。本講義では、その代表的な機器である走査型プローブ顕微鏡を用いて、その解像度(ミクロン程度)を超えたナノの世界を観察します。これにより、科学の奥深さを学んでいただきます。
3 オパールの光学測定 中田博保
オパールは虹色に輝く宝石であり、最近人工のオパールを光の制御に使用する試みやピンクオパールの作製がおこなわれています。このように最先端技術と関係している美しいオパールの実験を行います。見る角度が異なると色が変わる性質は遊色と呼ばれていますが、これは直径数100nmの石英の小球が規則正しく配列している構造のために起こります。自作したオパールの反射スペクトルを測定し遊色が構造とどのように関係しているかを考察します。この研修により高校物理の「光の回折と干渉」の新しい指導法を習得します。
4 中・高等学校で作れる第1世代CT(Computed Tomography)モデル 鈴木康文
医療用X線CTは、複雑な人体の断面図を作成しています。この実験では、X線CTの原理を理解するため、以下のような自作のCT装置モデルを用います。高等学校で比較的簡単に手に入る真空度計測用のガイスラー管を放電させX線源とし、これに対面した位置にガイガーカウンターを配置した装置です。X線源とカウンターの間の回転テーブルの上に試料棒を配置し、X線の透過・吸収の様子をコンピュータ画面に表示させることで試料棒の配置を推測します。装置の作り方、生徒への教育利用について話しながら説明します。この研修は高校物理の”電気と磁気”,”物質と原子”,”原子と原子核”に対してコンピュータ活用を取り入れて指導を行う際に有効なものです。
(無機・物理化学分野)
5 サイクリック・ボルタンメトリーによる金属錯体の酸化還元特性 横井邦彦
高校の化学の教科書で定性的に「イオン化傾向」と説明されている内容は、酸化還元電位を用いて定量的に理解できます。金属錯体や有機化合物の酸化反応や還元反応の進みやすさについて、電極を通して流れる酸化電流や還元電流を測定することで実感できます。「イオン化傾向」をはじめとして、電池や電気分解等の分野の授業改善を図ることを目的としています。
6 比色定量法による河川中のリン酸イオン濃度測定 久保埜公二
リンは生物の増殖活動に重要な役割を果たしており、下水の生物処理においては必須の元素であるため人間の活動に役立っていますが、その一方で河川・湖沼・海域などの富栄養化を促進する一因とされており、天然水中のリン化合物の増加は環境問題となります。よって、天然水中のリンの定量は環境保全を行う上で重要です。この研修では、大学周辺の河川水中のリン酸イオンの濃度を比色法、並びに分光光度法により測定し、国が定める環境基準値と比較することで、人間の活動と地球環境とのかかわりについて考察します。
7 CHN元素分析の測定原理と実際 安積典子
高校の教科書に載っている元素分析は、試料を燃焼し発生した水と二酸化炭素、窒素の質量を測定する古典的なプレーグル法です。しかし、現在一般に行われている元素分析法は、その後進歩し、試料を燃焼し水と二酸化炭素、窒素を発生させる点では同じですが、それらの質量を直接測定するのではなく、気体の熱伝導度として測定しています。この研修では本学の研究教育で使われている装置を用い、実際に試料の分析を行い、現代的な元素分析の合理的な方法を実習により説明します。生徒にとって概念的な存在である「元素」を具体的に物質として認識させる一つの教材として、本研修を教育現場で活かすことができると考えています。
(有機化学分野)
8 紫外可視分光光度計を用いたアゾ色素の色調測定 織田博則
基本的な酸性染料であるオレンジI、あるいはオレンジIIやPH指示薬の1つであるメチルオレンジの合成を行います。更に、可視紫外吸収スペクトルを測定し、分光学的な色調の検討を行います。これらの実験を通じて、生徒達に色素の持つ性質と、生活や化学教育現場への有効利用性の理解を図ることを目的としています。
9 フェノールフタレインとラインマーカに使用されている色素の簡便な合成 谷 敬太
無水フタル酸とフェノール類から、酸塩基指示薬で有名なフェノールフタレインやラインマーカに使用されている黄緑色の蛍光色素を合成します。合成に使用する器具は中・高校の理科の実験室にあるもの(例えば、試験管、ロート、アルコールランプ、ろ紙)を用いますので、中・高校での演示実験などにも最適です。
10 光学異性体と旋光度 〜香料から液晶テレビまで〜 堀 一繁
高校化学の学習内容である「光学異性体」の基本的性質を、旋光計・パソコン・分子模型・融点測定器を用いて視覚的に理解できるように実習します。さらに、「光学異性体」が医薬品・香料・食品添加物などの身近な物質だけではなく、現代社会を支えるハイテク素材にも応用されていることについて解説します。
(生化学分野)
11 化学的視点からみた食品機能性の検証 井奥加奈
近年注目されている植物性色素の一種であるフラボノイドは、生活習慣病を予防するフェノール(ポリフェノール)です。しかし、健康面に重点がおかれ、フラボノイドそのものの性質に関する理解はまだまだ低い現状です。ここでは野菜や果物からフラボノイドを抽出してフェノールの性質である塩化第二鉄との反応をみせたり、市販飲料中のフラボノイドを比色法により定量したりする実験を行います。この研修は、生活に身近なフェノールの存在を生徒に認識させる教材の提供を目的とします。
12 分光光度計を用いたタンパク質濃度の測定 鵜沢武俊
この研修では、生体において重要な役割を果たし、また身近な食品や飲料などに含まれているタンパク質を試料から抽出し、その濃度を分光光度計で測定する実験を行います。そして試料に含まれるタンパク質の濃度を知り、機能を発揮する為に必要なタンパク質の量を具体的に明らかにします。この実験を通じて、身近な食品などを用いて、生徒がより興味を持てる授業を行う材料を提供することを目的としています。
13 アミラーゼを題材とした酵素反応の実際 川村三志夫
生体触媒である酵素は、中学校では消化と関わって取り上げられ、高校の生物Iでは細胞の機能、生物IIや化学IIではタンパク質の機能や代謝と関連づけて取り上げられます。本研修では、デンプンの加水分解酵素であるアミラーゼを題材に、発色反応やTLC、HPLCなどの複数の分析手法を用いて定性的な実験と定量的な実験を行い、酵素を用いた実験授業の本質的な理解を促すことで独自の教材開発能力を高めることを目標としています。
14 薬物の代謝実験 片桐昌直
高校化学IIでは、医薬品が取り扱われていますが、化学系教員にとって医薬品に関する経験等はほとんど無いのが現状と思われます。そこで本実習では、大腸菌等で作らせたヒトの薬物代謝酵素を用い、薬物の代謝反応を実際に行わせ、HPLC等での分析を行って頂き、薬物の取り扱い、薬物代謝の研究の一端を見て頂き講義に生かして頂くことを目的とします。実験内容は、酵素反応と代謝物のHPLCによる分析です。
(生物分野)
15 走査型電子顕微鏡を用いた生物試料の観察 出野卓也
走査型電子顕微鏡(SEM)は、試料表面の微細な構造を大きく拡大して立体的に観察するのに適した顕微鏡で、SEMで撮影された写真は教科書や資料集でもしばしば取り上げられています。しかし、光学顕微鏡は中高の教育現場に広く普及しているのに、SEMは高価で大きな装置なので、教育現場にはほとんど普及していないのが現状です。そこで、あらかじめ受講生にSEMで拡大して観察してみたい試料やテーマを出していただき、こちらで試料を作製し、当日各自に観察して、知見を広げていただくように研修します。
16 蛍光顕微鏡による細菌の観察 広谷博史
自然界における物質循環を考える時、細菌は、目には見えないが、大変重要な役割を果たしています。環境中の細菌は,環境条件によって,活発な増殖をしたり,代謝を行わない休止状態をとったりしています。本研修では蛍光顕微鏡を使い,さまざまな状態の細菌細胞を区別できることを実習します。この実習を通じて,中学校理科2分野「自然と人間」についての教員の知識と理解を深めます。
17 FISH法による遺伝子の可視化 向井康比己
FISH(Fluorescence in situ hybridization、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)法は、特定の遺伝子(DNA)をビオチンやジゴキシゲニン等の標識物質(ハプテン)で標識し、それに対応する染色体DNAにつけ、その位置を蛍光色素標識アビジンや抗体を用いて可視化する技術です。複数の遺伝子を同時に見ることができる最新の多色FISH法について紹介し、実際、蛍光顕微鏡を使って観察します。高等学校の生物においては、染色体と遺伝子との関係や連鎖地図の作成のところでつまずく生徒が多いです。FISH法は、染色体上に遺伝子が乗っていることを理解するのに非常に役に立つ技術です。実際高等学校での実験は難しいですが、可視化した遺伝子の顕微鏡写真等を生徒に見せることにより、生徒に感動と実感を与えることができます。
(地学分野)
18 ダイヤモンドダストと雪結晶成長実験 小西啓之
簡単な実験装置を用いて雲、ダイヤモンドダスト(氷晶)、雪結晶を作る実験をそれぞれ行い、雨や雪が形成される降水のしくみについて学びます。これらの大気中で起こる水の相変化は、見た目の状態の変化だけでなく同時に熱のやりとりに大きな影響を与えており、地球表層の環境を決定する上で重要な役割を果たしています。本実習を通じて、受講者の水惑星「地球」についての理解がいっそう深まることを目的とします。
19 偏光顕微鏡の原理と鉱物鑑定法 山口 弘
中・高等学校での鉱物鑑定を実施する為,本研修では簡単な偏光装置を組み立て,これにより偏光顕微鏡の原理を説明します。その後で,実際に偏光顕微鏡を使って,身近にある主要造岩鉱物の鑑定を行います。これにより、教員が自信をもって生徒に鉱物の指導をすることができるようになることを目的とします。
20 小型天体望遠鏡の仕組みと操作法 定金晃三
現在の中学、高校には必ず、小型望遠鏡が設置されていますが、これを適切に操作して、観測したい天体を自信を持って観測できる教員はほとんどいないのが現状です。本研修は日中に行いますが、望遠鏡の基本操作について、望む方角にある天体(物体)の観測の方法について具体的に指導します。
(技術分野(応用科学分野))
21 塩基性染料の吸着性を利用した木材内部への着色と利用法 荒井一成
毛管圧浸透法を用いて,一部の組織だけを選択的に着色する木材内部への「部分着色」実験を行います。塩基性染料の中には,木材実質へ強い吸着性を示すものがあり,またその吸着の大きさにも違いがあります。この塩基性染料と木材との関係に着目して,液体の流動方向に2色,3色に,色分けされる着色法を実習するとともに、このメカニズムを考察し,偶然にできる神秘的な紋様を楽しみながら、科学的な思考力のはたらかせ方を習得します。さらに、出来上がった着色木材を利用して,インテリア向けの簡単な工作を行い,その利用法についても検討します。
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