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研修内容の説明
(物理分野)
1 液体窒素を用いた様々な演示実験 神鳥和彦
マイナス196度の液体窒素を用いて、様々な物質の状態変化に関する演示実験や、さらに気体や液体といった物質の状態変化に関する演示実験について実習します。この実験を通じて、生徒に対しよりインパクトのある授業の創成を図る事を目的とします。水が氷に変化するのは発熱反応であること、気体は温度によって大きく体積を変化させること、気体はさらに冷やすと液体状態になること、空気を冷やすと液体空気となり酸素も液体になること、ニクロム線を液体窒素で冷やすと電気伝導度が上がることを学び、これらの知識を授業に反映させることができます。
2 半導体の発光 中田博保
発光ダイオード(LED)として用いられる半導体の発光現象を調べます。市販の発光ダイオードのスペクトルを測定するとともに、多孔質シリコンや窒化ガリウムに紫外線レーザを照射して発光を観測します。観測を通して、物質と光の相互作用の一例について学び、広く用いられている発光ダイオードの原理についても学習します。光が示す多くの性質の内で重要な現象である発光についての理解を深め、また基本的な光学部品である鏡やレンズの使用の練習にもなります。
3 第1世代CT(Computed Tomography)モデルで身近に感じる最先端技術 鈴木康文
医療用X線CTは、複雑な人体の断面図を作成していますが、この講習では真空度計測用のガイスラー管を放電させX線源とし、これに対面した位置にガイガーカウンターを配置した装置をモデルとして用います。X線源とカウンターの間の回転テーブルの上に試料棒を配置し、X線の透過・吸収の様子をコンピュータ画面に表示させることで試料棒の配置を推測します。最先端医療技術の基礎を実習を通して学び、真空やX線の取り扱いを実習します。装置の作り方、生徒への教育利用について話しながら説明します。この研修は高校物理の”電気と磁気”,”物質と原子”,”原子と原子核”に対してコンピュータ活用を取り入れて指導を行う際に有効です。
(無機・物理化学分野)
4 サイクリック・ボルタンメトリーによる金属錯体の酸化還元特性 横井邦彦
鉄(II)イオン錯体の酸化還元反応の進みやすさが、配位子の種類に応じて変化することを実験によって確かめます。鉄(II)イオンがo-フェナントロリンと錯体を生成した場合とシアン化物イオンと錯体を生成した場合で、炭素電極上での酸化還元反応がどの様に進行するのかを実験で確かめます。標準酸化還元電位が配位子の種類に応じて変化することを実験的に認識します。鉄(II)イオンが同じでも、結合する配位子が変われば酸化還元特性が変わることが見られる良い実験例です。高等学校の教科書ではイオン傾向として定性的に記されている内容ですが、酸化還元電位としてとらえれば定量的な意味があらわれることを知ることのできる内容です。イオン化傾向で「鉄」と言えば酸化還元反応の進みやすさが変化しないように思いがちですが、共存する配位子に応じて酸化還元反応の進みやすさが理解できる好例です。
5 比色定量法による河川中のリン酸イオン濃度測定 久保埜公二
大学周辺の河川水中のリン酸イオンの濃度を比色法、並びに光度法により測定し、国が定める環境基準値と比較することで、人間の活動と地球環境とのかかわりについて考察します。比色法は簡便な方法であり、目で見て対象となる成分の量を判断することができることから、演示実験として複数の河川水のリン酸イオン量を簡単に比較することができます。これによって生徒の環境保全に関する興味や知識を広げることができます。また、濃度測定に関する実験は滴定法が一般的ですが、比色定量法は滴定法以外の方法として教材開発に応用可能です。
6 CHN元素分析の測定原理と実際 安積典子
高校の教科書に載っているプレーグル法の原理を発展させた最新のCHN元素分析装置を実際に操作して、サンプル化合物のCHN組成比を測定します。本学で実際に測定を行っている元素分析装置ヤナコMT−6を用いて実際の測定作業を参加者が行う傍ら、その旧式モデルで現在は使用していないヤナコMT−3を並行して見せ、測定の原理と流れを説明します。CHN元素分析は開発当初以来80年以上同じ原理で行われていること、装置学と分析化学の発展により同じ原理でありながら分析精度が飛躍的に向上した事が理解されます。高等学校の教科書では分子の構造式や組成式などが既知のものとして扱われますが、それらは過去の実験によりひとつひとつ実証的に証明されてきたものです。この講習はその事を生徒に具体的に理解させるのに役立ちます。
(有機化学分野)
7 紫外可視分光光度計を用いたアゾ色素の色調測定 織田博則
基本的な酸性染料であるオレンジI、あるいはオレンジIIやPH指示薬の1つであるメチルオレンジの合成を行います。更に、可視紫外吸収スペクトルを測定し、分光学的な色調の検討を行います。これらの実験を通じて、生徒達に色素の持つ性質と、生活や化学教育現場への有効利用性の理解を図ることを目的としています。アゾ色素の合成や物性は理科実験に準拠しており、大学入試などにも頻繁に出題されていますので、習得した技術や知識は授業だけでなく、大学入試解答にも役立ちます。また、色素は現代有機EL 、有機太陽電池等ハイテク産業には不可欠な物質となっていることから、化学教育のみならず生活全般に有意義なテーマであり、不可欠なテーマともいえます。この講習は、学校現場では色素の光化学や衣服の染色、光と色など各方面への応用が期待できるよう構築されています。場合によれば、温度、光により変色する色素も用い、生活表示用材料用色素の理解をも試みます。
8 フェノールフタレインとラインマーカに使用されている色素の簡便な合成 谷 敬太
(このテーマは11月28日(土)10時より開講します。)
無水フタル酸とフェノール類から、酸塩基指示薬で有名なフェノールフタレインやラインマーカに使用されている黄緑色の蛍光色素を合成します。表題化合物の合成を通じて、基本的な実験器具の取扱いと実験操作についても説明します。本実験で行う溶液の色の変化を通して化学に対する理解を深めるとともに科学的な考え方を養います。合成に使用する器具は試験管、試験管はさみ、ガラス棒、目安ピペット、ロート、ろ紙、メスシリンダーとアルコールランプだけなので、理科室で十分に生徒が実験することができます。この実験は劇的な色の変化に大学生でも興味を示すほどなので、中学生や高校生にとってはより一層強く印象に残る実験と言えます。
9 香料から液晶テレビまで 〜光学異性体と旋光度〜 堀 一繁
(このテーマは11月28日(土)13時より開講します。)
高校化学の学習内容である「光学異性体」の基本的性質を、旋光計・パソコン・分子模型・融点測定器を用いて視覚的に理解できるように実習し、「光学異性体」が医薬品・香料・食品添加物などの身近な物質だけではなく、現代社会を支えるハイテク素材にも応用されていることを理解します。本テーマは、高校化学の学習内容である「光学異性体」、および「光学」異性体という言葉の由来である「旋光」の本的性質を、学校現場で比較的容易に手に入る、砂糖・メントール・リモネン・偏光板・液晶シート・ノートパソコンなどの液晶モニターを用いて実習を行うテーマです。これにより、授業で演示実験を行い、授業内容を視覚的に理解させることができると同時に、授業内容と現代社会での応用との繋がりに関しても講義できます。このことは、近年問題となっている学生の理科離れ対策の一助となることも期待できます。
(生化学分野)
10 身近な食品の化学-牛乳からカゼインの分離・卵白からアルブミンの分離と
タンパク質の定性反応- 井奥加奈
化学は私たちの食生活に深く関与しています。特に食品加工には食品成分の化学的特徴を生かしたものが多いです。原料から、よりおいしいもの・保存の効くものを作り出すために、ヒトは従来からさまざまな工夫を行ってきました。そのひとつひとつが化学的にみても妥当であることは非常に興味深いです。今回は、タンパク質の性質を利用して、スキムミルク(脱脂粉乳)からカゼインを、卵白からアルブミンを分離します。さらに得られた化合物がカゼインおよびアルブミンであることを証明するためにタンパク質の定性反応とリンの定性反応を行います。リンはカゼインがリン酸などとミセルを形成することを証明するものです。身近な生活への応用としては、牛乳からカッテージチーズを調製するという簡単な食品加工の実例を紹介します。手づくりの食品は市販品にないものが作れる楽しみがあり、食べられることもあって、教材としても面白いのではないかと思われます。生活という総合科学のなかで、基礎化学の重要性を生徒に再認識していただきたいです。
11 分光光度計を用いたタンパク質濃度の測定 鵜沢武俊
生体において重要な役割を果たし、また身近な食品や飲料などに含まれているタンパク質を試料から抽出し、その濃度を分光光度計で測定する実験を行います。そして試料に含まれるタンパク質の濃度を知り、機能を発揮する為に必要なタンパク質の量を具体的に明かにします。この実験を通じて、身近な食品などを用いて、生徒がより興味を持てる授業を行う材料を提供することを目的とします。タンパク質濃度の測定は面倒なものであると思われがちですが、近年は高等学校においても広く普及してきた分光光度計を使用すれば、比較的簡単にタンパク質濃度が測定できることを示すことが出来ます。特に、様々なタンパク質濃度の測定方法の中で、ブラッドフォード法を使うことで、感度良く、短時間の内にタンパク質濃度を測定することが可能であることを示すことが出来ます。その為、大学に比べて短い高等学校の授業の時間の中でも、生徒に実験を行わせることが可能です。
12 アミラーゼを題材とした酵素反応の実際 川村三志夫
だ液アミラーゼはほとんどの教科書で取り上げられる酵素であり、デンプンをマルトースに分解すると記載されていますが、実際にはデンプン内部の結合をランダムに切断するエンド型の酵素であり、分解反応が進んだ最終生成物の主成分がマルトースです。本研修では、だ液アミラーゼに加えて起源や反応様式の異なるアミラーゼを様々な濃度でデンプンに作用させ、生成物であるオリゴ糖の組成変化を薄層クロマトグラフィー(TLC)で検出することで、だ液アミラーゼの作用様式を確認すると共にアミラーゼにも異なった作用様式の酵素が存在することをを実体験的に理解してもらいます。また、TLCで分析した酵素反応液を試料として教科書で用いられるヨウ素反応やベネジクト反応で発色させ、それらの結果を比較することで、各種アミラーゼの作用様式の違いを体験的に理解してもらいます。実際のデンプンの分解は複雑な過程を経て為されるという事をある程度理解しておけば、授業でアミラーゼ実験を行う際の条件設定や創意工夫の理論的な支えになるでしょう。また、研修で行ったように、アミラーゼの分解生成物を薄層クロマトグラフィーで分離分析して見せることは、アミラーゼ反応を発色の有無で間接的に確かめる実験よりも、酵素反応をイメージ的に捉えると言う点に於いて高い教育効果が期待できます。技術的には決して難しくない実験ですので、予算面や設備面での環境が整えられれば、ぜひ現場でも実施して欲しいです。
13 薬物の代謝実験 片桐昌直
高校化学IIでは医薬品が取り扱われていますが、化学系教員にとって医薬品に関する経験等はほとんど無いのが現状と思われます。そこで、大腸菌等で作らせたヒトの薬物代謝酵素を用い、薬物の代謝反応を実際に行わせ、HPLC等での分析を行います。薬物の取り扱い、薬物代謝の研究の一端を見て頂き講義に生かして頂くことを目的としています。医薬品に対する理解が深まると同時に、同じく化学IIで扱われる酵素の活性が実際どのように測られるのかを実際に体験して頂き、実社会と教科内容の結びつきを理解し、授業に生かして頂きます。
(生物分野)
14 走査型電子顕微鏡を用いた生物試料の観察 出野卓也
走査型電子顕微(SEM)で撮影された写真は教科書や資料集でしばしば取り上げられていますが、光学顕微鏡と違ってSEMは中高の教育現場にほとんど普及していません。そこで、こちらで用意した生物試料、あるいは受講生が観察を希望する試料をこちらで作製し、当日(SEM)を用いて実際に各自に観察してもらい、受講生の知見を広げてもらいます。生徒に電子顕微鏡での観察を実際に体験してもらうのは難しいですが、受講者が装置の操作を学びながら試料を観察する本講習の体験を伝える事で、先端の生物学への関心を喚起する事ができます。なお、観察対象は生物試料以外でも可能です。
15 蛍光顕微鏡による細菌の観察 広谷博史
細菌のDNAを蛍光染色して,観察を行います。環境水に含まれる細菌をメンブランフィルターを用いてろ過し,細胞数の計数を行います。環境中の細菌は分解者としての機能を持つ事を学校では学習しますが,実際どれくらいの数が存在するかを実感する機会は少ないです。また,自然界には細菌以外の微粒子が多く存在することを経験することにより,自然をとらえる視野を広げられます。
16 FISH法による遺伝子の可視化 向井康比己
植物の根端細胞の染色体標本にFISH法で2種類の遺伝子のマッピングを行います。蛍光顕微鏡による観察と画像解析を行います。遺伝子が染色体上に並んでいることを目で確かめることができるとともに、遺伝子が相同染色体上にそれぞれ存在し、姉妹染色体分体上のそれぞれにも乗っていることが把握ができます。遺伝子という抽象的なもの可視化することによって、遺伝子というものが粒子であるということを生徒に示すのに良い実験例です。また、遺伝地図と物理地図の違いや、遺伝子が染色体上に並んでいることを示す教材にもなります。
17 シークエンサーによるDNA塩基排列の決定 鈴木 剛
DNAの塩基配列(アデニン, A; グアニン, G; シトシン, C; チミン, T)の並びをシークエンサーを使用して決定します。材料には植物のDNAをベクターに組み込んで大腸菌にクローニングしたものを利用します。当日は、サンガー法(ジデオキシ法)により反応させながら蛍光を取り込ませたサンプルを、シ ークエンサーという機械にかけます。シークエンサーではサンプルを電気泳動しながら1塩基ずつの並びを蛍光検出により明らかにできます。受講者は先端のテクノロジーに触れつつ「DNA配列はどのようにして決定するのか」を体験でき、ゲノム時代の塩基配列決定がサンガー法と蛍光自動シークエンサーにより行われてきた背景を理解し、授業に役立てることができます。
(地学分野)
18 ダイヤモンドダストと雲を作る実験 小西啓之
雲粒やダイヤモンドダスト(氷晶)の発生および成長など降水形成過程を理解するために、簡単な実験装置を用いた水の蒸発、水の凝結・凍結、水蒸気の昇華凝結など水の相変化を示す実験を行います。これらの水の相変化の過程は、見た目の状態の変化だけでなく同時に熱のやりとりもあることを実験から学び、降水過程が地球の熱循環にも大きな影響を与えていることを学びます。実験はこれまで出前授業や出張授業でも行い、児童や生徒が興味を持つ内容です。使用する実験器具は、既に学校にある器具やホームセンターなどで安価で購入できる物品からできていますので、各学校で容易に使うことが出来ます。
19 小型天体望遠鏡の仕組みと操作法 定金晃三
高校地学(天文分野)の観察・実習で使われる小型赤道儀式望遠鏡の仕組み、組み立て方、使用方法について実習を行いながら解説します。天球上での天体の位置の表し方(赤道座標、地平座標)の説明から始め、望遠鏡の基本用語、概念の解説を行います。次に、実際の器械の組み立てを行い、天体観察を行う前に必要な準備作業および注意事項の解説を行います。実習の中で天体観察の際に選択する倍率の概念を解説し、対象に応じて最適な倍率(アイピースの焦点距離)を選ぶことが重要なことを確認します。また、授業で使う場合の注意点として、太陽を直視しては危険なこと、設置場所を選ぶ場合に考慮に入れるべき点などを強調します。授業等での使用に際して十分対応できる内容をまとめて教授します。
(応用科学分野)
20 草木染めの実際と科学 任田康夫
タマネギ、および蘇芳を用いて、布(大型ハンカチ)、紙(障子紙、濾紙)に草木染めを行います。また、タンニン酸と塩化第一鉄によりブルーブラックインクを作り、インクとして使用できることを確かめます。草木染めの媒染剤の役割とブルーブラックインクの塩化第一鉄の役割が類似したものであることを実験的に認識します。本格的な布への草木染は時間がかかりますが、使用した紅茶ティーパックの包み紙は、薄い塩化鉄(V)溶液で明瞭に発色します。これは草木染めにおける媒染剤の効果を現場の教室で簡単に演示できる一つの方法です。
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