柏原キャンパス緑の便り


その7
学園だより No.118 (平成8年3月22日)掲載



1. 正門とゲッケイジュ:正門は3個の大きさの異なる石柱より構成されている。この石材とデザインは施設環境企画委員会で決定されたが、原案作成と材料選択については美術の浮川教授、水上教授が遠い石材店まで足を運ばれるなど御努力いただいた。印度原産のローザ・ポリーニョと呼ばれる花嵐石で、切断面を生かし通路側にみがき面が向くように設置された。文字も手書きにするのか、ボールドタイプにするか、大きさなど、書道の方々の意見もうかがった上で、委員会でこの形に決められた。右後方には、新入生を迎えるのにふさわしいように、平成4年3月株立ちの月桂樹が高鷲農場から移植された。。





2. 西側階段通路斜面:この階段工事が行われた平成3年秋に、上段部と下段部で構成の異なる数種類の草本及び木本の種子散布が行われた。平成4年春の発芽期には、禾本科の草本が主体で、禾本科は下段部の所々にハギの出芽成長が見られたが、平成5年にはハギが繁茂し、小さなエニシダが見られるようになった。平成4年と5年の初春に、高鷲農場から、シダレザクラ・ヤエザクラ・ヤマザクラが約10本程度移植された。平成6年春、エスカレーター工事完成に伴い、エスカレーター近接部にシラカシの列植とサトザクラ・オオシマザクラ・ヤマザクラなどの追植及び、階段沿いにレンギョウ(黄色)、ユキヤナギ(白色)、シャリンバイが誘導植栽として、また高木の根締めとして植えられている。





3. 白梅:平成6年秋、B棟南側のゆるやかな斜面の一角に群植され、初春にさわやかなにぎわいを見せる。





4. 紅梅他:本学職員Uさんの寄贈樹。長らく勤務されているが、近くに植えられた低木を含め、キャンパスに思いをたくして下さった。





5. 春は花からの代表種の一つミツバツツジ:ツツジの仲間の多くは葉のあとに花が咲くが、これは落葉のツツジで、4月に花芽が急にふくらみ、濃紅色の花雲を演出する(事務局棟前庭にも、かなりの数の本種がある)。C1棟入口の植栽桝で、平成3年3月の理学科(教養学科設置前の最後の学部、専攻科、院)卒業生の記念植樹のために寄せられた拠金で、撮っているのは、この場所に平成5年3月〜4月教養の生命科学専攻3,4回生及び生物専修院生により植えられたものの一部。





6. 音・美・図書館間の一角:平成6年春の開花に間に合うように、技術教育専攻学生・教官のデザインによるチューリップ園。その後年は、スイセンなどに置き換えられた。この域の若干の低木と、この域西側の中木のソメイヨシノは、関西電力からの寄贈樹で、平成5年春、約70人の学生が協力して植え込みした。また、サクラ、モモの幼木はS教官の入手されたもので仮植えされている。この春、若干の幼木は他の場所に本植えされた。なお、この地に前学長及び、附属幼稚園から分与されたノーゼンカズラの苗木が仮植えされていたが、この春美術棟東側壁面に壁立状に植え込まれた。





エピローグ:2年前平成6年3月の本誌112号、114〜117号と本号まで、この便りも7回掲載していただきました。この機会を与えて下さった学生生活委員会と、この間お世話になった学生課の守屋さん(現教養学科総務係)、今西さんに心からお礼申し上げます。私が本学に着任した昭和46年は、教授会で統合候補地の説明があった年でした。昭和52年の旭ヶ丘土地買収時点から見ても具体化へ10年間を要しました。結果的にはこの間に本学構成員の統合を巡る諸問題に対する辛抱強い検討と合意形成のための、遠慮のない意見の開陳の日時だったことになります。
 周知のように、新キャンパスは、採石場で、石英安山岩や泥岩などよりなり、土らしいものは、ごく一部に粘土質の表土が在る程度でした。しかし、国定公園でもあり、開発面積の30%を樹木で被う緑被率の達成が課せられています。今年に入ってA棟、B棟及び音美体棟周辺に新植・追植が精力的に行われていますが、全体としての達成率はまだまだの状況です。施設課を中心に、予算委員会や経理部も今後努力されることでしょうが、施肥・灌水・除草など、教職員・学生の協力による全学的な取り組みも不可欠のことと存じます。
 それにしても、この地の、緑化には、当時の理科教育教室の環境科学研の米田健教官と学生及び生物学教室の教官・学生による自生種の調査が元になっており、さらに平成2年初春に西田学長始め生物学教室の教官・学生と庶務課職員が共通講義棟建設予定地付近に自生していた数年生の松24本を、ごぼう抜きで西側谷筋上段部に移植したことに始まったことを思い出します。平成4年4月の開校を前にして、平成3年春から始まった農場や池田分校からの移植木の選定・根回し、4年1月26日の最初の移植(池田分校からのツツジの大型丸もの)から、一歩一歩キャンパスらしくなってきたことに一息入れる想いです。今日迄、多くの方々の寄贈や作業への参加をいただきました。今までにも、この「柏原キャンパス緑の便り」の他に、「大阪教育大学120年の歩み」「大阪教育大学創基120周年・移転統合完了を記念して、いずれも平成6年11月より」及び私が委員長をしていた第一期緑化推進委員会の報告書「キャンパスの緑−平成4年9月」などパンフレットにも紹介させていただきましたが、今日まで一度も紹介できないままのものもあります。ここに、せめてリストだけでも掲載させていただき、お伝えし切れないお礼の心の一部を表したく存じます。

 この地球上で、人間は長くみても500万年前からの存在。35億年前、水と光と気体が、どう反応しあったか、生命を生み出して、その後より豊かで多様な生命の惑星となってきた。人の文化は、この長い恵みの中で生まれてきた。我々の「キャンパスに豊かな緑を」の願いは、単に法的規制や生活環境の整備(気候調整を含め)に留まることのない、人が人でありたい根源的なものとして捉えていただき、今後もキャンパスの緑の保全と質を高める行動へのプロローグであってほしいと願っている。

              自然研究講座 教授 加藤憲一(平成8年3月定年退官、名誉教授)                         





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