藤田研

研究テーマ

現在、人工知能、機械学習の分野を中心に研究しています。工学的な応用だけではなく、人の知能と学習について数理モデル化し、その知見を教育システムに応用することを目指しています。そのためには、敢えて遠回りも覚悟して、「知能とは何か?」「情報とは何か?」という根源的な問いかけに立ち返り、原点を見つめなおすことが重要と考えています。できれば、「生命の物理的・数理的本質とは何か?」について瞑想することが理想なのですが、道を求めて紆余曲折、遥か遠くを飄々と迷走しているところです。以下、詳細説明は徐々に拡充する予定です。

情報の数理モデル

情報検索・分類への応用のみならず、知識習得や学習の数理モデルの構築を目指します。

集合間距離

「情報」が織り成す世界の構造を調べるための数理的な物差しとして、集合間距離を考えます。

これまでの情報理論は、情報通信の観点から、符号の確率的・統計的な尺度を情報量として定義し、その応用において、データ圧縮や暗号などを含む高度な情報通信システムの実現に寄与するに留まらず、言語の数理的解析にも貢献しています。また、音声や画像などのパターン認識の研究分野では、情報のベクトル表現やベイズ推定の利用により、大規模な情報検索や分類が可能となっています。

しかし、人間が得意とする情報処理の中で、知的な推理、直感、閃きなどについては、現状の電子計算機の性能は遠く及ばず、今後、さらなる研究開発が必要です。そのために、「情報とは何か?」「知能とは何か?」という根源的な問いかけが重要です。それはまた、「生命とは何か?」の答えに至る道筋の一つにもなり得ます。

数理モデルの構築において、数学の根本に立ち返って考ようとすると、現代数学においては、何らかの「集合」として情報を表現することが当然のように思われます。なぜなら、「集合」は、「要素の集まりである」という単純さ故に、ベクトルやグラフなどの様々な数学的対象を「集合」の形式で表現し得るという汎用性を有するからです。そして、その量的尺度の一つとして、集合間距離を重視します。情報の類似性は集合間距離で評価できます。距離が長ければ似ていない。距離が短かいほど類似性が高く、距離が0になると同一の情報を表すとみなします。

そこで、本研究では要素間距離の冪平均に基づく距離関数を提案しています。いわゆる「Jaccard距離」や「Hausedorff距離」をも包含する範囲の広い概念ですから、様々な応用が期待されます。

いくつか単純な集合が与えられると、それだけから要素間の距離空間が導かれ、さらに集合間の距離空間を構築できます。集合、ベクトル、グラフなどの複合した階層的集合についても適用出来ます。そのような複雑な集合で知識体系を表現すると、知識習得や学習過程を数理的にモデル化することが可能になります。

機械学習

主としてニューラルネットワークの学習法について研究しています。開店休業状態ですが。

フィードフォワード・ニューラルネットワークの中間層について

代表的なニューロンモデルを用いて、できるだけ少ないニューロン数で、要求される条件を満たすネットワークを構成する方法の研究です。ニューラルネットの教師データの行列が作る線形空間を基にして、ニューロンの非線形出力を逐次追加して空間の次元を拡張する方法と、不要な次元を逐次削除する方法の2種類を考えます。ニューロン数を必要最小限に抑えることは、計算効率の向上に寄与するだけではなく、汎化能力を低下させる過学習を防ぐ効果もあります。ニューロン数の評価は計算量理論における難題と密接に関係しています。

試行錯誤相関学習

システム内部の可変パラメータを「試行」的に変動させ、出力の「誤差」評価関数の変化との相関に応じて、可変パラメータを修正する方法の研究です。試行の範囲を大きくしてパラメータ空間を広くサンプリングし、誤差の増加は抑圧して相関を取ると収束性が向上します。たとえて言えば、「可愛い子にはできるだけ数多く広く旅をさせ、良い結果には相応の報酬を与え、悪い結果は大目に見るとよい」ということです。

データ処理

時系列データや連続的空間データの統計処理に関する研究です。途中段階です。

非線形フィルタ

大きなノイズを含みうるデータにおいて、同一条件のサンプル数が少ない場合に、統計的はずれ値(異常なノイズ)を検出して除去する処理の研究です。

異常検知

ノイズを含むデータにおいて、頻度の少ない異常信号を検出する方法に関する研究です。

並列計算機

ノイズを含むシステムのシミュレーションなどを低コストで効率よく実行する並列計算機の開発。変数を冗長化し、計算順序を計算精度に応じて調整可能とすることで、細粒度の並列計算を行う研究です。ただし、全ての計算過程で高精度が要求される場合(例えば、計算誤差が発散的に増加するカオスなど)のシミュレーションには向きません。資金と時間に余裕があれば試作します。

時定数測定

システムの遮断周波数をそれより遥かに低い低周波領域で測定できるか?という研究です。余裕が出来たら再開します。