ポートフォリオ評価   本文

1. 総合学習とポートフォリオ評価

もともと書類入れやファイルを意味するポートフォリオ(portfolio)を学習に用いたものがポートフォリオ評価法である。もともとは,イギリスやアメリカで「テストでは測定できない学力」を評価する方法として研究・開発されたものである。  日本には1990年代後半に紹介された。欧米では教科の新しい評価法として普及したが,日本では総合学習に適した評価法として注目されている。

2.開発教育とポートフォリオ評価

開発教育でも従来から「ワークシート」で評価資料の収集は行われてきたし,参加型学習の後には必ず「ふり返り」の時間が設けられ,学習の意味や自己の学習成果を確認する作業が行われてきた。しかし,これらはいずれも当該時間・プログラムについての「ふり返り」であった。一連の学習を通じて自分がどのように成長し,考え方や価値観がどう変わったかを長いスパンで見つめるものではなく,「ふり返り」が次の学習に活かされることもあまりなかった。 教科での開発教育に比べ,総合学習では自由度の高い大きな共通テーマのもと,各自が(各グループが)独自の活動を行う「プロジェクト学習」型の活動が多くなると思われる。こうした活動では,学習プロセスを絶えず自己点検・評価し,修正していくモニタリング能力(メタ認知)がなければ上手く進展しない。また,小学校3年生から高校3年生まで年間100時間近くもかけて活動する以上,そこでどのような「生きる力」が育ったかが問われることになるだろう。

3.ポートフォリオ評価の方法

学習活動では通常,@情報の収集・蓄積,A蓄積した情報の評価・再構成,Bポートフォリオを用いた協議(ポートフォリオの時間),の3つのプロセスがくり返される。
課題の設定
@情報の収集・蓄積   A情報の評価・再構成   Bポートフォリオの時間  
課題の調査
@情報の収集・蓄積   A情報の評価・再構成   Bポートフォリオの時間

@は時系列に沿って行う。資料・情報がいつのものなのか明示することが必要となる。Aでは情報の価値判断を行う。この時,ウェビングやブレーンストーミング,KJ法などの参加型学習手法が大いに役立つ。Bは目標・ねらいに即して学習成果や今後の学習課題を協議する。教師との話し合いだけではなく,児童・生徒相互の話し合いも行う。(その子なりの学習価値を見つける肯定的な「価値づけ評価」を心がける。) 3つのプロセスをくり返しながら学習を進めることで,学習活動に自信と責任をもつことができるようになり,社会への積極的な参加の目が開かれる。

4.よくある質問から

(Q1)これまで開発教育で用いていたワークシートやふり返りシートとどこが違うのか。
 どちらもポートフォリオに収める重要な資料の1つとなる。ただ,活用の仕方から考えると,以下のような違いを指摘することができる。

ワークシート

ポートフォリオ

ある時間の学習成果のみを示す

中長期的な学習の進歩状況を示す

学習テーマに重点をおく

個人の成長・進歩に重点をおく

再構成が難しい

再構成が容易

Q2)忙しくて毎時間ポートフォリオを評価したり,コメントなんて書いていられない。
 ポートフォリオ導入に二の足を踏まれる方の多くが挙げられる理由だが,3つ工夫が考えられる。とりあえず毎時間提出させる(回収する)として, @ 観点ごとに色を違えた付箋を用意し,“これは”と思うところに付箋をはさむ。 A 児童・生徒にも相互評価させる。(上記と同様,付箋をはさませてもいい。) B 「ポートフォリオの時間」に,付箋箇所について理由(学習成果・学習価値)を伝える。 こうすれば,毎時間コメントを書く必要はない。もっとも,時間が許す限り一言でも書くようにしたい。高校生でも嬉しいようで,励みに感じて取り組み姿勢が変わる。
(Q3)評価の観点や評価基準はどのように設定したらいいのか。
 予め明示した目標・ねらいは,評価の観点でもある。ただし,次の2点に気をつけたい。 @ 観点を絶対視しないこと。(事前の予測と違ってくれば柔軟に追加・変更できる。) A 一人ひとりの学習個性に応じて評価すること。(観点をいくつ達成できたかではなく,どの観点を達成できたかは一人ひとり違っていいと考える。評価基準も一律絶対的なものではなく,学習前との比較である個人内評価が適している。) 観点の設定は担当教師一人ではなく,複数の話し合いが望ましい。保護者やNGO,地域住民など,学習に関わる全ての人々が参加できれば,なおよい。また一部はわざと空白にしておき,児童・生徒自らが観点を設定したり,途中で追加できるようにしておくと,評価への参加を実感できる。
(Q4)ポートフォリオの学習成果を,通知表や指導要録にどのように記載するのか。
 指導要録については,文部科学省から校種別に見本が示されており,各学校が独自に観点を設定して記述することとなっている。問題はどうやって記述するかである。従来のように,教師が一方的に主観を交えて記述したのでは,せっかくのポートフォリオが生かされない。 ここでも学習者自身,そして保護者や地域住民・NGOなど学習に関わった全ての人々の意見を吸い上げたい。総合学習はたいてい発表で終わってしまうが,一歩進めて「ポートフォリオ検討会」を開催し,ポートフォリオを話材に評価をしてもらえばどうだろう。さらに,そこでの意見を踏まえ,児童・生徒が今後の目標等を書いたものを通知表にはさめば,具体的で分かりやすいものになる。
(高野剛彦;神戸市立六甲アイランド高校教諭)