脂肪肝の経過観察における指標評価
Guideline evaluation in the progress observation of fatty liver
専修名 健康生理学研究 学籍番号 019705
氏 名 稲井 邦考 指導教官 東 眞美
キーワード(和文) 脂肪肝 肝腎コントラスト ロジスティツク回帰分析
キーワード(英文) fatty liver hepatorenal contrast logistic regression
analysis
要旨
本研究は,胎肪肝患者を早期にみつけだすこと,また脂肪肝患者の経過をみていく上での的確な指標を得ることを目的としている.脂肪肝に陥っても,自覚症状がないことが多く,血液生化学検査でも軽度な異常値としてあらわれてくる程度なため,脂肪肝を見逃してしまっているのが現状である.
そこで人間ドックの受診者を対象に,腹部超音波検査で脂肪肝と診断された人の血液生化学検査値を用いて,脂肪肝群と非脂肪肝群とを統計的に比較することにより,特定の生化学検査項目を利用することで,容易に脂肪肝を抽出できる指標を得る.また,腹部超音波検査でスコア化により脂肪肝の重症度を判定する施設も存在するが,煩雑で主観を伴い,時間もかかることから,より簡便な脂肪肝の定量方法が求められる.単に肝腎コントラストの差を目でみて感覚的に重症度評価している施設も少なくない.このように曖昧な評価では的確なフォローを行えないばかりか,超音波検査のみで経過をみるのは大変危険である.
従って,超音波検査による分析では,装置設定(ゲイン)を変化させ,画像表示条件の差が肝腎コントラストの算出値に及ぼす影響について検討した.
次に,胎肪肝群と非脂肪肝群を対象に,肝内のROIと腎皮質のROIによる渦定値の差と比について検討した.測定部位は,腎皮質のROIとそのROIと同一ビーム上,また同じ深さの肝内鏡域のエコー強度をエコー装置で計測可能なヒストグラムを用いて潮定した.さらに,血液生化学検査値による分析では,ロジスティツタ回帰分析を用いて,脂肪肝群と非脂肪肝群ではどれほどの値を境に危険度が増すのかを調べた.また,胎肪肝の有無とTG,GPT/GOT比にどのような閑係が認められるかを検討するために,各変量の回帰係数を算出し,脂肪肝に罹患する危険率Pの予測回帰式を求めた.この予測回帰式により,実際に生化学検査値を代入することで,個人の危険率Pが求まる.求めたPで経過観察を行う際の指標として用いることが可能か,またこのPと超音波検査におけるROIのヒストグラムから求めた肝腎コントラストの比を利用することで,より信頼のおける「胎肪肝」の定量的指標を得ることができるかどうかを検討した.