(問題) 可換環 R 上の多項式環 R[X] が単項イデアル整域である必要十分条件は R が体であることである。
(考察) (十分性)「R が体なら R[X] が単項イデアル整域である」は基本問題です。 (確認)
逆に、(必要性)「R[X] が単項イデアル整域ならば、R が体である」を示しましょう。

直接「 R の 零元でない任意の元に逆元が存在する」ことを示すか、
または、対偶「 R が体でなければ、R[X] は単項イデアル整域でない」 を示しましょう。
(解答例) A=R[X] とおきます。R が整域でなければ、 A も整域ではないので、R は整域だと仮定します。
0 ≠ r ∈ R に対して、定数項が r の倍元である多項式全体を J とすれば、J は A のイデアルになります。 (確認)
A は単項イデアル整域なので、 J は ある多項式 g(X) で生成される単項イデアルです。
r は J に含まれるので、r=h(X)g(X) とあらわされます。 両辺の次数を比較すれば、g(X) の次数は 0 です。
g(X) = c ∈ R.
g(X) の定数項 c は r の倍元、かつ、r ∈ J より、r は c の倍元、 よって、r は c の正則元倍です。
一方、X ∈ J なので、X = cf(X) ですが、一次の係数を比べれば、 c は正則元となります。
したがって、r は正則元です。
(別解) (対偶)「 R が体でなければ、A は単項イデアル整域でない。」を示します。
R は体ではないので、自明でないイデアル I を持ちます。 (確認)
J = AX+I = {f(X)X+ a | f(X) ∈ A, a ∈ I } (定数項が I の元である多項式全体)は A のイデアルになります。 (確認)
J は A の単項イデアルではありません。
もし、J が ある多項式 g(X) で生成される単項イデアルだと仮定して、 矛盾を導きましょう。
I の 0 ではない元 a は J に含まれるので、g(X) の次数は 0 です。 よって、g(X) = c ∈ R。 ( c ∈ I です。)
一方、X ∈ J なので、X = cf(X) ですが、一次の係数を比べれば、 c は正則元となります。 これは、I が自明ではないイデアルあることに反します。
二つの解答例の本質は同じですね。

整域 R 上の多項式環 A = R[X] に対して、
R のイデアル I と X が生成する A のイデアル J が 単項イデアルである必要十分条件は I = R or {0}.