連続する6個の自然数を二つの組に A と B にわけて、その積を計算します。

連続する6個の自然数、{4,5,6,7,8,9}  組  A={4,6,7,8}, B={5,9}
 積  a =1344 b = 45

連続する6個の自然数、{6,7,8,9,10,11}  組  A={6,9,11}, B={7,8,10}
 積  a =594 b = 560


(問題) この時、積 a と b が一致することはあるでしょうか?
(考察) 連続する6個の整数を、{ n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 } とします。
A と B の二組に分けて、それぞれの積を a と b とします。 この積が一致したと仮定して、考察していきましょう。
{ n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 } の素因数を考えてみましょう。
(解答例) { n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 } を素因数分解します。
この時、素因数分解に現れる素数 p は a と b の両方に現れるので、
n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 の中には p の倍数が2つ以上なければなりません。
x と y ( x < y ) がともに p の倍数とします。 この時、p ≦ y - x ≦ n+5-n =5 です。
したがって、{ n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 } を素因数分解した時に 現れる素数は 2,3,5 だけです。 (*)

{ n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 } の中には少なくともひとつは5の倍数があります。
上の考察から、n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 の中には 5 の倍数が2つ以上なければならず、
n と n+5 が5の倍数であることがわかります。
また、n が 52 で割り切れたとすれば、 n+5 の素因数分解には 5 は1度しかあらわれないので、
a と b の5の指数が一致しません。 n の 5 の指数は 1 です。

n = 2t 3s 5 とおきます。( 0 ≦ s, 0 ≦ t)

このとき、s と t がともに正ならば n+1 は 2,3,5 の倍数ではないので、
その最小の素因数 p は 2,3,5 以外の素数です。 (*) に矛盾します。

t =0 で s が正ならば n+2 の最小の素因数を p を考え、
s =0 で t が正ならば n+3 の最小の素因数を p を考えます。
s = t = 0 ならば n=5, n+2=7 です。 同様に、 (*) に矛盾します。

したがって、背理法によって、一致することはないことがわかりました。
さて、上の問題をもう少し別の視点から眺めてみましょう。
初等整数論でいえば p を法とした計算を、
環論を学んだ場合は、Z/pZ への自然準同型を考えてみましょう。
a = b として矛盾を導きましょう。
7 以上の素数 p を法として考えます。 { n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 } の中に 0 は高々一つです。
もし存在すれば、a ,b の一方は 0、他方は 0 にはなりません。 したがって、0 がないことわかります。
p=7 として考えれば、{ n, n+1, n+2, n+3, n+4, n+5 } ={1,2,3,4,5,6} となります。
a = b なので a2 = ab =1×2×3×4×5×6 = 6 = -1 です。 (*)
一方、a2 = -1 は 7 を法として解を持ちません。 (*) (∵ 12 = 62 = 1, 22 = 52 = 4, 32 = 42 = 2. )
よって、一致することはないことがわかりました。
(*) は -1 が 7 を法として 平方剰余ではないことに対応しています。 第一補充法則を確認しましょう。
(*) は Wilson の定理 です。
一般には、素数 p に対して、
(p-1)! ≡ -1 (mod p)
が成り立ちます。
Wilson の定理は体 Zp = Z/pZ の基本的な性質から証明できます。
Zp において、2次方程式 X2 - 1 = 0 の解は高々二つであり、 それは ±1 です。これは、乗法群 ( Zp )× において、 逆元が自分自身である元が ±1 であることを意味しています。 よって、( Zp )× において、 全ての元の積を求めた場合 ±1 以外の元は逆元と打ち消し合い、 (p-1)! = -1 のみが残ります。