(問題) (1) 有理整数環 Z の部分環の個数を求めよ。
(2) 有理数体 Q の部分体の個数を求めよ。
(3) 有理数体 Q の部分環の個数を求めよ。

(考察) 環 R の部分集合 S で(同じ加法、乗法、単位元に関して)環となるものを 部分環といいます。
次の(S1)(S2)(S3)を満たすことが必要十分です。
(S1) a - b ∈ S for ∀a,b ∈ S
(S2) ab ∈ S for ∀a,b ∈ S
(S3) 1 ∈ S (ただし、1 は R の単位元)

R 自身は R の部分環です。(これを自明な部分環といいます。)
体 F の部分集合 K で(同じ加法、乗法に関して)体となるものを部分体といいます。
次の (K1)(K2) を満たすことが必要十分です。
(K1) a - b ∈ K for ∀a,b ∈ K
(K2) ab-1 ∈ K for ∀a,b ∈ K

F 自身は F の部分体です。(これを自明な部分体といいます。)
(解答) (1) 1個。
有理整数環 Z の部分環は Z 自身だけであることを示しましょう。
S を Z の部分環とします。
単位元 1 ∈ S であり、(S1) より 0 = 1 - 1 ∈ S,  -1 = 0 - 1 ∈ S が成り立ちます。
よって、帰納法を用いて任意の自然数 n は S の元です。 (確認) 1 ∈ S であり、 k ∈ S ならば (S1) より k - (-1) ∈ S です。
したがって、負の数 -n に対しても -n = 0 - n ∈ S であり、 Z ⊆ S となります。
一方、S は Z の部分環なので Z ⊇ S より S = Z を得ます。
(2) 1個。
有理数体 Q の部分体は Q 自身だけであることを示しましょう。
K を Q の部分体とします。(1) と同様に Z ⊆ K となることがわかります
任意の有理数 q は整数 m,n を用いて q = m/n と表せますが、 (K2) より q = m/n = m n-1 ∈ K となり Q ⊆ K となります
一方、K は Q の部分体なので Q ⊇ K より K = Q を得ます。
(3) ∞ 個。
任意の素数 p に対して S = Z(p) = { a/b ∈Q | a ∈ Z, b ∈ Z - pZ } (既約分数で表したときに分母が p で割れない有理数全体)
と定義します。このとき、∀a/b, c/d ∈ S に対して、 b,d が p で割れなければ、積 bd も p で割れないので、
(S1) (a/b) - (c/d) = (ad - bc)/bd ∈ S
(S2) (a/b)(c/d) = ac/bd ∈ S
(S3) 1 = 1/1 ∈ S
となり、S = Z(p)Q の部分環です。
素数は無限に存在し、p ≠ q ならば Z(p)Z(q)なので、 無限個の部分環が存在します。