(問題)
群 G の元 a,b に対して、
次の命題が正しければ証明をし、正しくなければ反例をあげよ。
(1) a,b の位数がともに無限ならば、ab の位数も無限である。
(2) a,b の位数がともに有限ならば、ab の位数も有限である。
(ヒント)
まずは反例を探してみます。
探しても、見つからなければ、「正しい」と思って
証明をしてみましょう。
(考察)
有限群の元の位数は全て有限なので、無限群を考える必要があります。
可換群 G において、任意の有限位数の元 c と任意の無限位数の元 x に対して、
y= x-1c とおけば y は無限位数の元になります。
(確認)
したがって、無限位数の元 x,y の積が有限位数の元になる例
を見つけることができます。
(反例)
0でない複素数がなす乗法群 C* を考えます。
有限位数の元を見つけましょう。
z = a + bi ( a,b ∈ R , i2=-1 )
に対して、絶対値をとる写像、
f : C* → R*
( a + bi → a2 + b2 )
は(群)準同型になります。(確認)
位数が n の元 z に対して、
f(z)n = f(zn) = f(1) = 1 f(z) は正の実数なので、
f(z)=1 となります。
したがって、C* において、
位数が有限の元は絶対値が1でなければなりません。
よって、例えば 1 の 6 乗根 c = (1 + √3 i)/2 と
無限位数の元 x = 2-1 から上の考察によって、
2つの無限位数の元 a = x, b = x-1c を作れば、
その積が有限となる反例を見つけることができます。
可換群においては有限位数の2つの元の積はまた有限です。
a が位数 m の元、b が位数 n の元ならば、
(ab)mn=amnbmn
=(am)n(bn)m = e です。
非可換群ではどうでしょうか?
無限位数の非可換群の例としては例えば
実数体 R 上の一般線形群 G := GL2(R) を考えてみます。
A ∈ G が有限位数であるための条件は何でしょうか?
行列式をとる写像、
det : G → R* ( A → det A )
は(群)準同型になります。
(確認)
位数が n の元 A に対して、
(det A)n = det(An) = det(E) = 1 det A は実数なので、
det A = ± 1 となります。
したがって、GL2(R) において、
位数が有限の元は行列式が
±1でなければなりません。
そこで例えば、右のように行列 A,B をおけば、
行列式は 2,1/2 で、無限位数の元ですが、
その積 AB=C は位数が 4 の行列になります。
非可換群においても (1) の反例がみつかりました。
(2) の反例を探してみましょう。
G := GL2(R) において、
位数有限の元 X と Y の積 Z=XY の位数が無限であるとします。
このとき det X = ±1, det Y = ±1 なので、
det Z = ± 1 となります。
det Z = 1 である無限位数の行列 Z をみつけましょう。
分かりやすく対角行列を考えます。
右のような行列を取れば無限位数になります。
X として上で見つけた位数が4の行列をとれば、
Y = X-1Z もまた、位数有限であり、
(確認)
その積である XY = Z は無限位数の行列となり、
(2) の反例となります。
(問題)
群 G の元 a,b に対して、
次の命題が正しければ証明をし、正しくなければ反例をあげよ。
(1) a,b の位数がともに無限ならば、ab の位数も無限である。
(2) a,b の位数がともに有限ならば、ab の位数も有限である。
(解答)
(1) 正しくない
(反例)
C* において
a = 2-1,
b = (1 + √3 i)
GL2(R) において 上のように A, B をおく。
(2) 正しくない
(反例)
GL2(R) において 上のように X, Y をおく。