(問題) n 次元ベクトル空間 V の部分空間 W の次元が n ならば V = W
(考察) 知っている事実ではあり、よく使っていることと思いますが、 一回は示しておきましょう。
基底変換の行列を用いて示す方法と、 基底の個数の一意性に戻る方法とがあります。
次元とは基底の個数のことですが、これが基底の取り方によらず 一定であることの証明から、その系として上の問題を解くこともできます。
(解答例) 体 F 上のベクトル空間とします。 (実数体 R や 複素数体 C と思って考えてもかまいません)
{ v1,...,vn } を V の基底、 { w1,...,wn } を W の基底とします。
wi は V の元なので、 基底 { v1,...,vn } の一次結合で表せます。 wi = a1,iv1+ +an,ivn   (i=1,...,n)
これは、(i,j) 成分が ai,j である行列 A, w= [w1,...,wn], v =[v1,...,vn] を用いて、w = vA と表せます。 (1)
Fn の列ベクトル x=T(x1,...,xn) に対して、
{ w1,...,wn } が 一次独立なので、 「 wx = 0 ⇔ x = 0 」 (2)
{ v1,...,vn } が 一次独立なので、 「 vx = 0 ⇔ x = 0 」 (3)
(2)(1)(3) より、 x = 0 ⇔ wx = 0 ⇔ vAx = 0 ⇔ Ax = 0 となり、A は正則行列です。 (確認)
∀ u ∈ V は u = b1v1+ +bnvn と表せます。 このとき b =T(b1,...,bn) ∈ Fn とすれば
u = vb = (wA-1)b = wb' ( b'= A-1b ) となり、 u は { w1,...,wn } の一次結合で表せるので u ∈ W です。
したがって、V⊆W です。 W は V の部分空間 なので V = W となります。
(次元の一意性) まず下の事実を示しましょう。
(Fact) n ≦ m は正の整数とする。
ベクトル空間 V は n 個の元からなる基底 { v1,...,vn } を持ち、 m 個の一次独立な V の ベクトル { x1,...,xm } が存在するとする。 このとき { v1,...,vn } の順番を適当に並びかえれば、 各 0 ≦ k≦ n に対して
Bk := { x1,...,xk ,vk +1,...,vn } は V の基底となるようにできる。特に m = n である。
(証明) Bk が基底になることを k に関する帰納法で示します。 k=0 の時 B0 = { v1,...,vn } は基底です。
1 ≦ s ≦ m とし、 Bs-1 が基底であると仮定します。 このとき
xs = a1x1 + ... + as-1xs-1 + asvs+ ... + anvn と一次結合で書けます。( ai ∈ F ) (4)
もし a s = ... = an=0 ならば { x1,...,xm } が一次独立であることに反するので 、 少なくともひとつは 0 ではありません。。 順番を並び換えて a s ≠ 0 としてかまいません。 このとき Bs が基底になることを示します。
Bs-1 が基底なので ∀ u ∈ V は u = b1x1+ +bs-1xs-1+ bsvs+ +bnvn と表せます。 (5)
(4) の両辺に as-1 をかけて、 vs = ... の形に変形して (5) に代入すれば、 v は Bs の一次結合で表せます。
また一次関係式
c1x1+ ... + csxs + cs+1vs+1+ ... + cnvn = 0
(4) を代入して整理すれば、 Bs-1 の一次関係式、
(c1+csa1) x1+ ... + (cs-1+csas-1) xs-1+ csasvs+ (cs+1+csas+1) vs+1+ ... + (cn+csan) vn = 0
を得ます。 Bs-1 は基底なので係数は全て 0 であり、 c1 = ... = cn =0,
すなわち、Bs も一次独立であることがわかります。 したがって Bs も基底となります。
特に、{ x1,...,xm } は基底となるので n = m です。
(定理) ベクトル空間 V が有限個の元から基底を持てば、 その個数は基底の取り方によらず一定である。
(証明) 基底 { v1,...,vn } が存在します。 別の基底 { u1,...,um } に対して、 上の Fact より、m = n を得ます。
(問題の解答例) V の基底 { v1,...,vn } と W の基底 { w1,...,wn } に対して Fact を用いれば、 Bn = { w1,...,wn } が V の基底であることが分かります。
「有限次元ベクトル空間の基底の個数(次元)は基底の取り方によらず一定である。」
「 n 次元ベクトル空間の n+1 個のベクトルは一次従属である。」 という事実を認めれば、
もっと簡単に解答ができます。
(問題の解答例) { w1,...,wn } を W の基底とします。
V の任意の元 v に対して、 { v, w1,...,wn } は一次従属なので、
kv+a1w1+...+anwn=0
をみたす (k,a1,...,an) で全ては 0 でないものが存在します。
{ w1,...,wn } は一次従属なので、 k≠0 となり、v は w1,...,wn の一次結合で表せます。
したがって、{ w1,...,wn } は V を生成します。 V⊆W です。
W は V の部分空間 なので V = W となります。