(問題) 集合 A,B,C に対して、次を示せ。
(1) |A| = |B| ならば |A| ≦ |B|
(2) |A| ≦ |A| が成り立つ。
(3) |A| ≦ |B| かつ |B| ≦ |C| ならば |A| ≦ |C| が成り立つ。
(解答例) (1) |A| = |B| なので、定義より、∃f : A → B (全単射) である。 このとき、f は 単射であるので
∃f : A → B (単射) であり、 定義より、|A| ≦ |B| となる。
(2) 任意の集合 A に対して、恒等写像 idA : A → A (a → a) は単射である。 (確認)
よって、|A| ≦ |A| が成り立つ。
(3) 仮定より、∃f : A → B (単射)、∃g : B → C (単射)が成り立つ。
この時、合成写像、g º f :A → C は単射である。 (確認)
したがって、|A| ≦ |C| が成り立つ。
(確認) a,a'∈ A (a≠a') に対して、idA(a) = a ≠ a' = idA(a')
(確認) a,a'∈ A (a≠a') に対して、f が単射なので f(a)≠f(a') ∈ B である。
また、g が単射なので、f(a)≠f(a') ∈ B ならば g(f(a))≠g(f(a'))
したがって、a,a∈ A (a≠a') に対して (g º f)(a) = g(f(a))≠g(f(a')) = (g º f)(a') となり、g º f も単射となる。
次のような答案は正しくありません注意しましょう。
(1) の答案
(i) |A| = |B| なので、明らかに |A| ≦ |B| である。
(2) の答案
(ii) |A| = |A| なので、明らかに |A| ≦ |A| である。
(iii) f : A → A は単射なので、|A| ≦ |A|.
(iv) f : A → A (単射)が存在するので、|A| ≦ |A|.
(v) f : A → A は 恒等写像なので、単射である。よって、|A| ≦ |A|..
解答例の答案では 「恒等写像という『単射が存在』します」ということを主張しています。
(i)(ii) は何もいっていません。
(iii) は 「A から A の写像は全て全単射である。」といっています。(間違い)
(iv) は 「A から A の『全単射が存在」します。」といっています(正しい)が、 存在することが示されていません。
(v) は 「A から A の写像は全て恒等写像である。」といっています。(間違い)
(3) の答案
(vi) |A| ≦ |B| ≦ |C| なので、|A| ≦ |C|
(vii) 推移律より、|A| ≦ |C| が成り立つ。
(viii) 仮定より、∃f : A → B (単射)、∃g : B → C (単射)が成り立つ。
この時、∃h : A → C (単射)となるので、|A| ≦ |C| が成り立つ。
(vi)(vii) は何も示していません。
(3) が成り立つから不等号を使うのであって、 「不等号だから、(3) が成り立つのは当たり前だ!」 と思わないようにしましょう。
また、問題は「推移律が成り立つことを示せ。」です。 「推移律より成り立つ。」では答案になっていませんね。
(viii) は間違えてはいません。が 単射 h の存在が示されていないので、不十分です。