さらに理解を深めるために、下記の問題を考えてみましょう。
(1)(2) には ○× で答え、 (3) には数字で答えましょう。 (ただし、無限に存在する場合は ∞ と解答しましょう。)

(問題7) A は 4 次正方行列, O は 4 次零行列, fA(X) は A の固有多項式とする。次に答えよ。
(1) fA(X) = X4 ならば A4 = O が成り立つ。
(2) A4 = O ならば fA(X) = X4 が成り立つ。
(3) fA(X) = X4 を満たすユニタリー行列 A の個数 を求めよ。


(問題8) E は 5 次単位行列とし、A は次の 5 次正方行列とする。

(1) A は対角化可能である。
(2) (A2 + E)5 の固有値はすべて正の実数である。
(3) fB(X) = X5 を満たす エルミート行列 B の個数を求めよ。



A =
0 1 0 0 1
1 0 1 0 0
0 1 0 1 0
0 0 1 0 1
1 0 0 1 0









(問題9) a と b は 零 ではない複素数とし、A は次の 4 次正方行列とする。

(1) 任意の複素数 a, b に対して、A は対角化可能である。
(2) a と b が互いに共役な複素数である時、A は正の実数を固有値に持つ。
(3) fB(X) = X4- 2X2 + 1 を満たす ユニタリー行列 B の個数を求めよ。



A =
0 a a a
b 0 a a
b b 0 a
b b b 0








(問題10) 行列 A,B,C を下のように与える。次の問いに答えよ。

(1) A と B は相似である。
(2) A と B は同じユニタリー行列 U によって、対角化可能である。
(3) C を対角化するユニタリー行列 U の個数を求めよ。



A =
1 0 0
1 1 0
0 1 1
B =
1 0 0
0 1 0
1 0 1
C =
0 1
1 0








(問題11) 行列 A,B,C を下のように与える。次の問いに答えよ。

(1) A と B は相似である。
(2) 5つの4次正方行列 F1, F2, F3, F4, F5 の固有多項式が
すべて同じであるとき、この中に相似である2つの行列が存在する。
(3) g(C) = O(零行列) を満たす
零ではない多項式 g(X) の次数の最小値を求めよ。



A=
1 0 0 0
0 1 0 0
1 0 1 0
0 1 0 1
B=
1 0 0 1
0 1 0 0
1 0 1 0
0 0 0 1
C=
1 0 0 0 0 1
0 1 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0
0 0 1 0 0 0
1 0 0 0 1 0
0 0 0 0 0 1










(解答7) ○, ○, 0   
(∵) (1) Caylay-Hamilton の定理。
(2) A の任意の固有値 a に対して、Frobenius の定理より A4 = O の固有値は a4 = 0 となり、a = 0 を得る。
(3) ユニタリー行列は正則行列であるが、固有値 0 を持つので、正則ではない。

(解答8) ○, ○, 1

(∵) (1) A はエルミート行列。
(2) A の任意の固有値 a は実数であり、Frobenius の定理より (A2+E)5 の固有値 は (a2 +1)5 > 0 となる。
(3) エルミート行列は対角化可能であるから、A は 零行列に相似。よって A = O.







(解答9) ×, ○, ∞

(∵) (1) 反例 a =1, b = 0
(2) A はエルミート行列、かつ零行列でなので、
0 ではない固有値を持ち、tr A = 0 よりすべて 0 以下ではない。
(3) 任意の θ に対して、右の行列 A



A =
cos θ sin θ 0 0
sin θ - con θ 0 0
0 0 cos θ sin θ
0 0 sin θ - cos θ










(解答10) ×, ×, ∞

(∵) (1) 固有値 0 に属する固有空間の次元が異なる。
(2) A と B はともに対角化可能ではない。
(3) 絶対値が 1 の任意の複素数 α,β に対して、右のユニタリー行列 U



U = 1/√2
α β
α










(解答11) ×, ×, 5

(∵) (1) (A-E)2 = O ≠ (B-E)2.
(2) 固有多項式が X>4 である 5つの Jordan 行列を考えよ。
(3) スカラー倍を除 g(X) = X3(X-1)2 (固有多項式の約多項式を考える。)