対角化可能ではない行列

(問題) 対角化可能ではない行列の例をひとつあげよ。
代数学概論の追試験とレポート課題に上の問題をだしました。
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ある学生が、 間違った行列を持ってきたので、
「その行列は対角化可能ですよ。」
「対角化可能でない行列は頭の中にはありませんか?」ときいたところ、
ホワイトボードに右のような行列をかきました。 (よりによって)
というのが最初の問題でした。
今回は、対角化可能ではない行列を考えてみましょう。
対角化可能であるための必要十分条件が 「各固有値の重複度と固有空間の次元が等しい」 ことでしたから、
等しくないものを見つけるのがひとつの方法です。 しかし、次のように考えてみましょう。
最初に零行列 O を考えます。
零行列はどんな行列をかけても零行列なので、 零行列と相似な行列は零行列だけですね。
次に、零行列 O の対角成分以外のある (i,j) 成分だけが 0 ではない行列を A とします。
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000
000

例えば右の行列を A としましょう。
固有値は 0 で重複度は3ですね。 (確認)

もし,対角化可能ならば、対角成分には 0 が並ぶので、 A は 零行列 O と相似になります。
しかし、零行列と相似な行列は零行列だけなので,矛盾です。
したがって,行列 A は対角化可能ではありません。
00k
000
000
,
010
001
000
,
011
001
000

固有値は 0 で重複度は3ならば、同様の議論ができるので、
右の行列は全て対角化可能ではありません。( k ≠0 )

k をスカラーとし E を単位行列とします。
上の議論は 零行列 O を スカラー行列 kE に置き換えても
同様にできることを (確認)しましょう。

そうすれば、最初の (問題)に対する (答え) はいくつでもあげることができますね。

3回生以上の人は 「 Jordan 行列 」と言う言葉を思い出しましょう。


ちなみに、最初に学生が持ってきた行列は右の行列です。
111
111
111

対角化可能ですね。 計算はしてもかまいません。

固有空間の次元を計算しなくても、対角化可能だとわかりますか?


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