対角化を使って問題を考える。(その2)

(問題) 数列 {an} が a1= 1, a1= 1, ak+2= ak+1 + 2 ak, ( k=1,2,... ) によって与えられている。
一般項 an を n の式で表せ。
(解答例) bk := ak+1+ak , ck := ak+1-2ak ( k=1,2,... ) とおけば、
数列 {bn} は初項 2, 公比 2 の等比数列なので、 bn = 2n,
数列 {cn} は初項 -1, 公比 -1 の等比数列なので、 cn = (-1)n,
bn - cn = 3 an なので、 an = (2n-(-1)n)/3
この解答例は次の一般解法を用いています。
(問題) 与えられた数 s, t, p, q ( p2+4q ≠ 0 ) を用いて、
数列 {an} を a1= s, a1 = t, ak+2= p ak+1 + q ak, ( k=1,2,... ) と定めるとき、一般項 an を 求めよ。
(解答例) 2次方程式 X2- p X - q = 0 の根を α,β とする。 (α≠β)
2次方程式の解と係数の関係より ak+2 - (α+β) ak+1 +αβ ak =0 である。
bk := ak+1-αak とおけば、  bk+1 = ak+2 - αak+1 = β ak+1 -αβ ak = βbk となり、
{ bn } は初項が t-αs 公比が β の等比数列であり、一般項は bn = (t-αs) βn-1 である。
ck := ak+1-βak とおけば、同様に cn = (t-βs) αn-1 を得る。

an+1-βan = cn = (t-βs) αn-1
an+1-αan = bn = (t-αs) βn-1 より、
an = { (t-βs) αn-1-(t-αs) βn-1}/(α-β) が得られる。


上の問題に戻って(確認)をしましょう。
高校の数学でも上の解法を使っていると思います。 (α,β は整数になる場合を考えていることが多いようです。)
これと行列の対角化とは何か関係があるのでしょうか?
右の行列 A の固有値と各固有空間を求めて見ましょう。
pq
10
固有多項式は X2 -pX-q ですね。 この根を α,β とします。(α≠β) 
解と係数の関係より、α+β = p, αβ=-q ですね。
α,β に属する固有空間はそれぞれ、
α
1
β
1
が生成する1次元空間です。
(α-β)-1
1
-1 α
pq
10
α β
1 1
= P-1AP =
α 0
0 β
したがって,これを並べて得られる行列 P によって、
A は対角化されます。
したがって、An = P(P-1AP)nP-1 を求めることができます。
与えられた漸化式 ak+2= p ak+1 + q ak を満たす(複素)数列全体 V を考えます。
和 と スカラー倍を各項ごとに定義すれば、 V は線形空間になることは簡単に確認ができますね
初項が 0、第2項が 1 の数列を e1 とし、 初項が 1、第2項が 0 の数列を e2 とすれば、
初項が a、第2項が b の数列は、b e1 + a e2 とあらわせるので、{ e1,e2 } は基底となり、 V は2次元の空間です。
数列 a=(ai)i=1,2,... に対して (初項を取り除いて、前にひとつずつずらした数列) a'=(ai)i=2,3,... を考えましょう。 f : V → V ( a → a') が線形変換になることも確認ができますね。
この線形変換 f の基底 { e1,e2 } に 関する表現行列を求めてみましょう。
e1=(0,1,p,...) なので、 f(e1) = (1,p,...) = p e1 + 1 e1,
pq
10
e2=(1,0,q,...) なので、 f(e2) = (0,q,...) = q e1 + 0 e2,  したがって、表現行列 A は右のようになります。

初項が s、第 2 項が t であるような V の元 x は x = t e1 + s e2 と表せます。
その成分ベクトル
t
s
は第1,2項が下から並んでいます。 これに A をかけて得られる
pq
10
t
s
=
pt+qs
t
ずらした数列 x' の第1,2項が下から並んでいます。 これは、数列 x の第2、3項です。
これから帰納的に An-1
t
s
=
an+1
an
となることがわかります。
A の固有値 α,β が異なる場合、 A は対角化可能なので、 上で求めたように An-1 が得られますね。


さて、A を対角化するとはどういうことなのかを、 この例(固有値が異なる場合)に対して考えてみましょう。

f の固有値 k に属する固有ベクトルとは、ずらしたら k 倍される数列です。
これは公比 k の等比数列であることがわかります。
f の固有値は、行列 A の固有多項式 X2- p X - q  の根でした。 (上の解法で出てきた方程式ですね)
この根を α,β (α≠β) としました。
α に属する固有ベクトルのひとつとして、初項が1のものを取ります。
y=(1,α,α2,...)、は y= αe1 + 1 e2 と表せます。
同様に β に属する固有ベクトル z=(1,β,β2,...)、 は z= βe1 + 1 e2 と表せます。
固有ベクトルの成分ベクトルを並べて得られる行列 P が A を対角化する行列ですね。


さて、α≠β の場合は {y,z} は一次独立なので、V の別の基底になっています。
基底変換 {y,z} → {e1,e2 } の行列が P になっていますね。
行列 A は f の基底 {e1,e2 } に関する表現行列です。 V の基底で固有ベクトルからなるもの {y,z} が存在する時、 基底の変換行列を用いて、 A は対角化されます。
対角化するとは、変換をわかりやすいように基底に取りかえて考えるということです。
上も解法でも、変換が分かりやすい基底(等比数列)の 一次結合におきかえて考えていますね。
連立4項の漸化式についても、同様に考えてみましょう。
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C