最大公約元が存在しないような例


s = √-5 とします。
R = { a+bs | a,b ∈ Z } は複素数体 C の部分環 (整域)です。
可換環 R の元 r = a+bs に対して N(r) = a2+5b2 と定義すれば、
r, r' ∈ R に対して N(rr') = N(r)N(r') が成り立ちます。 (確認しましょう)
N(r) は(正の)整数値をとることに注意をしましょう。
もし r = a+bs が逆元 r' をもつならば 1 = N(1) = N(rr') = N(r)N(r') となるので、 a2+5b2 = N(r) = 1 です。
a,b ∈ Z なので、b = 0, a = ±1 となり、R の正則元は ±1 であることがわかります。
また、 r が k の約元ならば k = rm となる m が存在します。 この時、N(k) = N(rm) = N(r)N(m) より、N(r) は N(k) の約数になります。
このことを使って、R の元 6 の約元を全て求めましょう。
(ただし、正則元 ±1 倍は同一視してかまいません。 ここでも片一方のみを書くことにします。)
N(6)=36 なので、r=a+bs が の約元となる条件は N(r) が 36 の約数 (36,18,12,9,6,4,3,2,1) であることです。
N(r) = 1 ならば r = 1 です。
N(r) = a2+5b2 = 2,3 となる 整数 a,b は存在しません。
N(r) = 4 ならば r = 2.  N(r) = 6 ならば r = 1±s.
N(r) = a2+5b2 = 9 ならば、 (a,b) = (±3,0) or (±2,±1) です。
しかし、r = 2±s は 6 の約元ではありません。
(もし、6 = (2±s)m となる m があれば、 36 = N(6) = N(2±s)N(m) = 9N(m) より、 m = ±2 となりますが、6 と ±2(2±s) は異なります。)
N(r) = a2+5b2 = 12,18 となる整数 a,b は存在しません。
N(r) = a2+5b2 = 36 ならば、 (a,b)=(±6,0) or (±4,±2) です。
しかし、さっきと同様にして r = 4±2s は 6 の約元でないことが確かめられます。
さて、6 = 2×3 かつ 6 = (1+s)(1-s) なので、6 の約元の集合は、
{ 1, 2, 1±s, 3, 6 } です。
次に 4+2s の約元の集合を求めてみましょう。
N(4+2s) = 36 なので、さっきとまったく同様にして、約元の集合
{ 1, 2, 1-s, 2+s, 4+2s } が得られます。
さて、6 と 4+2s の公約元の集合は {1,2,1-s} です。
N(2) = 4,N(1-s) = 6 なので、 2 は 1-s の約元ではありませんし、 1-s は 2 の約元ではありません。 (確認しましょう)
したがって最大公約元は存在しません。