◇ 算数科 ◇

一人一人が算数に感じる学習を支えるカリキュラムの構想





はじめに

 学習内容の精選を図り、カリキュラムを再構成していくことが求められている。そこで、本研究においては子どもの情意が高められる学習活動をめざして、算数の本質を探りながら、子どもの情意が連続発展するような学習活動、そしてカリキュラムの再構成をしていきたいと考えている。

1 研究テーマ設定の理由
 (1) これまでの研究の成果

 算数科では、「一人一人が算数に感じる学習を支える評価と指導」をテーマとして3年間の研究を行ってきた。そこでは、算数に感じる子どもの姿を、次のようにとらえた。

   <算数に感じる子どもの姿>
  ○事物事象に自ら積極的に関わる子ども
  ○問題解決に楽しさを感じる子ども
  ○数学的な見方、考え方のよさに感じる子ども
  ○自分の成長に気付き喜びを感じる子ども


 このような算数に感じる子どもを想定し、子どもの外にあるものを身につけていくといったトップダウン的な発想から、子どもの内にあるものを引き出すといったボトムアップ的な発想へと指導観の変革を図ろうとした。そのために、子どもの情意を考えながら、一人一人が算数に感じる学習を支える評価と指導のあり方を探ってきた。その研究の成果としては、主に次の2点があげられる。

  1. 一人一人の感じ方の違いや解決方法、
         考え方の違いを生かした学習を進めることができた。
  2.子どもによる評価を学習の中に位置づけ、
         指導者による評価との一体化を図ることができた。

 このように、学習を子どもの側からとらえ直すことで、新たな評価の方法や、指導のあり方が明確になってきた。

(2) 新たなる課題

 これまでの研究では、ある特定の時間や単元内において、算数に感じる学習を子どもの情意を元に、子どもの側からとらえ直し、情意の高まりを支える学習を構成することができたが、単元間や領域全体を見通した学習構成が不十分であることが分かってきた。そこで、さらに算数に感じる子どもの姿に迫るためにも、低学年・中学年・高学年という子どもの発達にともなった情意を軸として、学習を再編成し、さらに情意が高まるような学習を構築する必要があると考えた。そこで、本年度の研究のテーマを「一人一人が算数に感じる学習を支えるカリキュラムの構想」とし研究を進めることにした。


 2 研究の方向
 (1) 算数科の本質を考えた研究の方向

 本年度から取り組もうとしている情意を軸としたカリキュラム構成において、算数の本質を次のように考えた。数学的な見方・考え方を駆使しながら、算数・数学の創造性・発展性・有用性に感じる態度・能力算数・数学では、自分の考えで新たな方法を創り出したり(創造性)、様々な場面で、算数での考え方を使ったり(発展性)、より簡潔で分かりやすい方法を見つけ出したり(有用性)することが重要であると考えた。算数科の本質を追究することは、このような創造性・発展性・有用性という性質をとらえることが内容を見直す一つの切り口となると考えた。
 そこで、子どもたちが算数の本質に感じることができるように、学習内容を精選し、学習形態の工夫をして学習活動を構成していき、さらに、カリキュラムを再構築していくことが必要となる。 さて、算数の本質に感じている子どもの姿とはどのようなものであろうか。その姿を読み取る一つの方法として情意の読み取りが考えられる。
 創造性に感じたとき、「○○さんの考えを使って、新しい方法を見つけることができたよ。」「自分で考え出すことができたよ」というような感動にも似た情意が見られる。
 また、発展性に感じたとき、「平行四辺形を調べたときの方法が、直方体や立方体を調べるときにも使えるなんて知らなかった」というような、驚きが含まれた情意が見られる。
 また、有用性に感じたとき、「公式を使ったらすぐに求められるのでとても便利だなと思いました。」というように、その効力や便利さからわき出る情意が見られる。
 このような情意は、どのように高まり、連続発展していくのであろうか。そのことを発達に沿って考えていくことにした。

 (2) 子どもの発達における情意の高まり

 子どもの感じ方や、感じる対象は、発達段階によって変容していくと考えられる。 そこで、低学年・中学年・高学年での情意の高まりや連続性を、算数科の本質を見据えながら、子どもの自己評価能力(算数科で考えている自己評価能力とは、問題解決活動の過程で立ち止まり、自分の学習目標に照らし合わせて評価し、判断・意志決定を繰り返しながら学習を進めたり方向を修正したりする能力のことである)の発達と関係づけて考えていくことにする。

 @ 低学年での情意

 低学年では、学習を振り返る場面で「おもしろそうだな」「楽しかった」「いろいろ作れてうれしかった」などの活動そのものに対しての情意が中心になる。これは、算数の本質的な面とあまり関係ないようではあるが、指導者の働きかけによって、低学年として算数の本質に感じている様子も表れてくる。例えば、1年「ひき算」や「かたち」のところでは、「この前やった、足し算のときとにてるな」や、粘土を操作しながら「ここがぴーんととんがった形のはずだよ」などの様子が見られる。ただし、このようなつぶやきは指導者が、繰り返し「前に学習したことと似ていないかな」「やってみて何か気付いたことはないかな」などと語りかける中から浮き出てくるものである。  

 A 中学年での情意

 中学年になると、見通しをもったり、友だちと意見の交流をしたりするときに、「いろいろな方法が分かったのでよかった」「次は、○○の方法でやってみたい」など、友だちの考えに対しての情意が多くなってくる。これは、他者を意識し、他者の考えを自分の中に取り込むことができるようになるという自己評価能力の発達とも関連していると考えられる。また、算数の本質に感じている姿ともいえる。例えば、4年「四角形の面積」で、「一つ一つ数えるより長方形や正方形に分けて考えるやり方の方が便利だ」など、他のやり方と比較してより能率的な方法を見つけようとしているつぶやきが見られた。 

 B 高学年での情意

 高学年になると、「自分の方法は少しめんどうだけど、○○の方法はいつでも使えるので便利だ」「○○な方法があるなんて気付かなかった。もっといい方法があるかも知れないな」など、自分の考えを自分で振り返りながら、新たなる知的好奇心を芽生えさせていることが分かる。これは、算数の本質を総合的に感じている姿だといえる。この時期には、自分のことを自分で見つめ直すことができるようになってくる時期であるから、今までの生活経験や学習経験を総合して、結果だけでなく、解決の過程にも目を向けながら、自分を自分で振り返るようになってくる。
 このように、子どもの発達や自己評価能力の発達に応じて、情意の高まりが見られることが分かった。

 3 研究の実際

 子どもの発達にともなって感じる対象や内容は変化してくることが分かってきた。そこで、算数科の本質に感じる子どもの情意に重点を置き、子どもの情意をより連続発展していくことができる学習をこうせいしていくことにする。その際、単元内での学習構成、単元間の学習構成、領域間での学習構成、教科間での学習構成、コンピュータの導入という5つの項目に重点を置いて洗いなおすことにした。また、このような視点からカリキュラムを見直し、再構築していきたいと考えた。

 (1) 単元内での学習構成

 今までは、1時間単位で学習を構成しがちであったが、子どもたちの情意の連続他ってんを考えると、単元を通しての学習構成が必要となってくる。
 例えば、4年「面積」の学習では、「テトリスじんとりゲーム」で導入し、そのゲームで作った図形(複合図形になっている)の面積を調べる活動をする。これは、任意単位・共通単位・普遍単位のすべての要素を含んだものであり、単元を通して生きて働く学習素材となった。
 さらにそのような学習活動を積み重ねることで子どもが学習計画を立てたりすることもできるようになってくる。5年「図形の面積」の学習を例にしてみよう。子どもに「どの形から調べたいか」と聞いたところ、「平行四辺形」と答えた子どもが多かった。そこで最初は、全員で平行四辺形の面積の求め方を追求することにした。次に、それぞれの子どもたちの調べたい図形が違うので、自分の力で学習計画を立てていった。その学習計画でとにかく学習を進めるが、自分の計画を振り返りながら、途中で何度も「やっぱり、○○を先にした方が分かりやすそう」といって計画を立て直している子どもも多かった。学習計画を立てる際に、「平行四辺形で使った考え方がひし形にも使えるぞ」など算数の本質に感じていた。
 このような学習を構成していくことが情意の連続性を生み、関心・意欲も高めることができるのであると考える。

 (2) 単元間での学習構成

 教科書における学習内容の配列では、同じ領域の単元が連続しないように配慮して組まれているが、時として続けて学習した方が内容の関連がつながり、子どもの情意を連続発展したりすることにつながるものである。
 4年生「四角形」の単元と、「直方体と立方体」の単元での学習を例にしてみよう。 さて、昨年度の評価の研究の実践において「四角形」での評価を「直方体と立方体」に生かす実践をした。結果として2つのパターンで実践した。1つは、単元間の期間が長かったものと、もう一つは、単元間の期間が短かったものである。
 単元間の期間が短かったときには、直方体や立方体を調べていく観点を四角形の学習を思い出しながら自分で見つけていくことができたのに対して、期間が長かったときは、指導者が「四角形のときに調べた方法は使えないかな」と助言してはじめて気付く子どもが多かった。また、学習後の感想カードに四角形での学習が役に立ったかどうかに○をつけるところをもうけたが、期間が短かった場合は、全員が役に立ったと感じているのに対して、期間が長かった場合は、ほぼ半分に減っていた。
 この結果からわかるように、単元間でも時期をずらして、期間を短くする方が効果的で、子どもの情意をより高めることができるということがいえる。さらに、期間を短くするだけではなく、四角形で学習したことを直方体の学習でどう生かしていくかがポイントである。つまり、構成要素としては、共通するところがあるが、辺に加えて面という要素が入ってくる。さらに、3次元になるので空間的な思考を要求される。まったく、四角形と同じではないということである。しかし、四角形で学習してきた着眼点は必ず生きてくると考えられる。そのことを空間的な思考に発展して活用できるかどうかも算数科の本質に関わってくるのではないだろうか。

 (3) 領域間の学習構成

 現行の学習指導要領では、数と計算、量と測定、図形、数量関係の4領域で構成されている。しかし、数と計算の中に数量関係的な思考を使って学習する場合もあるし、量と測定の中に図形的な思考を使って学習する場合などもある。また、数量関係のような関数的な見方・考え方はどの領域でも必要になってくるものである。子どもの情意から見ても同じ様なことが言える。
 2年生の「九九」を例に考えてみよう。九九は、覚えるだけや、算法の一つとして見るのではなく、構成していくときに関係に目をつけていくようにしたり、構成した後に決まりを見つけるという活動をしたりすることで、数量関係にある見方・考え方を駆使するようにする。例えば、9の段の九九を学習した後に決まりをみつけるという学習をすると、「一の位の数が1ずつ小さくなっているよ」や「十の位と一の位を合わせるといつも9になっているよ」「十の位の数は1ずつ増えているよ」など実にたくさんの決まりをみつけることができる。それは、九九一つ一つを見ているのではなく前後や全体と関係づけて見ているからそのような発見があるのである。
 今後、数量関係領域との関連だけでなく、図形領域と量と測定領域の関連性にも着目していきたいと考えている。

 (4) 教科間の学習構成

 学習は、他の教科とも総合的に絡み合いながら成り立っているものである。そこで、他教科の中での算数的な要素を洗い出し、その部分で統合的な学習を組んでいくことは価値あるものだと考える。例えば、3年「重さ」の学習としては、重さの比較だけに天秤を道具として用いるが、ここで子どもたちは天秤の仕組みにも関心を持つはずである。つまり、理科の「天秤」の学習とリンクして学習を構成した方が子どもの情意の連続発展につながると考える。

 (5) コンピュータの導入

 情報化時代の中で、必要な情報を取捨選択する資質や能力が求められている。コンピュータもその一つである。今までの算数科の学習では、コンピュータを導入素材として用いる活用が多かった。そして、コンピュータを扱ったことのない指導者は、結局指導できないで終わってしまうという難しい素材が多かったのが現実であろう。そこで、コンピュータの特性である@視覚的にとらえることができる。A自由に何度でも操作することができる。ということを利用して、実際に操作できる学習具としての活用が重要になってくる。本研究でも、そういった活用ができるように配慮した。

 おわりに

 算数の本質を見据えながら、子どもの情意の高まりを軸として学習構成をしていくことについて研究してきた。しかし、領域を見たとき図形領域と、量と測定領域は重さ、割合を除いては統合領域として扱っていけると考えられる。また、数と計算領域で計算が長く続いたりすると、子どもも敬遠しがちになる。そのような点からも内容の精選を図る必要がある。今後も、算数科の本質に感じる子どもの情意を高めていくことができるように学習活動を構成し、子どもたちの主体的な学習姿勢を生み、算数に対する情意を高めていくカリキュラムの構築を目指して、さらに研究を進めていく。