平成13年 家庭科 教科論
 
よりよい生活を創り出す子どもを育てる家庭科の授業と評価

1. 家庭科のめざすもの・・・・めざす子どもの姿

日常生活を見つめ直し,その中に課題を見つけ,家族や仲間とのつながり・まわりの人々との関わりの中で,課題解決のための方法を見いだし,よりよりくらしや自己のあり方を求めて実践する姿

2. カリキュラムづくりの考え方
(1)「見方・考え方」と「実践力」からとらえた子どもの学びの育ち
見方・考え方:子ども自身がその子なりの家庭や社会への価値観の形成の基本となるような生活の
       科学的認識や生活事象への気づき

実践力:生活の中で課題を具体化しようとする意思や技能,さらには生活にかかわる多くの情報の中
    から必要なものを選択し,意思決定していく力

 生活は多くの人とのかかわりの中で営まれており,自分,家族,社会をベースに「見方・考え方」と「実践力」の育ちを想定したものが下の図9-1である。    
                                ○見方・考え方  ●実践力
自分のくらし 家族とくらし 社会とくらし
5年 ○ 家庭生活が人やものとのかかわりの中で営まれていることに気づく● 自分の日常生活に必要な基礎的技能を身につけ実践する ○ 家族とのふれあいがある心地よさに気づく● 自分の生活に積極的に働きかける ○ 自分の生活が多くの人々とのかかわりで成り立っていることに気づく● 身近な人々や生活環境との調和を考え自分の生活を工夫する
6年 ○ 自分の生活が周りの人々の生活と大きく関わっていることに気づく● 身につけた技能を家族や身近な人々との生活に生かす ○ 家族が互いに支え合って生活していることに気づく● 家庭の仕事を分担したり協力したりする ○ よりよい生活のためには身近な人々との協力が必要であることに気づく● 社会の一員として思いやりをもって責任ある生活をする
図9-1  見方・考え方と実践力の育ち

(2)カリキュラムの構成
 カリキュラム構成にあたっては,各学期に自分,社会,家族と明確な方向性をもったテーマを設定した。1学期は,「自分のくらしを考えよう」をテーマに,2学期のテーマには,自分のくらしから視野を広げてまわりとのかかわりに関心を広げていくことから「社会とくらしを考えよう」とした。3学期のテーマには,1年間の家庭科の学習で育ってきたものが,最終的に家庭へ戻っていくことを願い,「心のふれあうくらしを考えよう」とした。テーマを意識することで,いくつかの領域にまたがった生活場面を一つの題材にすることができ,内容の精選や統合がしやすくなる。また,扱う内容は組みかえることも可能で,題材は,子どもの意識や実態に即して,また,学校の取り組みなどとも合わせて考え配列をするべきものである。

3. 家庭科の授業を考える
(1)生活の中から課題を設定する
 生活場面を振り返り,自分の課題を見つけた上で,課題解決のための学習目標を設定する。学習後,実践後には満足感だけでなく,「もっとこうした方がいいかな」と新たな課題が出てくるかも知れない。このように,学習は生活から課題を見つけ,家庭科の時間に改善策を検討し,知識や技能を習得した後,再び生活に位置づけていくという流れを繰り返す。

(2)実生活との関連をはかる
 どの題材にあたっても,必ず十分な観察・実践期間を設けることで実生活と関連をもたせることが重要である。経験から「?したい」と子どもが実感すれば,課題はより子どものものになる。家庭での実践や観察も,それらを報告できる交流の場を設定することが必要である。

(3)自分への気づきを大切にする
 家庭科はいろいろな場で得られた知識や考え方を「生活」をキーワードに結びつけていく役割をする場である。ものごとを多面的にとらえ,得られた多くの選択肢の中から,生活の中に自分をどのように生かせるのか,自分が今どのような状況にいて,どのような判断をしているのか考え,選択肢を選んでいけるように,自分への気づきを大切にする視点が必要であると考える。また,自らの成長を実感できるような自分への気づきも重要である。

4. 授業の中での評価と支援
(1)「見方・考え方」「実践力」の観点からとらえた評価の規準
 評価については,図9-1をさらに具体化した,明確な見通しをもっておかねばならない。指導案には「見方・考え方」「実践力」の観点から具体的な評価の規準を想定している(指導案参照)。これらの項目については,指導計画を立てていく過程で,指導者側がそれらを明確にし,また補足,修正していくものである。
 また,「見方・考え方」「実践力」とこれまでの4観点「関心・意欲・態度」「技能」「創意・工夫」「知識・理解」との関係はおおよそ図9-2のようにとらえている。また,4つの観点は並列的なものではなく,「関心・意欲・態度」は包括的なものと考える。

(2)目的・目標を明確にする
 十分に目標を達成している子どもが「自分はまだまだだ」と自分への評価が低く,達成感を得られていない場合がある。反対に,子ども自身がこれでいいかなと思っていても,友だちや指導者とともに見直すことで「もっとこうした方がいいのかな」と考えることができれば,子ども自身が目的・目標にそった,よりよい規準に修正していくだろう。目的意識がより明確になれば,そのためにはどんな工夫をすればよいのか,どうすればよいのかを考える必要が出てくる。題材の目標に即応させた具体的な評価の規準が子どもと指導者の間で共有できるものとなる。

(3)活動を振り返る場・認め合える場
 活動を振り返るにあたり,自分への気づきの視点が大切になってくる。また,自己評価へのなんらかの手だてを持って,友だちと認め合える取り組みにより,自分への気づきが深まったり,再認識できたりすることもある。そこで,授業づくりとも合わせて,ワークシートの有効な活用が考えられる。ワークシートは,自分の変容を客観的に確認できるものである。そこで,ワークシートへの書き込みや絵に注目し,ワークシートの中で指導者が質問をすることに子どもがコメントを返す過程や子どもが何度かの改善策を書き加えていくなど,活動記録を残し,また,それらが評価規準の修正を行う材料になりうるような活用の方法を考えなくてはならない。


(文中の図は省略)