平成14年度 家庭科教科論

子どもの確かな学びを創り出す家庭科授業と評価のあり方

1.研究テーマ設定の理由
 今日子どもたちをとりまく社会は、情報化、環境問題への関心の高まりや、高齢化、少子化、核家族化など変化がめまぐるしく起こっている。その変化に伴って、家庭生活のあり方もこれからますます大きく変化することが考えられる。しかし、いかに社会が変化しようとも、家庭生活の中には、いろいろな人・物・ことによって営まれ、それらはお互いに支え合っていることには変わりない。むしろ、社会を構成する単位としての家庭の重要性が、増してきたといえる。家庭科では、子どもたちが激しく変化する社会の中で、自分に対する気づきに基づいた家族に対する思いを育てることが、今まで以上に大切になってくると考える。
本校家庭科では、これまでに教科の本質とは何かを明らかにし、それに基づくカリキュラム研究をすすめてきた。昨年度は「よりよい生活を創り出す子どもを育てる家庭科の授業と評価」をテーマとした。家庭科学習の中で、子どもが課題に対して自分なりの解決方法を見つけたり、自分の生活に照らし合わせて考えたりして、「自分への気づき」を深めることが、家族とともによりよい生活を創り出していこうとする実践的な態度を育てる上で重要と考え、授業づくりをすすめてきた。そこでは、「自分への気づき」を深めながら、よりよい生活を創り出していく子どもの育ちを「見方・考え方」「実践力」の2つの側面からとらえようとしてきた。しかし、「どのような見方・考え方」「どのような実践力」が、一人一人の子どもたちに確かに育っているのかを見ようとするとき、教科の目標、評価観点、評価規準をあらためて考えなければならないという課題が見えた。そこで、家庭科での基礎・基本に基づいた評価のあり方、それらを子どもたちが確実に身につける授業のあり方について、さらに研究をすすめていきたいと考え、本年度の家庭科の研究テーマを上記のように設定した。
2.家庭科における確かな学びとは
 家庭科での基礎・基本を
○ 態度;家族などにとってよりよい生活を工夫しようとする態度
○ 能力;家族などにとってよりよい生活を工夫する力や用具を安全・衛生的に使う力と自分にとって必要な方法、情報を活用する力
○ 認識;家庭生活を支えているものの要素や活動の意味や大切さに気づき、分かる
と考える。そしてこの基礎・基本を育てていくために、「自分に対する気づき」や「家族に対する思い」といった心情的側面を大切にしたいと考えた。そこで家庭科の目標であるめざす子どもの姿を次のように設定した。

めざす子どもの姿
「自分の生活を見つめ、家族の一員としての自分に気づき、家族や周りの人々にとってよりよい生活を工夫して創り出そうとする能力や理解、実践的な態度を高める子ども」


3.家庭科における確かな学びを支える授業のあり方
 家庭科で育てたい「態度」「能力」「認識」が子どもたちにとって確かな学びとなるには、何を大切にし、どのように授業を構想していくか考えた。
@ 生活観察から課題をもつ学習
A 課題に対して追求する学習
B 科学的認識を取り入れた学習
C 個人の学びと集団を結ぶ学習
D 自分の学習をふり返る学習
4.家庭科における確かな学びを支える評価のあり方
(1)基本的な考え方について
 家庭科で育てたい「態度・能力・認識」を育てていくために、目標の設定と授業構想、そこでの評価のあり方が重要な要素であると考える。評価がそれぞれの学習の中での育てたい力を子どもの確かな学びとなるための支えと考え、目標に対して準拠する形で明確にしたいと考えた。そこで、家庭科の基礎・基本の中の「能力」を「家族にとってよりよい生活を考え、工夫する力」と「生活的な技能」の2つに分けて、4観点とし、次のように設定する。
@ 家庭生活への関心・意欲・態度
A 家庭生活への家庭創意工夫
B 家庭生活への基礎的な技能
C 家庭生活への基礎的な技能
(2)観点別評価の視点と進め方について
 それぞれの評価の観点について、家庭科のめざす子どもの姿に基づき、次のようにそれぞれの観点別評価の視点と規準を次のように考えた。
「家庭生活への関心・意欲・態度」
「態度・能力・認識」のいずれもが相互にかかわりながら、子どもの学びを創り上げると考える。子どもが学習で習得した基礎的な技能・知識や、それらを生かして家庭生活で実践しようとする態度が発揮されるには、子どもの「家庭生活への関心・意欲・態度」の支えがなければそれぞれが離れたものになってしまう。子どもが学習の切り口となる日常生活や家庭生活のことがらにどのような関心・意欲・態度を持ち、学習過程で発展、継続していくことが大切であると考える。
「家庭生活への関心・意欲・態度」の評価の対象を、「自分の家庭生活に関心をもっている」「自ら意欲的に追求しようと学習に取り組んでいる」といった家庭生活への「関心」や学習への「意欲」、「家庭の仕事をする人の姿を共感的に受け止めている」「家族のために家庭生活に協力しようとする」家族の一員としての「態度」とする。これらの子どもの姿を、
@子どもの活動中の様子・発言・つぶやき・ワークシートへの記述
A実習や作品づくりへの調べ学習や聞き取り調査の様子・ワークシートへの記述
から評価する。
「家庭生活への創意工夫」
自分の生活を見つめ直し、自分を支えてくれる家族や家庭生活への大切さに気づくようにすることが家庭科の担っている大きな部分である。学習したことを活用し、子どもが家族のために「家庭生活への創意工夫」するときには、自分本位なものではなく、家族の立場に立ち、家族の一員としての意識をもったものになると考える。
「家庭生活への創意工夫」の評価の対象を、「家庭生活への課題に対して、家族の立場に立ってよりよい解決方法を考える」といった家族を意識する姿、学習過程で交流したそれぞれの家庭での工夫の中から、「今ある家庭生活を見直し、よりよくできそうな現実的なことを選択する」姿とする。これらの子どもの姿を、
@ 子どもの活動中の様子・発言・つぶやき・ワークシートへの記述
A 学習後の子どもの活動を交流する場での様子
B 子どもとの対話
から評価する。
「家庭生活への技能」
子どもが自分の生活を自分で創り上げていくときに、生活する技能が必要である。「家庭生活への基礎的な技能」を習得することは、家庭生活への主体的な参加を支えるものと考える。ここでいう技能は、簡単な生活技能、用具を安全・衛生的に使う力と、家庭生活についての課題をもち、それを解決する必要な方法や情報を自分から進んで探し、試す力であると考える。
「家庭生活への技能」の評価の対象を、「簡単な生活技能」、「用具を安全・衛生的に使う」姿と「家庭生活についての課題をもち、それを解決する必要な方法や情報を自分から進んで探し、試す」姿とする。これらの子どもの姿を、
@ 実習や作品づくりの様子
A 学習計画カードやワークシートへの記述
から評価する。
「家庭生活への基礎的知識・理解」
学習過程で得た知識は、その後の子どもの実生活をよりよいものとするものでなければならない。「なぜ〜なのか」と理由が分かれば、何に配慮して考えなければならないのかに気づく(認識する)ことができる。この気づきこそが、知識と経験をつなげ、学習したことが子どものものになると考える。
「家庭生活への基礎的知識・理解」の評価の対象を、「調べたり、聞いたりして得た知識や事象の要素を、それぞれに結びついたものとなっているか」である。この子どもの姿を、
@子どもの活動中の様子・発言・つぶやき・ワークシートへの記述
A子どもとの対話
B客観テスト
から評価する。
(3)授業と評価の関係について
 家庭科でめざす子どもの姿を育てるためには、上で述べた「授業」と「評価」をいかに融合していくかが重要になってくる。まず、今、目の前の子どもに、「どのような力を育てるのか」「どのような姿がよりよいのか」を見据えた上で、さらに4つの観点でみるとどのような力や姿であるかを具体的に設定することが必要となる。それは、一方通行なものではなく、活動から評価を設定するものもあれば、評価から活動を設定することもあると考えられる。ここで大切なのは、子どもの姿をみる明確な視点、「評価規準」をもつことである。この評価規準は題材ごとの学習計画段階で、いつ・どのような学習活動を設定し、その学習で題材の目標に照らし合わせた子どもの学びをどのように評価するかということを、それまでの学習過程や子どもの実態に合わせて計画しておくことである。また、一授業の学習活動で、複数の観点について子どもの姿を見ることが可能であったとしても、45分の授業で複数の観点を見ることは非常に難しい。そこで多くの子ども一人ひとりの姿を的確に評価するためには、学習活動で特に重点をおく評価の観点を1つ設定することがより望ましいと考える。そして、それぞれの観点別に評価した子どもの姿、学習状況を次の学習への支援に結びつけながら、生かしていかなければならないと考える。