平成11年度国語科各論テーマ

◇国語科 「聞く・話す」を中心とした表現愛を育む国語科カリキュラムの改善


 はじめに


 教室の中で授業中の発表は、学年が上がるにつれて減っていくという現実がある。
誰に何をどのように話し合ったり伝え合ったりするのかという「相手意識」「目的意識」「方法意識」そして「評価意識」を明確にしたカリキュラムを構築することが望まれている。 そこで、本校の国語科では、平成8年度より、言語を介してのよりよい自己表現やコミュニケーション能力、つまり「聞く・話す」ことに重点を置いて取り組むことになった。

1.昨年度までの成果と課題


国語科では、昭和63年度より、個性を生かす教育を充実するために、子どもの作文における表現活動に焦点をあてて実践的な研究を進めてきた。そして、題材の開発、学習過程のとらえ直し、理解活動との効果的な関連、単元配列の工夫などを行った。 平成8年度からは、「聞く・話す」活動に重点を移し、子どもの育ちと教科の領域との関連をはかり精選された表現愛を育むカリキュラムを構築していくことになった。その成果として、同学年内での単元間のつながりや学年を1年から6年まで通してみた時の文学的な文章の相互のつながりを明確にしたカリキュラムを配列した。また、話し合いの基盤となる対話を重視した学習を展開することができるようになった。 しかし、課題として、以下のようなことが明らかになってきた。
A 現行の国語科カリキュラムの内容の厳選と新学習指導要領との関わりを明確にしつつ「聞く・話す」 ことに重点を置いたカリキュラムの見直しはどのようにすればよいか。
B 生きてはたらく力となるための国語科での役割や、本校における総合的学習とどう関連させながら豊かな人間性を育んでいけばよいか。
そこで、上記AとBに対応した国語科の研究テ−マを『「聞く・話す」を中心とした表現愛を育む国語科カリキュラムの改善』とし、国語科で表現愛を育むことが、本校のめざす「豊かな人間性を育む」ことにつながると考えた。そして、他教科や道徳や総合的学習との関連も図ったカリキュラムの構想をめざすこととなった。

2.本校国語科がめざすもの


 国語科で大切にしたいことは、「読みたい」「書きたい」「話したい」「聞きたい」という心情に満ち溢れながら、自分の思ったことや、書いたことや、聞いたことや、調べたことや、読んだことなどを言語化して、今ある自分を、さらに豊かに自分らしく表現していこうとすることである。私たちは、それを「表現愛」と定義している。「表現愛」なくして、音読や作文や発表の読み方、書き方、話し方などの技能にはしってしまうと、子どもたちは「よりよい自分」をめざして主体性、協調性、創造性を発揮することができないと考える。私たちは、表現愛を国語科の本質と考え、表現愛を育む国語科のカリキュラムを作り、実践することにより、子どもたちは、豊かな人間性を育んでいくことにつながると考えている。

3.国語科カリキュラムの構造


国語科のカリキュラムを構築する上で大切なことは、「聞く・話す」「読む」「書く」領域を重点におく単元構成と、子どもたちが学習活動によさや楽しさを感じているかという「子どもの側に立った低学年・中学年・高学年の育ちに応じた学習活動」すなわち、子どもの学びの育ちとの両面をバランスよく配列していくことが大切であると考える。
1 子どもの学びの育ち
子どもの側に立った表現愛を育む国語科のカリキュラムを配列するために、子ども学びの育ちを明確にする。
@ 低学年 ───言語を並べる学習活動をすることに楽しさをもつ段階
低学年の子どもは、多くの言葉を取り入れたり表出したりすることに楽しさを見いだす時期である。しりとり遊びで言語をたくさん並べて集めたり、絵本をどんどん読み進めていくことに価値をもつ時期である。また、低学年の子どもに学習後感想を書かせると「○○したことがうれしかった」「○○したことが楽しかった」というような活動そのものに対する心情を書くことがよくある。低学年の子どもは、書く、読む、話す、聞くといった学習活動そのものに情意を働かせる時期であるともいえる。
A 中学年 ───言語を比べる学習活動をすることによさを感じる段階
中学年の子どもは、二つ以上の事柄や対象の関係を比べてとらえることができる時期である。文学的な文章を読むにしても、主人公とそれ以外の人物との関係を考えたり、ある行動をきっかけにした、人物の前後の気持ちを比べたりすることができるようになる。また、説明的な文章においては、段落と段落とのつながりを考えたり、筆者の表現の工夫にまで、目を向けることができるようになる。すなわち、内容と表現とを比べながら読むことができる。また、話し合いにおいては、自分の考えと友だちの意見との相違に気づく時期でもある。
B 高学年 ───言語を組み合わす学習活動をすることによさがわかる段階
高学年の子どもは、多様な事柄や対象を言葉を通してまとめたり関連づけたりできるようになる。また、1つの文章からわかることを深く読み取り、さまざまな工夫をして表現することができるようになる。言い換えれば、言語を組み合わすことができるようになる時期である。文学的な文章を読む時にも、作品の主題や意図を読み取ることができるようになったり、同一の作者の複数の物語を比べながら読むことで作者の生き方や考え方にまで思いを巡らせることができるようになる。説明的な文章においても、要旨や要点をつかみ、取り入れた情報を再構成したり、一層深めたりして、友だちに表現を工夫して聞き手の立場に立って話すことができるようになる。また、話し合い活動では、複数の友だちの意見を受けとめ、組み合わせて、よりよい自分の意見として友だちに話すことができるようになる時期でもある。
2 「聞く・話す」を中心とした領域の設定
これからの学校教育の重要な課題は、子ども一人ひとりの思いや願いを実現することができるよう子どもの側に立った教育を創造し、カリキュラムを構築することである。子どもたちが自分の思いや願いをもって、教材に主体的にかかわるためには、国語科の授業において身につけた力を他教科での学習活動に積極的に生かしたり、他の教科等の学習内容や方法を国語科の学習活動に取り入れたりする工夫が必要である。そうすることにより、子どもたちが国語科の授業で身につけた力は、学校生活や家庭生活や地域社会で生きてはたらくようになると考える。
このような視点から表現愛を育む国語科カリキュラムを構築するうえでの領域(範囲)として、平成8年度より「理解」「表現」「言語」の3つの領域に分けて子どもの側に立った学習活動を配列したカリキュラムを構築した。さらに、昨年度からは3つの領域を中心としたカリキュラムから、「理解」「表現」「言語」の各領域を横断できるように「聞く・話す」「読む」「書く」の学習活動を中心とした領域のカリキュラムに再編し、「聞く・話す」ことに重点をおいたカリキュラムを構築した。

4.本年度の国語科の取り組み


 昨年度は、話し合いの基礎となる、対話について取り組み、子どもの側にたって、一人一人が自分の考えや意見を発表できるにはどのような活動の場を設定し、どのような内容のことを話題とすることが子どもたちの国語科における「聞く」「話す」ことの表現愛を高めることにつながるのかというカリキュラムに基づく授業を行った。 本年度は、昨年度構築したカリキュラムをもとに「聞く・話す」ことに重点をおいた学習を展開していくことにより、子どもたちが表現愛を育んでいるのかという授業からの見直しとカリキュラムの内容の厳選についての見直しとを図りたい。また、国語科で学習したことが他教科や道徳や総合的学習で生きてはたらいているのか、また、反対に他教科や道徳や総合的学習から国語科に取り入れて、それをさらによりよい表現や発表にかえしていくことができるのかという関連について明らかにしていきたい。
1 「聞く・話す」に重点をおく平成12年度にむけたカリキュラム
私たちは、平成12年度にむけて、資料1(後のペ−ジ参照)のように「聞く・話す」を重点においたカリキュラムを配列した。例えば、4月は文学的な文章における自分や友だちの音読や朗読について「聞く・話す」に重点を置く。友だちや自分のよりよい音読について「聞く・話す」のである。5月は、1つのテーマのもとでのスピーチをすることに重点を置き「聞く・話す」を行う。そして、6月の説明的な文章の学習については、11月が討論を、1月が調べ学習を中心におくことに対比して、読解に重点を置いて「聞く・話す」学習を実施する。さらに、7月の文学的な文章の学習については、4月と異なり読書紹介を中心とした「聞く・話す」学習を実施する。 このように、1つの単元で何に重点をおいて「聞く・話す」のかを明示した。 以上のように表現愛を育むカリキュラムを構築する中で、同学年内での単元間のつながりや、学年を1年から6年まで通してみた時の文学的な文章・説明的な文章相互のつながりや、他教科とのつながりが見えてくる。国語科では、領域としての「聞く・話す」「読む」「書く」などのそれぞれの学習活動は、相互に関連をはかりつつ表現愛を育んでいくものであると考える。例えば、2年生「動物博士になって話そう」では、動物博士になって自分が調べたいことを説明するというめあてをもつ。そして自分が友だちに伝えたいと思った動物について書かれた教材文を読み、自分と同じ動物のことを調べた友だちと相談し二人組でわかったことをまとめて書く。その後、相手を変えて、調べた種類のちがう動物博士で二人組をつくり対話をする。そして、相手を変えて繰り返し対話を進めていく。できるだけたくさんの人と対話をすることにより、聞き手にわかりやすい発表をするためには、どのようなことに気をつけたらよいのかがわかってくる。これら一連の学習活動には「聞く・話す」「読む」「書く」活動が密接に関連しているといえる。そして、今ある自分の表現を自分なりによりよいものへと変えていくことにもつながる。それは、本校の国語科がめざす表現愛を発揮している姿であるといえる。
2 他教科、道徳、本校における総合的学習との関連を図ったカリキュラム 国語科でのカリキュラムを教科間や教育課程全体からの位置づけで見ていくと、他教科と関連を図ったほうがよい単元が生まれてくる。また、豊かな人間性を育む本校における総合的学習と関連できる単元も生まれてくる。
  @ 他教科と関連できる単元
例えば、4年生で「メモをとりながら聞きましょう」「すじ道を立てて話しましょう」を学習して身につけた表現力を社会科での「住みよいくらし」での消防署や警察署等での見学メモに役立てたり、見学後の発表に役立てたりすることが可能である。また、2年生の国語科「秋を楽しむ会の方法を3年生に聞いて楽しい会にしよう」では、生活科の学習との関連を図り、楽しい会になるための方法を「聞く・話す」という学習を行う。3年生に必要なことがらを「聞く・話す」活動は、それ以降の生活科やそれ以外の学習の時に、わからないことを3年生や他の人に自分から進んで話をきこうとする態度に結びつくと考える。これからの国語科の授業では、一つの教科内の学習活動に止まることなく、国語科の読み方の学習が、他教科の文章を読むことの学習活動に役立ったり、文の書き方の学習が他教科の表現学習に役立つようにすることが大切である。また、他教科で学んだ内容や表現方法を積極的に国語科に取り入れて生かしていけるような学習指導計画の工夫も必要である。それは、子どもたち一人一人が国語科の学習で身につけた資質や能力を学校生活や家庭や地域の生活で生きてはたらくように高めることであると言える。
  A 本校における総合的学習と関連できる単元
総合的学習と国語科との関連としては、大きく「内容面での関連」「技能面での関連」「両面での関連」の3つが考えられる。「内容面での関連」とは、例えば「自然が失われている」といった内容の説明文の学習から、自分の身の回りや地域の自然環境を調べていく学習へと発展していく内容面での関連のことである。「技能面での関連」とは、例えば総合的学習の中でお世話になった方へのお礼の手紙を書く時に「手紙の書き方」を扱ったり、「インタビュー」や「話し合いの仕方」の学習を総合的学習で生かしたりする技能面での関連のことである。さらに「内容面」でも「技能面」でも総合的学習と関わる「両面での関連」という形も考えられる。いずれの関連にせよ、表現愛をともないつつ学習を振り返る中で、自己の成長を感じる構成であることが大切である。今回の6年生の授業「日本と外国のことばと文化を考えよう」では、総合的学習でオーストラリアのマニングハムパーク小学校と交流していることから、「ことばと文化の問題」を考えていく「内容面での関連」の授業として構成している。また、4年生の「お年寄りや1年生に喜んでもらえるような紙芝居をつくろう」の授業は、総合的学習で交流中のお年寄りや1年生からのリクエストに答える形で、紙芝居をつくっていく中で、話し合いの決まりも考えていこうとする「内容面」でも「技能面」でも、総合的学習と関わる「両面での関連」を図った授業である。 
B パソコンを使ったカリキュラム
例えば、5年生の総合的学習「ふれあいネットークを広げよう」では 1年生 「しりとりあそびをしよう」手紙や電子メールなどのやりとりの 2年生 「年賀状をつくろう」中で、既習の経験や学習を生かして 3年生 「ローマ字で遊ぼう」相手に応じた表現を工夫するのであ 4年生 「ローマ字で手紙を書こう」るが、国語科では、右のようなパソ 5年生 「自分なりの詩を作ろう」コンを使ったカリキュラムを配列し 6年生 「修学旅行を短歌や俳句で表そう」5年生でEメールで文を送ることができるようにしている。

5. 検証方法


1つの単元または1時間の授業の中で、表現愛を発揮しながらコミュニケーションをはかったり、調べたことをわかりやすく発表したり、友だちと協調しながらよりよい表現をめざしている姿が前に比べてあらわれているかをみていく。指導者は、子どもの発表や話(表現)の中で駆使されている言葉の内容や表現の仕方を読み取ったり、学習の「ふりかえりカード」や「対話(話し合い)カード」の記述から読み取る。