平成12年国語科各論

相手を意識した表現愛を育む国語科学習の授業づくり

はじめに
 本校国語科では、平成8年度より、「話すこと・聞くこと」の活動に重点を移し、子どもに表現愛を育むカリキュラムを構築してきた。
ハ これまでの研究の成果として、「話すこと・聞くこと」を中心としたカリキュラム案を構築することができ、また総合的学習、他教科、道徳との関連を図った単元を開発することができた。
ハ しかし、相手を意識した中での低・中・高学年、2年間の学びの姿として国語科カリキュラムを再検討が必要なことや、「話すこと・聞くこと」の領域と「書くこと」や「読むこと」の領域との関連が十分でなかったこと、総合的学習や他教科、道徳との関連をさらに深めていき、国語科での学習の成果が総合的学習や他教科、道徳において発揮される授業づくりをすることなどの課題が残ったのも事実である。
ハ そこで、今年度は、子どもの学びの姿を、相手を意識するという視点で見直すこと、「話すこと・聞くこと」だけでなく「書くこと」や「読むこと」の領域も関連させていくこと、総合的学習、他教科、道徳との関連をさらに見直していくこと、それらを取り入れた授業づくりに取り組んでいこうと考えた。そこで、研究テーマを「相手を意識した表現愛を育む国語科学習の授業づくり」とした。
1・本校国語科がめざす子ども像
  昨年度までの本校国語科では、『子どもたちの内面にある「話したい」「聞きたい」「書きたい」「読みたい」という気持ちに満ち溢れながら、自分の思ったことや書いたことや、聞いたことや調べたことなどを言語で適切に、しかも自分らしく表現していこうとする姿』を表現愛のある子どもとして大切にしてきた。
 しかし、子どもたちの現状をみると、自分らしく表現はするのだが、自分の表現だけがうまくいくことだけで満足してしまっている現状がある。表現する相手への配慮が決して十分とはいえない。また、学校内での日々の子どもたち同士の関わりからは、もう少し相手を思いやった物言いができれば、今以上によりよい人間関係(友達関係)が期待できると感じさせられる。よりよい人間関係を深めていくためにも、今まで以上に友だちとの関わりや、他者と関わる機会を増やしていく必要が感じられる。
そこで、本年度は、友だちや学校以外の人たちなどの他者と積極的に関わりお互いのよさを認め合い、他者のよさの中で自分にとってよいものや必要なものを受け入れたりし、自分の表現をよりよくしていこうとする姿も大切にしていこうと考えた。本校国語科は、この姿を『相手を意識した表現愛』と名づけた。
子どもたちが他者との関わりを深める中で表現愛を感じていく実践をしていくことは、相手との間によりよいコミュニケーションを成り立たせ、相手に対する意識がさらに広がったり、深まったりすると考えた。また、本校がめざす、主体性、協調性、創造性をもった豊かな人間性を育んでいくことにも通じるものがあると考えた。以下、本校国語科が考える、子どもたちの相手への意識をまとめてみた。
○身近な人と知り合うようになる〜低学年〜
 低学年の子どもたちは、学級担任や図書館司書、あるいは身近な大人からお話を聞くことが好きである。また、取り掛かりでは多少照れた様子は見せるが、身近な相手にわかるように話したり、尋ねたり、尋ねられたことに応答したりすることにも前向きに取り組める。このように、低学年の子どもたちは、身近な人と知り合うことにおもしろさや楽しさを感じる。
○自分との共通点や違いがわかるようになる〜中学年〜
 中学年ぐらいになると、主に他者と自分との共通点や違いを意識するようになる。友だちの表現と自分の表現を比べる活動ができるようになるし、相手や目的に応じて話す、聞く、読む、書くの活動ができるようになる。低学年と比べて、友だちのよいところもわかってくるし、よいところがあれば取り入れたいという気持ちももつようになる。友だちと自分との違いを比べたり、どちらがより適切な表現を考えたりしていくと考える。
○他者と関わり合うことを通して、よりよいものを組みなおすようになる〜高学年〜
 高学年ぐらいになると、自分の立場や意図をはっきりと持てるようになる。全体を見通して、必要なことを整理し組み直してよりよい表現をもとめる気持ちも出てくる。中学年の時のように、どちらがよいのかを判断するだけでなく、相手に応じて、よりよい表現にしたり、友だちのよいところと自分のよいところを合わせていったりすることができる。他者を理解していくことを通して自分
2・本年度の国語科授業づくりの視点
 本年度の研究は、
@子どもたちが、相手を意識した学習にしていくこと。
A相手を意識した表現愛を「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の一つの領域に偏ることなく、3つの領域の言語活動が調和的に行われることを通して高めていくこと。
B総合的学習、他教科、道徳との関連を深めていくこと。
の3つの視点を取り入れた授業づくりをしていく。
(1)子どもたちが相手を意識する学習
子どもたちは、今までの学習でも、子どもたちは、誰に対しての表現なのかという、相手を想定した学習を進めてきた。
本年度は、1年生や、大人の人を相手として漠然と想定するだけではなく、1年生とはどんな学年なのかや、表現しようとする相手はどんな人物なのかを、子どもたちが考える場を設定する。文章を書いたり、発表したりするときに、読み手、聞き手としての相手を意識することだけでなく、より具体的に相手を想定できるようにしたい。また、表現した相手からの反応や手ごたえを、子どもたちが感じることができる場を設定し、子どもたちが、自分の表現が適切であったのかをふりかえるようにしたい。
子どもたちが、相手を具体的に想定し、交流を通じて人間関係を作っていく経験を積み重ねは、相手に合わせた表現を考えていくことや、相手を思いやる気持ちや態度も培っていくことにつながると考えている。また、相手との積極的な関わりによって、相手に対する意識のさらなる深まりも期待される。
(2)相互に支えあう3つの領域
子どもたちは、学習の過程で、自分や友達の文章を読んだり、教材文や資料から読み取ったことについて話し合ったりする。しかしながら、これまでの学習指導を振り返ってみると、「読むこと」に従属した「書くこと」はあっても、そこに「書くこと」の力を高めるための評価と指導に対する意識が希薄であったように思われる。そこで、本年度は、昨年度までの「話すこと・聞くこと」を中心にした学習だけではなく、自然に行われる、書く活動や、読む活動も大切にしていきたい。
 本年度は、毎時間必ず3つの領域の目標をたてることはしないが、書いたものもとに話す活動や、読んだことをもとに書く活動などが、それぞれのねらいをもって調和的に行われるような学習指導計画としたい。そうすることによって、ひとつの領域だけにこだわることなく、3つの領域がお互いに支えあい、より自然な子どもたちの言語生活に近い状態で進められると考えた。
 その際には、例えば、「話すこと・聞くこと」を中心にした学習の中で、子どもたちが発表する前にノートに書き、それを発表することを、「書くこと」の学習を行ったとは考えないで、「書くこと」のめあてをもち、「書くこと」に対しての支援や、めあてに応じた評価を行ったりしていこうと考える。
(3)総合的学習・各教科をつらぬく国語科の言語活動
 時間数が削減される中で、学習の過程で様々な言語による表現活動の展開が予想される。国語科の学習と他教科、道徳、総合的学習とはどのような関連を図ればよいのだろうか。他教科と関連が深いように思われる、改訂学習指導要領に示された言語活動例をみてみよう。
例えば、中学年の「書くこと」には、「経験した事を記録文や学級新聞に表す」という言語活動例(資料)がある。この言語活動例に沿った学習は、理科や社会科で新聞づくりを行うから、国語科で新聞づくりを行うというものではない。国語科では、「中心を明確にして」や「段落相互の関係を考える」などの「書くこと」のねらいのもとで取り組まれ、結果として「新聞」や「記録文」が書けるようになる。また、高学年の「読むこと」の、「自分の課題を解決するために図鑑や事典を活用して必要な情報を読む」という言語活動例も、「必要な情報を得るために、効果的な読み方を工夫する」という「読むこと」のめあてをもって取り組まれるものである。
また、「いろいろな読み物に興味をもち、読むこと」によって培われた、「幅広く読書しようとする態度」は、結果的に総合的学習や各教科、道徳などで、いろいろな読み物を読み学習を進めていくことにいかされるだけでなく、日々の生活においても自ら本を手にする生活をしていこうとする態度を培っていくことにもつながっていくだろう。
国語科で、しっかりとしためあてをもち、子どもたちの学びの姿に応じた言語活動を豊かに展開していくことは、他教科、道徳、総合的学習における新聞づくりや図鑑や事典の利用の際に発揮されるのである。つまり、国語科の学習で得たものが、総合的学習や他教科、道徳の学習で活かされ、また、総合的学習、他教科、道徳の学習で行った学習で得たものが、国語科の学習でさらに確かなものになったり、定着していったりするのである。
3・授業づくりの具体例
授業づくりの視点を大切にした具体例を実際の学習場面を例に挙げて、単元の導入、展開、ふりかえりという授業の流れに即して説明してみる。
(1)導入
本年度の実践「お話鉄人になろう」(4年5月)から考えてみる。学習は、3年生の総合的学習のなかで、わからないことを、4年生に聞きに来たことをきっかけとして始まった。子どもたちは、質問に来た3年生に答えようとするが、話が難しかったり、話のポイントがずれてしまったりしたので、3年生にうまく自分の言いたいことを伝えられなかった。
そこで、「相手に自分の言いたいことを、よりよく伝えるために、どんなことに気をつけたらいいのか。」という投げかけを行い、相手に、自分の伝えたいことを、よりよく伝える学習が始まった。
言いたいことが、うまく伝わらなかったために、3年生とは、どのような学年であるのかや、3年生が知りたいと思っていることはどんなことなのかを具体的に考えていくきっかけになった。
このように、授業の導入では、自分が表現しようとしている相手とは、どんな相手なのかを具体的に考える時間や場を設定する必要があるだろう。
(2)展開
子どもたちは、「大きな声で、ゆっくりと話す。」や「絵を書いたり、実際に見てもらったりする。」や「ポイントをしぼって話す」などに気をつけることを導き出した。
 そこで、自分たちの伝えることを整理し、わかりやすくするため、「相手や目的に応じて、適切に書くこと。」というめあてのもと、伝える時の原稿を書く活動を取り入れた。
また、お互いのよさを認め合う場として、グループ活動を取り入れ、「互いの考えの相違点や共通点を考えながら、進んで話し合うこと。」というめあてのもと、その原稿をグループ内で交流する活動を行った。その中で、子どもたちは、「書いて伝える」ことも導き出していった。
グループ内の交流を進める際には、相手の立場にたって、よかった所やアドバイスを交換し合う時間をとるようにした。交流することで、より相手を意識するようになっていった。
 このように、授業の展開では、子どもたちが行う、3つの領域の言語活動を、めあてをもって指導し、指導者が子どもたちの原稿を把握したものを、次の交流にいかしていくなどの、1つの言語活動をちがう言語活動にいかす支援を行っていく必要があるだろう。
 
(3)ふりかえり
授業のふりかえりとして、子どもたちは、学習感想文に取り組んだ。子どもたちのなかには、実際に学習したことをもとに、お家の人に聞いてもらったり、3年生に聞いてもらったりして自分の予想した反応と比べてみたことや、うまく伝わってよかったことなどを、感想に書いている子どももいた。
また、子どもたちが考えるなかでつかんだ気をつけることを、短冊に書き写し、教室に掲示することによって、いつでも見ることができるようにした。これは、指導者が意図的に国語科の学習で得たものを、これからの学習の場面で参考にできるようにしたものである。すると、国語科だけでなく、他教科でも、意見を発表するときなどに、「ポイントをしぼって発表したほうがいいよ。」とか、「もっとゆっくりとていねいに発表したほうがいいよ。」などと声を掛け合う姿が見られるようになった。また、クラス全体や学年全体に話をする機会には、「大きな声で、しっかりと話す」姿が見られるようになってきたので、学習したことをいかしている姿であることを子どもたちに伝え、評価していった。
これは、国語科の学習で子どもたちの言語活動が豊かになった結果、総合的学習や他教科、道徳の学習のなかに関連していくことであるし、また、総合的学習や他教科、道徳のなかでいかしていくことによって国語科の学習で得たものが、さらに深まっていく、ひとつの例ではないかと考えている。
 このように、授業のふりかえりでは、国語科の学習で得たものを、子どもたちが活用していく場を設定したり、適切に評価したりする必要があるだろう。
以上、実際の学習場面を例に挙げて説明したが、指導者の場の設定や評価と支援のあり方は、その他にも考えられる。いろいろな学習の場面において、子どもたちへの声がけや、子どもたちのワークシートの紹介などを取り入れて、子どもたちの良いものを賞賛していく必要があるだろうし、それらを子どもたちに紹介していく必要もあるだろう。また、子どもたちの学習感想文やワークシートを、例えば、相手のことを意識して書いているのかどうかという観点をもち、読みとっていく必要もあるだろう。

 

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