平成16年度 国語科各論
確かな学びを支える国語科学習の授業と評価
栗田 稔生 島末 智成
はじめに
昨年度より、「学ぶ力」「学んだことを生かす力」「学びを支える力」をどのように高めていくことができるか、また、高めていく上で、指導者として共有すべきことには、どのようなものがあるのかを明らかにしていくことが課題となっている。これら3つの力は、国語科の学習にも深く関わっている。
本年度は、国語科の学習からみた「学びを支える力」とはどういうものなのかについて研究していくとともに、「学ぶ力」を育むための授業と評価について研究していきたいと考えた。
1 国語科の本質と「学ぶ力」
本校国語科では、「今ある自分そのものを大切にしながら、言葉を使った『話す』『聞く』『書く』『読む』活動を通して、他者と関わり、さらに自分の内にある思いや考えを豊かに自分らしくしていこうとするとともに、人間関係をも豊かにしていこうとする」ことを国語科の本質として「表現愛」と定義している。
つまり、言葉を使った「話す」「聞く」「読む」「書く」活動や学習を積み重ねていくことと、自分の生活の様々な経験や思いを言葉を使って感じて、自分の思いを豊かにしていったり、言葉を用いた自他のコミュニケーションを図っていったりするという言語生活を豊かにしていくこと。つまり、「表現愛」を豊かにしていくことが、「国語科の学ぶ力」を育んでいくということになる。
2 国語科からみた「学びを支える力」
低学年生活科の学習を例に挙げて考えてみる。生活科の学習の中で、生き物の観察の単元がある。その学習では、必ず自分の思いを記すためのワークシートを使う。例えば、「秋を見つけに行こう」という学習をした際に、子どもたちは、見つけた秋をワークシートに記すことになる。
仮に「木の葉が夕日のように赤くなってきました。」と書いた子がいるとする。この文章の中で、木の葉を夕日にたとえた表現が使われている。物語の美しい表現を読んだり、季節感を言葉で表したような記述を読んだりするなどの言語生活が豊かであることの現れである。
自分の生活の様々な経験や思いを言葉を使って感じていくことを体験していくことが、他教科の学習場面でも発揮されている例になっている。
「学びを支える力」を子どもたちの学校生活を支える、生活面や学習面での基盤ととらえると、他教科の学習の中で、必ず用いられる「話す」「聞く」「読む」「書く」活動を学習していく国語科とは、深く関わっていると言え、国語科の「学ぶ力」を育んでいくことが、すなわち、「学びを支える力」を育んでいくことになると言える。
3 国語科の本質を高めるための活動
国語科の学習を充実していくことで、国語科の学習からみた「学びを支える力」や「学ぶ力」は育んでいくことができる。
今年度は、国語科の学習を充実させる上で、指導者として留意すべき項目を3つ考えている。ひとつめは、日常行われているような「言葉を使った話す・聞く・書く・読む活動」を国語の学習として評価していくこと。2つめは、自分の生活の様々な経験や思いを言葉を使って感じていく経験を豊富にしていくこと。3つめは、いわゆる国語の授業をより充実させていくことである。
(1)日常行われている言葉を使った『話す』『聞く』『書く』『読む』活動を国語の学習として評価する。
@「話すこと・聞くこと」の活動として
表現愛の中には、「他者と関わり、人間関係をも豊かにしていこうとする」とある。生活するなかでは、他者とコミュニケーションをとっていく必要がある。このコミュニケーションの中で、相手を意識した言葉遣いなどを感じていく。また、相手の思いを知ることで、自分の思いもより理解できる。このような意識を指導者としてもっておくことで、様々な学習において行われる「交流」の活動を国語科の学習としてとらえなおすことができる。そうすることで、国語科の「話すこと・聞くこと」の活動としての評価をすることができ、結果として「話すこと・聞くこと」の力を様々な学習場面において育んでいることになる。
低学年 話す…相手にわかるように話すことができる。聞く…大事なことを落とさないように聞くことができる。 |
中学年 話す…自分の考えがわかるように、筋道を立てて、相手や目的に応じて適切な言葉遣いで話すことができる。 聞く…話の中心に気をつけて聞くことができる。 |
高学年 話す…考えたことや自分の意図が分かるように話の組み立てを工夫しながら、目的や場に応じた適切な言葉遣いで話すことができる。 聞く…話し手の意図を考えながら聞くことができる。 |
A「書くこと」の活動として
本校では、全学年、毎日、日記を書くという家庭学習がある。特別な理由がない限り毎日書くことになるので、日々「書くこと」の活動を継続していることになる。また、この日記を書くことは、「自分の内にある思いや考えを豊かに自分らしくしていこう」とする活動である。この活動も、指導者として、「単なる宿題」という意識から、「書くこと」の活動をしているという意識に変えていく必要がある。そうすることによって、日々の日記の記述からも、以下のような指導者としての評価ができるようになるのである。
低学年 自分の思いを羅列的に書くことができる。 |
| 中学年 自分の立場をはっきりさせて書くことができる。 |
| 高学年 筋道立てて書くことができる。 |
B「読むこと」の活動として
声に出して言葉を読むことは、全ての学習の基本である。文字が読めない2歳くらいの子どもでも、声を出して大人顔負けのおしゃべりをすることもある。それほど、音声言語は大切なものである。例えば、朝の音読タイムなど、学校生活の中で声に出して言葉を読む時間をたくさん設けることで、言葉を声に出す機会が増える。声を出すことに慣れるだけではなく、文章の切れ目や、段落、登場人物の気持ちや様子などを感じながら読めることにつながり、結果として読み取りも深まっていくと考えられる。この音読タイムを「読むこと」の活動として、とらえ直すことによって、毎日、継続して以下のような評価ができる。つまり、国語の授業時間だけでは、評価しきれないことが容易に評価できるようになるのである。
| 低学年 場面の様子などについて、想像を広げながら読むことができる。 |
| 中学年 場面の移り変わりや情景を叙述をもとに想像しながら読むことができる。 |
| 高学年 登場人物の心情や場面についての描写など、優れた叙述を味わいながら読むことができる。 |
(2)自分の生活の様々な経験や思いを言葉を使って感じていく経験を豊富にしていくこと
@豊かな表現、言語文化に触れる活動
本校では、1年生から4年生まで、週に1時間、読書の時間を設けている。この時間も、「読むこと」の活動として意識する必要がある。基本的には、子どもたちの読書の幅を広げるために行っている活動であるが、学習時間の中に明確に位置づけることで、多くの書物に触れる時間を確保していることになる。多くの書物を読むこと、いわゆる精読よりも多読が提唱されていることを考えると、カリキュラムの中に、読書にひたる時間を設けておくことは意味があると思われる。読書にひたることによって子どもたちは、豊かな表現に触れることができる。
また、書物や物語の美しい文章表現だけではなく、インターネット、新聞、テレビなどの情報メディア、古典や俳句などの伝統的な言語文化など、子どもたちの身の回りには、様々な言語があふれている。そのような言語生活を様々に経験しておくことが必要になってくる。
(3) 国語の授業の充実
生活する中で感じたことを表現することができなければ、せっかくの経験が無駄になる。また、より豊かに表現していこうとするならば、日々行われる「話す」「聞く」「書く」「読む」活動だけでは、不足している。
「今ある自分そのものを、言葉を使った『話す』『聞く』『書く』『読む』活動を通して、他者と関わり、さらに自分の内にある思いや考えを豊かに自分らしくしていこうとするとともに、人間関係をも豊かにしていこうとする」という表現愛を高めていくための国語科の授業としての学習がなければならない。
昨年度の成果から、指導者は、「この単元では、この力を育てよう」と意識して学習を計画する必要がある。日々の学習や活動、経験の積み重ねの上に、ねらいをしぼった学習をしていくことによって、子どもたちの「話す」「聞く」「書く」「読む」活動が高まっていくことがわかった。
また、単元の学習内容や子どもたちの学習状況に合わせて学習形態を工夫すること。つまり、目的別のグループや、指導者の評価をもとにしたグループなどを用いて学習を進めていく学習形態にしたり、学習の中での「交流」や「少人数での学習」を取り入れたり学習形態を取り入れたりするほうが、子どもたちの「話す」「聞く」「書く」「読む」活動が高まっていくことがわかった。
今年度は、昨年度の成果をふまえて、子どもたちの学習をしっかりと評価し、次の学習に生かしていくことについて考えていきたい。
@ 国語科の学び合い学習
子どもたちの学習を評価すると、どうしても、課題を比較的楽に解決していく子と、課題に対してつまずく子がでてくる。これらの子に対して指導者として、より発展できる学習と課題の定着をめざした学習を保障していかなければならない。
そこで、国語科としては、学び合いを通して、発展的な学習と定着をめざした学習を保障していこうと考えた。
学習形態の工夫により、子どもたちどうしの学び合いを大切にしていくという考え方を基本にしたい。
定着をめざした学習については、指導者が、違う課題を与えて、課題解決に導くことはしない。また、発展的な学習についても、課題を与えて、より難しい課題解決をめざしていくことはしない。あくまで、子どもたち自身が考えを大切にしたい。
自分自身で課題を解決しなおしたいと考えている子も学び合いの中で課題を解決していくことをめざすし、課題を解決してしまった子も、学び合いの中で、もっと自分らしくより豊かな表現をめざしていくという考え方である。
どちらも、指導者からの言葉がけや友だちからのアドバイス、また、よりよい表現に触れることなどをしていきたい。 指導者として、子どもたちの学習をぶつ切りに評価して、能力別に差別してしまうことのないように気をつけていきたいと考えている。