平成17年2月10日更新
算数科
評価がはたらく、一人一人が算数にひたり感じる学習
1.算数で育てたい子どもの姿
下の写真は、1年「ながさくらべ」の学習の一場面である。
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この子どもたちは、様々なものの長さの比較をしているうちに木の周りにも長さが存在することに気付き、木の周りの長さと他のものの長さを比較するための方法を考え、長さ比べをしているところである。自分たちが「調べたい」と願いをもち、実際に調べるうちに考えたり、新たなことに気づいたり、新たなことができるようになったりすることは、学ぶということそのものである。私たちは、算数の学習でこのような姿を発揮しながら、学んで欲しいと願っている。なぜなら、この姿を発揮することこそが、算数の学力を身に付けることと結びついているからである。私たちが考えている算数の学力とは、
○関心・意欲を原動力にして問題解決を進め、自らの追究活動をふり返りながら数学的な見方・考え方に感じる態度
○理由や根拠を明確にして考えることのできる力
○日常で生かすことのできる知識や使うことのできる技能
である。
そこで、私たちが算数の学習で育てたい子どもの姿を次のように想定している。
【算数の学習で育てたい子どもの姿】
数・量・図形に関わる事象に自ら働きかけ、算数的活動にひたり楽しみ、算数についての基礎的な知識や技能を身に付けながら根拠を明確にして考え、自他の見方や考え方を関係づけてよりよい見方や考え方を追究し、数理的に処理することのよさや算数を日常で活用できることのよさに気づく。
2.算数の学習で育てたい子どもの姿に向かう、算数にひたり感じる学習
(1)「算数にひたる」学習
算数にひたる学習とは、問題を解決するために、念頭での操作・具体物での操作・調査・実体験などの活動を通して、根拠を明確にしながら考える学習のことである。私たちは、子どもが根拠を明確にできるように、子どもが活動をしながら学習を行うことが、子どもの学びを支えるためには欠かせないと考えている。
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例えば、上の写真は、6年「比例」の学習の一場面である。この子ども達は、自転車をこぐ回数と自転車の進む距離の間に比例の関係があると予想し、実際に比例の関係があるのかについて調べている。そして、「自転車のこぐ回数が1回→2回→3回→…となるにつれて自転車の進む距離が3m→6m→9m→…となっている(根拠)。だから、自転車をこぐ回数と自転車の進む距離の間に比例の関係がある。」と、活動を通して自分たちの考えの根拠を明確にし、比例についての理解を深めることができた。
このように、活動に熱中し、活動を通して根拠を明確にする子どもこそが、確かに学ぶことのできている子どもだと言えよう。私たちは、このような学習を大切にしたいと考えている。
(2)「算数に感じる」学習
算数に感じる学習とは、問題解決の際に子どもが算数の不思議さやおもしろさに感じている気持ちを言葉などで表現し、子どもの【関心・意欲・態度】を高めながら、一人一人の子どもの【数学的な考え方】【表現・処理能力】【知識・理解】を育てることをねらいとした学習のことである。その学習の実現のために、問題解決を行う際に子どもが算数の不思議さやおもしろさなどに感じている気持ちをノートなどに表現するようにしている。そして、この表現したことを教師が取り上げることで、問題解決を進めるようにするのである。
例えば、5年「小数のかけ算」の学習で、「2×0.4」の計算の仕方について考えるときに、「あれ?」と思った子どもに対して、「あれ?」という言葉をノートに書くことを教師が促すとともに、その言葉を取り上げ、「どうして『あれ?』と思ったの?」と問いかけるようにするのである。そうすることで、「だって、2×0.4の積は0.8になって、かけ算をしているのに積がかけられる数より小さくなったから変だよ」というように、その根拠を明確にするために問題解決を進めようとする原動力となりうるのである。また、問題解決した後に、自分の追究活動をふり返ることで、「あれ?」と思うことで「2×0.4=0.8」の根拠が明確になり、「あれ?」と思うことのよさに感じることができる。
このように、一人一人の子どもの関心・意欲を原動力にして問題解決を進め、自らの追究活動を振り返りながら数学的な見方・考え方のよさに感じる態度を発揮している子どもこそが、確かに学んでいる子どもだと言えよう。私たちは、このような学習を大切にしたいと考えている。
3.一人一人が算数にひたり感じる学習を支える評価のあり方
(1)教師による評価
算数の学習における教師による評価とは、「【算数の学習で育てたい子どもの姿】の実現を目指した学習過程における子どもの情報を集め、【算数の学習で育てたい子どもの姿】から導かれた規準と照らして価値判断を行うこと」と考えている。そこで、【算数の学習で育てたい子どもの姿】をもとにして【関心・意欲・態度】【数学的な考え方】【表現・処理能力】【知識・理解】の4つの観点で単元の目標を設定し、それぞれの観点における規準を明確にして学習を進めるようにする。また、1時間の学習における観点を1つに重点化するようにする。こうすることで、教師は規準と照らして価値判断し、一人一人に応じた支援を行うことができる。
(2)子どもによる評価
算数の学習における子どもによる評価とは、「自分の学習の様子についての情報を集め、学習目標に照らして判断・意志決定し、学習をさらに進めたり方向を修正したり次の活動に生かしたりする行為」と考えている。そこで、問題解決の過程において、そのときそのときをふり返り、「考えたこと」や「感じたこと」などをノートに書いたり、自分の考えを友だちの考えと比べたりするようにする。こうすることで、子どもが問題解決を行いやすくなったり、自分の学習に手応えを感じたりできるようになる。
(3)第三者による評価
算数の学習では、子どもの学びを支えるためには、第三者による評価も欠かせないものと考えている。なぜなら、よりよい見方や考え方を追究するためには、自分だけでなく、友だちや周りの人と関わりがあってこそ可能なことが多くあるからである。そこで、同じ目標をもった子ども同士で学習を問題解決を進めたり、子ども同士で評価し合えるような場を設定したり、周りの人が子どもの問題解決を支えるようにしたりするようにする。こうすることで、一人一人の子どもが評価される機会が増え、自分の学習に手応えを感じたり、方向を修正したりすることができる。
4.評価がはたらく、一人一人が算数にひたり感じる学習を実現するための手立て
評価がはたらく学習とは、教師による評価・子どもによる評価・第三者による評価が一人一人の子どもの問題解決を支えている学習のこと、と考えている。そのような学習の実現を図るために、私たちは、次のような場の設定や教師の工夫が必要であると考えた。
図4−1 評価がはたらく、一人一人が算数にひたり感じる学習
(1)全体での高め合いの場の設定
全体での高め合いとは、一人一人の子どもに【算数の学習で育てたい子どもの姿】が育つようにするために、全体の場において子どもが考えや気持ちを交流し合い、互いに評価し合うことである。この場を設定することにより、子どもは多様な解決方法に気づくことができたり、自分の考えを友だちの考えと比べることができたり、友だちからの評価をもとに自分の考えを修正したりなどすることができる。
(2)小集団による学習の場の設定
小集団による学習とは、2〜5名程度で編成した集団で行う学習の形態のことである。このような学習形態で学習を行うことのよさは、子ども同士が関わり合う時間や機会が多くなることである。こうすることにより、友だちとともに問題解決を進めることができたり、友だちから評価される機会が多くなったりするなどして、自分の学習に手応えを感じることができる。また、友だちを身近に感じることから、相手を意識する気持ちが強まり、主体的に学習をしようとする態度も高めることができる。さらには、編成する集団を教師の意図したものとすることで、より有効な学習の場ともなる。
小集団による学習を取り入れるタイミングとして、これまでは「個の学習→小集団学習→高め合い」のパターンが有効ではないかと考えてきていたが、「個の学習→高め合い→小集団学習」のパターンも有効ではないかと考えている。どちらのパターンがどのようなときに有効なのかについては、今後追究していきたい。
(3)子どもが今までの学習の過程をふり返る場の設定
子どもが今までの学習の過程をふり返ることは、自分がこれまでに身に付けてきた知識や技能、考え方を明確にすることとなる。こうすることで、子どもは自分の今後の問題解決に生かそうとし、主体的に追究活動を進めることができる。また、子ども自身が評価の規準を設定することで、自分の姿をしっかりと見つめることができ、今後の学習への意欲にもつながる。
(4)理由や根拠を明確なものにするための問いかけ
理由や根拠を明確なものにするための問いかけとは、問題解決の際に子どもが算数の不思議さやおもしろさに感じている気持ちを教師が取り上げ、それに対して「どうしてそう思ったの?」と問いかけることである。それにより、子どもの感じている気持ちから理由や根拠の明確化につながり、子どもの【関心・意欲・態度】をもとにして【数学的な考え方】を高めることができる。また、高め合いの場などで教師がこの問いかけを行うことで、共通の理由や根拠をもつことができ、一人一人が理由や根拠に納得し、理解を深めることができる。
(5)保護者が参画する学習
保護者が参画する学習とは、一人一人の子どもがねらいに到達するために、保護者が支援を行う学習のことである。この学習では、保護者がその学習のねらいを明確にもつとともに、ねらいに到達するための支援の方法・内容を明確にもつことが欠かせない。そのために、学習の始まる前に、教師が保護者を対象としてその学習のねらいや支援の方法・内容を説明し、保護者の協力を得ることができるようにする必要がある。このような学習により、保護者という第三者が評価し、子どもの学習を支えることができる。そして、算数の学習を通して、子どもを保護者と学校とで同じ見方で育てることが可能となる。さらには、保護者からの学習に対する感想により、教師の指導のあり方や授業のあり方も見つめ直すことができる。
おわりに
本研究では、「評価がはたらく、一人一人が算数にひたり感じる学習」の実現を目指した手立てを行うことにより、一人一人の子どもの学びや学習のあり方にどのような改善が見られるのかについて、実践を通して追究する。