平成10年度 生活科研究テーマ


  

子どもが豊かな生き方を創造し続ける

生活科カリキュラムの構成


 はじめに

 本校生活科では、これまでに「子どもが豊かな生き方を創造し続ける生活科カリキュラムの構成」を目指して、2年間実践研究を続けてきた。第1年次には主に単元間の子どもの情意の連続・発展を意図した単元配列のあり方を明らかにし、第2年次には子どもサイドから教科目標を見直し、それに基づいてスコープやシーケンスを設定して具体的な単元の内容や配列を構想してきた。その結果、子どもの意識の育ちに基づいて「人とかかわる」学習をおおむね体系づけることができた。しかし、単元配列の軸となる子どもの育ちの様相の想定に課題が残った。

 そこで、本年度は子どもの育ちの様相を問題解決力の育ちと「時間や空間」「自他」の意識の育ちの二側面からとらえ、単元配列の軸として整理し直すとともに、「自然や社会とかかわる」学習を体系化したい。そして、総合的学習との関連を意図した、より充実した生活科カリキュラムを構築したいと考えた。

1.子どもが豊かな生き方を創造し続ける生

 活科カリキュラムの構想

 (1) 本校生活科が目指すもの

 本校生活科では、未来に向かって力強く生きていく子どもを育てていくために、

○ 自分なりの問題意識をもって身近な環境に能動的に働きかけ、自分たちの生活を主体的に創造していく子 【問題解決力に関わる側面】

○ 自然や他者とのかかわりに関心や親しみをもち、それらに対する「見方、考え方、感じ方、行動の仕方」を深めながら、共に協力して生きていく子【子どもの意識の育ちに関わる側面】

を育成したいと考えた。すなわち、よりよい生き方を求めて生活の仕方を変容させていく子の育成である。このことは、生活科学習において共創的実践力の基礎を育成することに他ならない。

 (2) 本校生活科の学習の範囲(スコープ)

 子どもが生活の仕方を深めていく対象を見直したとき、大きく「自然」「社会」という2つのスコープが設定できる。さらに、子どもの多くが学校から離れた地域から通学し、友だち(異年齢を含む)とのかかわりが十分ではないという本校の実態から、人や自然とかかわる中で自分自身に対する気づきを深めるようにしたいと考え、「自他」というスコープを設定した。これらのスコープから選択される学習活動・内容は、図6-1の通りである。

 これらのスコープは、互いに重複し合ったものである。したがって、1単元1内容という扱いではなく、子どもの思いや願いに基づいて自然、社会、自他のスコープを統合した活動を構成したい。

 (3) 生活科の単元配列の系統性

 ここではカリキュラムの全体計画を示すため、24カ月をひとまとまりとして考える。単元を配列する際は、子どもの問題解決力の育ち、意識の育ち、季節の変化、学校や地域・家庭での生活実態をもとに考えることになる。

   a 問題解決力の育ちから考えた単元の配列

 子どもは、生活をよりよくしようとする願いをもち(問題を見つけ)、主体的に問題を追究し、自分の行動を考察・吟味して新たな願いを見出す中で「見方、考え方、感じ方、行動の仕方」を深めていく。わたしたちは、子どもがこのような問題解決の過程で発揮する問題解決力を単元配列の重要な視点と考えた。例えば、学校生活に対する情報が乏しい入学期には、まず自分の願いをもち、学校環境に繰り返しかかわる活動を重視する。そして、学校生活に慣れてくると、少しずつ追究活動に見通しをもちながら友だちと協力して自分で活動を進めていけるように、さらに2年生の中頃からは自分の活動を見直しながら活動を進めることができるように単元を配列するのである。

   b 子どもの意識の育ちから考えた単元の配列

 問題解決活動を進めていく際、子どもは自分の願いを実現しようと問題解決力を発揮しながら対象の特徴を理解し、それに応じて自分のかかわり方を変容させていく。子どもが対象によってかかわり方を変容させていくのは、内面にその対象に対する意識が育つからである。この意識とは、対象や自分のあり方をはっきりさせるものであり、認識から感情までを含めたものである。わたしたちは、単元配列を考える際に、このような子どもの内面に育つ意識、その中でも「時間・空間」や「自他」の意識の育ちに着目してしようと考えた。 

 わたしたちが想定した問題解決力、「時間・空間」「自他」の意識の育ちの様相は、図6-2の通りである。 

  c 季節の変化や子どもの生活実態に応じた単元の配列

単元の配列を考える際には、季節の変化を考慮する必要もある。季節の変化にかかわる子どもの思いや願い、欲している活動を考えて単元を配列するのである。また、入学式や夏休み、遠足などの学校行事に対する思いや、学校や家庭での生活実態も大切である。これらを時間軸として、子どもの思いを重視したカリキュラムを構成したい。

 

2.子どもが豊かな生き方を創造し続ける生活科カリキュラムの構成

 カリキュラム構成に当たって、子どもの意識が連続・発展し、情意や問題解決の過程が細切れにならないように、大単元を構成しようと考えた。そこで、第1学年では学校環境に親しみ、自然やそこにいる人とのかかわりを深める大単元「たのしさいっぱい、附属平野小学校」を、また第2学年では学校から町へと働きかける対象を広げ、そこでの人とのかかわりを深める大単元「ふれあいいっぱい、わたしたちの町」を設定した。

 以下、表6-1をもとに各スコープ毎に「問題解決力」と「時間・空間の意識」「自他の意識」の育ちに基づいた、具体的な単元の構成について述べる。

 (1) 入学期における総合的な学習

 学校という新しい環境に出合った1年生は、「学校の自然や施設、遊具についてもっと知りたい、そこで遊びたい」「先生や友だちと親しくしたい」という願いをもつ。そこで、入学期には学校探検の活動を核とした総合的な学習の場「初めまして、附属平野小学校」を構成する。子どもの主体的な探検活動を最大限保障し、「○○へ行って〜したい」などまず自分の願いをもって活動することを重視する。そして、友だちや学校の施設・自然、身の回りの人とかかわる活動を通して学校生活に慣れるようにし、新しい生活に対する意欲を高めるのである。また、例えば遊具遊びから体育学習へ、多様な活動から国語や算数の学習へなど、教科学習につながる学習の場を構成する。

 (2) 人とのかかわりを深める「ふれあい」活動 

 「人とのかかわり」を重視した活動を継続的、体系的に行うことで、「自分との違い」を認め「他者を思いやる」心が育つと考える。生活科で、クラスや学年の友だち、異学年、学校にいる人、地域の人々、幼児や老人、障害者などと直接かかわる経験を重ねることが、「福祉や国際理解に対する意識」の芽生えにつながると考えている。

 「初めまして、附属平野小学校」の単元では、学校探検の活動を通して学校にいる人とのかかわりも深めるようにしている。1学期の中頃には、友だちとのかかわりを深める活動を行う。また、「生き物いっぱい、附属平野小学校」の単元では、学校の自然に働きかける活動を通して、2年生や用務員の方々との交流を組み込んだ活動を行う。2学期になると、家庭と自分とのかかわりを意識したり、友だちの活動や他者を意識して学校の環境をよりよくしようとする活動を構成する。

 一方、第2学年では当初に新一年生と出会った子どもの思いをもとに学校環境に積極的に働きかける「○○な学校にしよう」の活動を行うとともに、一年生と直接交流を深める活動を行うようにしている。また、「いいとこいっぱい、ぼくの道、わたしの道」の単元を設定し、地域の人々とかかわる活動を構成している。2学期には、「みんなで作って楽しもう!秋の遊びの広場」で幼稚園児や家の人を招待し、学校での自分たちの活動を紹介したり自分たちが栽培したいもを一緒に食べたり、おもちゃを作って一緒に遊ぶ活動を行っている。

 (3)「自分と自然」「自分と社会」とのかかわりを深める活動

 子どもの「時間・空間」「自他」の意識の育ちをもとに、「自分と自然」「自分と社会」とのかかわりを深める活動の積み上げを次のように考えた。  

  a「自分と自然」とのかかわり

 入学期の学校探検を通して、附小広場やヘビ池、大学跡地などの学校の自然環境に気づき、そこで虫を捕ったり花を摘んだりする活動を行う。「生き物いっぱい、附属平野小学校」の単元では、校内の動植物に継続してかかわったり、自ら生き物を育てたりしてそれらの場所に親しみ、学校の自然環境にさらによくしようと働きかける意識につなげるようにしている。また、栽培活動では、一人一鉢ずつアサガオを育てて動植物の成長の早さやその順序を意識できるようにしたり、草花を校庭に植え、学校の環境に働きかける意識を育てたりしている。さらに、飼育活動でも、学校で捕った虫や小動物を教室で飼い、生き物の成長のリズムに気づくようにするとともに、それらの生き物が住んでいる自然環境に対する思いや願いを大切にしている。2年生になると、「○○な学校にしよう」の単元で、さらに学校の環境をよくしようと積極的に働きかける活動を行う。また、栽培活動では、「時間・空間の意識」の育ちに基づいて、その成長の変化や順序性がとらえやすい野菜の栽培を行う。

 b「自分と社会」との関わり方

 入学期には、学校探検の活動を通じて、様々なきまりに気づき、学校と家庭、個と集団の関係をはっきり意識し、生活の様式の違いに気づくようにする。次に、校内の生き物に対する思いを核として、「ヘビ池をきれい」「学校をきれいに」など他を意識した活動を行うようにしている。さらに、夏休みや冬休みを利用して、家族の一員としての自分の役割に気づくようにしている。第2学年では、子どもの生活時間や生活空間の意識の育ちに基づいて、学校外の公共物や地域の人とのかかわりを深めるようにしている。さらに、子どもの意識の連続・発展を意図して、「みんなで作って楽しもう!秋の遊びの広場」の単元を設定し、老人や幼稚園児との交流活動を行っている。 

終わりに

 本年度は、第1学年では校内の自然環境とかかわる中で、第2学年では他者とのかかわりの中で、それぞれ子どもの問題解決力の育ちと、「時間や空間」「自他」の意識の育ちの様相を明らかにすることができ、カリキュラム構成の軸としての妥当性を検証できた。しかし、地域とかかわる学習については課題が残った。今後、より充実した生活科カリキュラムを構築するために、地域の自然や社会、人とのかかわりの中での「時間や空間」「自他」の意識の育ちの様相を明らかにしたい。

〈参考文献〉松本勝信編著「生活科の創造と実践」 教育情報研究所 蛯谷米司、益地勝志 共著「生活科の理論と実践」 初教出版 村川雅弘、鳴門市坂東小学校編著「ふれあいを重視した生活科の総合的な展開」 明治図書 ほか