H.15年度 生活科 各論(H.15.8.27現在)
子どもがよりよい生活を創り出す評価と授業
はじめに
本校生活科では、子どもの学びを見取るための観点を整理し、それらについての評価を考えた。それぞれの観点についての評価規準を設定し、子どもを見取る視点を表した。
しかし、一つ一つの単元について、子どもを丁寧に見取ることから、各単元レベルでの評価規準と評価の視点を想定することが課題として残されている。また、つまずいていると評価した子どもに対してどのような支援をしていくとよいのか、その支援の方法を明らかにし、授業に生かしてくようにしたい。
そこで、本年度の研究テーマを、『子どもがよりよい生活を創り出す評価と授業』として設定した。
1.生活科がめざす子ども
(1)生活科がめざす子ども
1年生の1学期、広い学校の校庭に興味をもち始めた子どもたちは、チョウがよく飛んでいるのを見つけた。子どもたちは汗だくになってチョウを追いかけるのだが捕まえられない。次の休み時間には、帽子を持って追いかけ始めた。それでもなかなか捕まえられない。次の日、虫取り網を持ってきて、追いかけ始めた。ようやくチョウを1匹捕まえるのだか、入れておくものがない。次の日、虫取り網と虫かごを持ってチョウを追いかけ始める。そのころには、チョウを追いかける子どもがたくさんになっている。だれがチョウを捕るのがうまいのか、お互いにわかり始め、どうやったらチョウを捕まえられるか、どのへんにチョウは飛んでいるのかを聞くようになっている。花の周りでチョウを探し、止まった瞬間をねらって網をかぶせるが増えてきた。
これは、校庭の自然とかかわり始めた子どもたちの姿であるが、このように、子どもたちは、生活の中でさまざまな自然や人々と出合う。子どもが生活の中で関心をもち、「知りたい」、「やってみたい」、「かかわりたい」という意欲をもって、よりよい活動をめざして考えながら、自分や対象について気付くようにしたいと考える。そのことを通して、生きて働く知恵を身につけ、自然や人、社会とかかわっていこうとする子どもを育てたい。
そこで、本校の生活科が目指す子どもの姿を
と想定した。
(2)生活科で育てたいもの
上のような子どもを育てるために、子どもの姿を「関心・意欲・態度」「思考・表現」「知的な気付き」という観点から整理する。
関心・意欲・態度…自然や人、社会に対する関心、活動に対する意欲、自分なりの願いをもってよりよく自然や人、社会とかかわろうとする態度
思考・表現…………よりよい活動になるように考える思考と、活動や体験を通して考えたことについての表現
知的な気付き………活動や体験から得た、自分や対象についての時間・空間についての気付きと、自分と他者・対象との違いについての気付き
これらの3つの観点で子どもを見取り、伸ばしていくことで、よりよい生活を創り出す子どもを育てることにつながると考えている。
2.子どもがよりよい生活を創り出す授業のあり方
では、そのような子どもは、どのような授業で育てることができるのか、生活科という教科のもつ特性と、それに基づく授業のあり方について考える。
(1)子どもの生活から学習を生み出す
低学年の子どもたちの生活には、次のような場面がよく見られる。
校庭に花がいっぱい咲き、花の周りにはたくさんのチョウが飛んでいる。花を摘んで花束を作ったり、花輪を作って着飾ってみたり、虫取り網と虫かごをもってチョウを追いかけたりするる子ども。
生活科は、こんな子どもたちの生活場面から学習をつくろうとする教科である。つまり、子どもの生活から授業開き、子どもにとって自然や社会に対する認識を自分の中に意味づけしやすいようにしていくのが生活科の授業である。
低学年の子どもたちは、体験や活動からさまざまな反省を加えて何かに気付いていくことができるようになるが、一方で、興味や実感を伴わなければ深い思考に至りにくい。
したがって、生活科の授業を構想するときには、子どもの生活実態をよく見極めることが大切である。指導者は絶えず子どもの生活を見つめ、「子どもが今、何に興味をもっているか」、あるいは「どんなことに興味をもちそうか」といったことを捉えておくことが要求される。上の、花とチョウに対する子どもの例のような子どもの生活を捉えてそこから単元を展開するのが、生活科の学習の特性である。そういった単元の展開により、子どもの意欲が高い状態で学習に入ることができ、また、それを維持しながら学習を進めることで、より深い思考と気付きが得られるものと考える。
(2)子どもの主体的な活動を支える授業の視点
生活科で育てたい子どもとその中身をどのような授業でそれらに迫るのか、以下のような視点で授業を捉えなおすようにしたい。
@ 自分の願いをもとにした学習
上のような生活科の特性から、生活科の学習では子どもが自分の願いに基づいてしたい活動をしながら気付きを深めていくように学習を構成する。たとえば、春の自然にかかわる単元なら、花に関心をもっている子は花に、虫に興味をもっている子は虫にかかわって活動ができるようにするのである。
A 問題解決による学習
自分たちで活動を進めるには、当然さまざまな問題に直面する。「虫を捕まえたくても網がない、カゴがない。次の時には持って来よう、今日は帽子でなんとかしよう」といったことや、「夏に採れる野菜を育てたいのだけれど、どんな野菜を植えたらいいのかわからない。種屋さんに聞いてみよう」といったように、自分たちで直面する問題を解決しながら活動を進めるようにすることが大切である。
B 学び合いのある学習
また、友だちと情報交換をしながら、自分たちの活動を高めていくことも大切なことである。チョウの例では、友だち同士でチョウを捕まえた所や、捕まえるコツを教え合いながら、チョウの生態についての気付きを深めていくのである。
C 自らを振り返る学習
そして、自分たちの活動を振り返る機会を保障することで、自分の成長を感じ、課題を見つけたりして、自分を高めていくことを学ぶのである。
(3)子どもの主体的な活動を支える授業の手立て
上のような授業を構成すると子どもたちの活動が多岐にわたり、子どもを見取り、支援していくことが容易ではない。そこで、わたしたちは次のような手立てで子どもの主体的な活動を支えようとしている。
@ 名前カードと板書
子どもの学習が、教室にとどまらず思い思いの場所に行って活動するようになると、名前カードを使うようにする。黒板に、子どもたちが活動する場所を書き、活動に行くときに、自分が活動する場所の板書付近に名前カードを貼り付ける。そして、活動から帰ってきたときに、活動への満足度に応じて、楽しかったら黒板の上のほうに、楽しくなかったら黒板の下のほうに移動させるわけである。これによって教師は、子どもの活動に対する手ごたえを把握しやすくなる。それだけではなく、子どもにとっては、その時間の自分のめあてを意識し、活動が終わったときに活動について振り返ることができるのである。また、移動後の名前カードが、教師が支援すべき子どもを見つける手助けになる。
Aワークシートの読み取りと子どもへの援助
・子どもが主体的に活動を進める原動力は、その活動に対する興味・関心であり、「子どもは何をしたいと思っているのか」を把握することが必要である。そこで、ワークシートを活用し、子どもの思いを把握するようにする。
その時には、同時に、活動に対する意欲が低い子どもや活動が停滞している子どもを捉えておくことが大切である。図6−1はそのワークシートの一例である。活動終了時、その日の活動についての自分の気持ちを「にこちゃん」「ふつうくん」「こまったちゃん」に印をつけることで、@の名前カード同様、自分の活動について振り返ることができる。また、同時に、教師がその場であるいは次時に支援すべき子どもをつかむことができる。
また、子どもの気付きや思いに対するコメントやアンダーライン・◎などで、気付いていることのよさを知らせたり、子どもの心持ちに共感して活動を支えたりすることができる。
このような読み取りを活かして、「物」「心情」「技能」「場所」「時間」を援助することで、子どもの主体的な活動を支えていくようにする。
3.子どもがよりよい生活を創り出すための評価と支援
(1)単元の評価規準の作成
各観点について、生活科を通して照らし合わせていく評価規準を以下のように想定している。そこで本年度は、これらを単元レベルに合わせて、単元の評価規準を作成したい。例えば、1年生と2年生は共通して学校の自然環境にかかわる単元を設けている。これらの単元での学習で育てたい子どもの姿は、何が共通しておりどこが違うのか、積み重ねて学習することのよさは何なのか、評価規準を対することで明らかにしたいと考え、表6−1に1・2年の観点別評価規準対照表を示す。
この表から、1・2年生の共通点と違いが見えてきた。共通点としては、能力にかかわる面で、活動によって感じたことを発言・記述といった形で表現することである。これは、その場その場での気付きや思いを子どもは自覚していないことが多い。その上、次の楽しい活動によって消えていってしまいやすくいため、定着しにくい。そこで、発言や記述といった形で表現することで子どもが自覚化し、定着しやすくするために、共通して重視することである。
一方で、違いも明らかになってきた。それは、1年生はその子とその子がかかわっている対象それ自体についての態度や認識の姿を規準としているのに対し、2年生になると、その子とその子がかかわっている対象の仲間や友達の対象とのかかわりについての態度や認識の姿を規準としている。つまり、1年生より2年生に対して、より広い視野での態度や認識を期待しているということである。
以上のことから、表現を通して自覚化を図り定着させることを積み重ねることによって、子どもの態度や認識の幅を広げていっていることがわかる。
(2)評価の視点
では、それぞれの観点について、教師はどのように姿を子どもの中に見出せばよいのだろうか。単元の規準を表6−1のように示しても、実際の子どもの姿よりも抽象的で、活動の中で見つけるときのよりどころとはなりにくいのではないか。
例えば、1年「生き物いっぱい、附属平野小学校1」では、「校内の自然に関心をもち、意欲的に草花や生き物にかかわろうとしている」ことが規準である。子どもはさまざまな姿でこの規準に達していることを見せてくれる。例えば、「行きたいところを自分で決めて行っている」「虫を一生懸命追いかけている」「きれいな花を探して校庭を動いている」などである。このように具体的な姿で規準に達している姿を想定したものを、「評価の視点」と呼んでいる。
このような評価の視点を、単元、あるいは予想される活動に合わせて具体的に想定することによって、子どもの学びを評価し、効果的に支援することができるのである。
(3)それぞれの観点についての支援のあり方