子どもが豊かな見方・考え方を深めつづけていく
社会科カリキュラム
はじめに
本校社会科では、子どもの社会事象に対する見方・考え方を豊かにしていくカリキュラムのあり方について研究を進めてきた。その結果、子どもの学習意欲を高めながら、子どもの生活経験や学習経験に基づいて単元を配列し、また、地域の特色を生かした教材を開発することで、子どもの見方・考え方を豊かにする社会科カリキュラムを具体化することができた。しかしながら、次のような課題が残った。
一つは、中学年のカリキュラムをより一層、地域に密着したものとするために3・4年をひとまとまりとしたカリキュラムを再構成することである。このことは、本校では多くの子どもたちが学校から離れた地域から通っており、そのため、友だち同士や地域の人との関わりが薄いという本校児童の実態に応じている。平野の地域の人との関わりを大切にしたカリキュラムを構築したい。もう一つは、主体的な追究活動を保障しながら、子どもたちにどのような見方・考え方を育んでいけばよいのかを明らかにすることである。最後に、総合的学習との有効な関連をどのように図ればよいのかを明らかにしていくことである。
そこで、本年度はこれまでの研究の成果の上に立って、子どもたちが主体的な追究活動を進めていく中で、子どもたちが豊かな見方・考え方を深めてつづけていくような社会科学習をつくりあげるために、以下の研究テーマを設定した。
1、本校社会科が目指すもの
社会科は、よりよい未来の形成者として、自分が将来にわたって社会に参加するために主体的に問題を解決する態度・能力を養うとともに、社会を広い視野から見る目を育てたり、社会のできごとの意味を総合的に考えたりすることを通して、公民的資質の基礎を養うことを究極の目標としている。そのために、さまざまな社会事象を通して人と人、人と社会の相互依存の関係を学んで人や社会と共に生きる共生的な態度を養うことが重要である。
したがって、このことからわたしたちは社会科の本質的目標を次のように考えた。
本校社会科では、このような社会科の本質的目標の中で、社会事象に対する関心・意欲や主体的な問題解決などに関わる「学び方」に関わるものを『追究力』と呼んできた。また、子どもが主体的に問題を追究し、その成果を交流していく中で育っていく社会事象に対する理解や、思考力・判断力などの「学習内容」に関わるものを『見方・考え方』と呼んできた。
社会科の本質は、子どもたちの主体的な問題解決の過程で学び方に関わる『追究力』を育てていくことと、『見方・考え方』を豊かにしていくことであると考えている。しかし、わたしたちは、『追究力』と『見方・考え方』をそれぞれが独立したものとは考えておらず、『追究力』が育つことによってより豊かな『見方・考え方』を育むことができ、そして、豊かな『見方・考え方』がさらなる追究の視点となって『追究力』を高めると考えている。つまり、公民的資質の基礎を身に付けてゆく子どもたちの内面に培われる二側面であると考えている。そして、このような『追究力』や『見方・考え方』は、子どもたちの学習を個性化することによってその育ちがより保障されると考え、学習活動の複線化を今後も進めていこうと考えている。
2、本校社会科におけるカリキュラムの基本構想
カリキュラムを構想するときには、社会科で扱う学習の内容と子どもの発達にもとづいた単元の配列を想定することになる。
(1)社会科の学習内容の構想
社会科の学習の対象は基本的には身近な地域から日本全体、そして世界へと同心円的に広がっていくと考えられている。わたしたちは、対象と関わる中で、子どもが追究する内容は、@空間的な広がり(地理)、A社会の仕組みや制度(政治)、Bものをつくりだす働き(産業)、C社会の変化(歴史)の大きく4つに分類できると考えている。これら4つの学習内容は、一つ一つが独立したものではなく、相互に関連しあっているものであると考えている。それぞれの内容の系統性を表3−1のように想定した。
(2)学び方の育ちの想定
本校社会科では、子どもの学び方(追究力)の育ちを単元の配列を考える際の視点と考えた。そこで、学び方(追究力)の育ちを想定するために、まず、中学年・高学年における子どもの発達特性を表3−2のように想定した。
そして、このような発達特性から考えられる、各学年における学び方(追究力)の育ちを表3−3のように想定した。
わたしたちはこのような追究力の育ちに基づいて単元を配列しようと考えている。
(3)豊かな見方・考え方の育成
社会科の本質としてわたしたちが社会科の学習で育てたいものは、一つは社会事象に対する思考力である。すなわち、具体的な事実を「比較する」ことや、それらを「関連付ける」ことやそれらをまとめて「総合する」こと、具体的な事実から抽象的な概念へ「一般化」したり、逆に抽象的な概念から具体的な事実へ「具体化」したりすること、事実を「多面的に考える」ことなどである。これらをしっかりと育てることは社会科の本質として重要なことである。
そして、もう一つ社会科の本質として育てたいものは思考力を高めながら対象と関わる中で情意面の高まりに裏付けられた豊かな見方・考え方である。そこで、子どもたちが追究力の育ちに応じて表3−3で区分した内容を系統的に学習していく中で次のような見方・考え方が育ってくると考えている。
このような見方・考え方を育てる中でわたしたちは大きく3つの視点が子どもたちの中に育まれると考える。一つは「民主的な視点」である。すなわち、よりよい社会をつくろうとした人々の努力や苦労に目を向け、共感的に受けとめることが
できる視点である。もう一つは「平和的な視点」である。つまり、社会事象のかかえる問題について、より平和的な解決を見いだそうとする視点である。そして、もう一つは「国際的な視点」である。これは、より広い視野に立って社会事象をとらえ、わが国と世界の国々との関係について見ていこうとする視点である。
これらの3つの視点は子どもが社会事象をとらえ、自分なりに判断し、意志決定をするときの基準となるものであり、公民的資質の基礎につながっていくものであるといえる。そしてわたしたちは、これらの豊かな見方・考え方は指導者が一方的に教え込むものではなく、子どもの意識の中に育てていくものであると考えている。
(4)カリキュラムの基本モデル
以上のような子どもの追究力の育ちと学習対象の範囲から、本校社会科では、次のようなカリキュラムの基本モデルを考えた。
追究力の育ちにもとづいて地理、政治、産業、歴史の四つの区分の内容を学習することで、公民的資質の基礎を身につけることにつながっていくというモデルである。
3、カリキュラム構成の観点
上のようなカリキュラムモデルをもとに単元を位置付けてカリキュラムを構成する際の観点として以下のことを考えた。
(1)子どもの意識
子どもたちの主体的な追究活動を支えていくためには、子どもたちが自ら課題意識をもつことが重要である。したがって、その学習内容は子どもたちの意識の実態からかけ離れたものであってはならない。
たとえば、生活科で身近なまちに出かけ、自分たちに関わりの深い地域に関心が向いている3年生のはじめの時期には、地域のくらしを取り上げ、追究を深められるようにするのが適当である。特に、本校では、子どもたちの多くが学校から離れた地域から通学し、学校のある地域とは関わりが薄いという実態を考慮し、学校のある平野の町と十分に関わり愛着を感じるとともに、自分たちの住む地域を見る目を養い愛情をもつことができるようにする必要がある。
(2)学び方
追究活動をより充実したものにするためには子どもたちの学び方の育ちからかけ離れたものであってはならない。
たとえば、調べ方の習得が未熟な3年生のはじめの時期には、試行錯誤をしながら何度も繰り返し出かけ、より体験的に調べることができる身近な地域を対象として取り上げるのが適当であり、自分たちの住む地域と学校のある地域が離れている子どもが多い本校では、同じ所に繰り返し出かけ、町の人との関わりを大切にした活動を構成することが必要である。そして、直接的に対象と関わって調べていくことから間接的な関わりから調べることができるようになるにしたがって、高学年ではインターネットや統計資料などによる追究活動を構成することができる。また、5・6年では、3・4年で複線化された学習の経験を積んでいるため、自ら課題を設定する力が養われていれば内容を複線化することも可能である。例えば、5年生の食料生産では、米作りについて子どもたちそれぞれの視点で追究した後、野菜作り、果物作り、畜産、水産といった食料生産にかかわる産業から子どもが内容を選択して追究することも考えられる。このような学習の複線化を継続し、自ら問題を設定する場面を積み重ねることは、より選択の幅の広がる中学校社会科との関連からも有効なことである。
(3)総合的学習との関連
単元を位置付ける際にわたしたちが考慮したのが、「総合的学習」との関連である。社会科と学習対象、学習方法の面で共通することの多い「総合的学習」と有効な連携を図ることは、社会科、総合的学習のお互いのねらいを達成する上で相乗効果をもたらすと考える。そこで、わたしたちは、次のような3つの連携を考えた。
@ 総合的学習への発展
まず、社会科学習から総合的学習への発展である。社会科で豊かな見方・考え方を養い、総合的学習で具体的に人とかかわりながら実践していくような連携である。例えば、本校では3年生の地域の商店街を学習する単元では、商店会の方々とともによりよい商店街のあり方を考える社会科の学習から、子どもたちが町づくりに積極的に関わっていく総合的学習への発展を考えている。
A 総合的学習との並行
次に、社会科学習と総合的学習が並行していく形である。例えば、5年生の総合的学習ではISDN回線を通じてのテレビ会議システムやインターネットを通してEメールを他の地域の学校と交換している。総合的学習でのこの経験があることで、子どもたちが情報産業について社会科で学習するときには、より体験に基づいた追究をするだろうし、また、総合的学習で他校と通信するときに社会科学習での学習したことがいかされるだろうと考えている。また、社会科での学習について年間を通じて情報を交換したり、意見を交換したりすることも考えられる。
B 総合的学習との融合
最後に、社会科と総合的学習との融合である。例えば、本校の場合、6年生の総合的学習でのオーストラリアの子どもたちとの交流活動と、6年3学期「外国の人々のくらし」の学習を融合して考えることができる。外国の子どもたちと交流することで国の枠を超えて共生・共創の意識を育もうとする総合的学習のねらいと、外国の人々のくらしを知って国際理解を図り、国際的な視点を育もうとする社会科のねらいが重るからである。総合的学習で一年間オーストラリアとの国際交流を続けてきた6年生は、実際にテレビ会議で取材したり、Eメールで取材したりして、オーストラリアの子どもたちと共に学習することができると考えている。
具体的なカリキュラムについては、次ページ以降に述べることにする。
4.おわりに
本年度の研究では、次の点で成果をあげることができたのではないかと考えている。。
○ 3・4年をひとまとまりにした中学年のカリキュラムが示せたことである。より地域に密着し、本校の実態に合わせて人との関わりを重視したカリキュラムを作成し、5年6年のカリキュラムとあわせて、カリキュラムの大枠を示すことができた。
○ 子どもたちに育てたい見方・考え方の方向性として「民主的な視点」「平和的な視点」「国際的な視点」を示すことができた。
○ 社会科と総合的学習との関連のあり方の形と、関連させることによって授業をどう変化させるのかについて、実践を通して少し示すことができた。
しかし、今後の課題として次のことが残された。
・ 本年度示したカリキュラムの大枠をもとに、年間指導計画を作成したい。
・ 「民主的な視点」「平和的な視点」「国際的な視点」を、どのようにしてカリキュラム構成の中で活かしていくのかということ。中心的に育てていく視点を考慮してカリキュラムを構成し、年間指導計画に織り込んでいきたい。
・ 社会科と総合的学習をより有効に関連させ、豊かな人間性を育んでいくためには、社会科の授業づくりがどのように変わっていく必要があるのか、明らかにしていきたい。
参考文献
○ 北俊夫「新しい知識観に立つ授業の改革」1999年、明治図書
○ 21世紀の社会科を創る会・北俊夫編「ニュー社会科のカリキュラムをどう開発するか」1999年、明治図書
○ 北俊夫、大阪教育大学三附属小学校社会科研究会共著
「社会科・生活科とクロスする総合的学習の実践プラン」 1999年、明治図書