08ko-017 第17章 実験−化学反応の量的関係
 この章では,化学反応の量的関係を調べる実験を紹介します。この実験では,炭酸カルシウムCaCOと塩酸HClの反応を使います。炭酸カルシウムは,石灰石,大理石などの主成分であるだけでなく,貝殻や卵の殻の主成分です。
   
思えているかな?
1.石灰石に塩酸を加えると,何が発生しますか?
二酸化炭素
2.1の気体の確認方法を説明しなさい。
石灰水が白濁すると二酸化炭素であることがわかる。
 炭酸カルシウムと塩酸の反応によってできるものは塩化カルシウムCaClと二酸化炭素COと水HOです。ビーカーの中で反応させますから,生成した二酸化炭素は空気中に逃げますね。できた二酸化炭素がすべて空気中に逃げたと仮定すると,質量の減少分は生成した二酸化炭素の質量に等しくなります。したがって,生成した二酸化炭素の物質量を求めることができるわけです。
   

第17章 実験−化学反応の量的関係
1 薬包紙に次の質量の炭酸カルシウムをはかり取る。0.50g,1.00g,2.00g,3.00g,4.00g,5.00g
2 5.0mol/Lの塩酸を10mLはかり取り,6個のビーカーに入れる。
3 電子天秤で,図のようにして反応前の全質量をはかる。
4 炭酸カルシウムを塩酸の中に少しずつ加え,全部加え終わったら薬包紙でふたをする。
5 ビーカーを振って泡が出なくなたら,反応後の全質量Wをはかる。ビーカー内に未反応の炭酸カルシウムが残っていないか確認する。

 実験結果を次の表にまとめる。
 
 
CaCOの質量 0.50g 1.00g 2.00g 3.00g 4.00g 5.00g
    g     g     g     g     g     g
    g     g     g     g     g     g
    g     g     g     g     g     g
未反応のCaCOの有無
 実験結果を確認しましょう。
 
CaCOの質量 0.50g 1.00g 2.00g 3.00g 4.00g 5.00g
48.10g 45.79g 38.65g 48.08g 40.46g 50.01g
47.89g 45.36g 37.75g 47.00g 39.38g 48.93g
0.21g 0.43g 0.90g 1.08g 1.08g 1.08g
未反応のCaCOの有無
 炭酸カルシウムCaCOが3g以上になると,未反応の炭酸カルシウムが残るようになり,また,発生した二酸化炭素COの質量が一定になっていることがわかりますね。
 それでは,考察です。
 

 炭酸カルシウムCaCOの式量は,
40+12+16×3=100
 二酸化炭素の分子量は,
12+16×2=44
実験結果を物質量に換算すると,
CaCOの質量 0.50g 1.00g 2.00g 3.00g 4.00g 5.00g
CaCOの物質量 0.0050mol 0.010mol 0.020mol 0.030mol 0.040mol 0.050mol
COの物質量 0.0048mol 0.0098mol 0.020mol 0.025mol 0.025mol 0.025mol
HClの物質量 0.050mol 0.050mol 0.050mol 0.050mol 0.050mol 0.050mol
 HClとCaCOが過不足なく反応するのは,
CaCO+2HCl→CaCl+CO

塩酸が0.0050molだから,この塩酸と過不足なく反応する炭酸カルシウムは0.025mol
100×0.025=2.5〔g〕
 物質量の関係は,
CaCO:HCl:CO=1:2:1



 この反応の量的関係の理論値は,次のようになる。
CaCOの質量 0.50g 1.00g 2.00g 3.00g 4.00g 5.00g
CaCOの物質量 0.0050mol 0.010mol 0.020mol 0.030mol 0.040mol 0.050mol
COの物質量 0.0050mol 0.010mol 0.020mol 0.025mol 0.025mol 0.025mol
COの質量 0.22g 0.44g 0.88g 1.1g 1.1g 1.1g
HClの物質量 0.050mol 0.050mol 0.050mol 0.050mol 0.050mol 0.050mol
 反応の前後の質量の差は,ほとんど発生した二酸化炭素の質量に一致しています。どうですか,物質量はとても便利なものであることがわかったでしょう。
 この章の実験のポイントは,次の通りです。
確認しよう
1.炭酸カルシウムに塩酸を反応させると,塩化カルシウムと水と二酸化炭素ができます。
 CaCO 2HCl CaCl CO
2.反応によって発生した二酸化炭素COがすべて逃げたとすれば,二酸化炭素の質量分だけ軽くなります。
3.塩酸の物質量が0.0050molであるなら,,この塩酸と過不足なく反応する炭酸カルシウムの物質量は0.025mol,すなわち2.50gです。
 これで,高校化学の基礎的な事柄は終了です。次の章からは,酸と塩基(中学校ではアルカリ)について勉強することにしましょう。