空気を入れてよく振ると,水に溶けていた二酸化炭素が出てきます。不思議ですね。では,実験結果を確認しましょう。
1では,二酸化炭素の体積と水の体積の和が60mLになりました。溶け残った二酸化炭素は10mLですから,溶けた二酸化炭素の体積は40mLとなります。もちろん圧力は大気圧に等しいですから,約1.0atmです。
2では,気体の体積と水の体積の和が89mLになりました。水の体積は50mL,空気の体積は20mLですから,水溶液から19mLの二酸化炭素が出てきたことになります。したがって,このとき水溶液中に溶けている二酸化炭素の体積は,40−19=21〔mL〕となります。また,二酸化炭素の分圧は,1.0×19/39=0.49〔atm〕です。
3では,気体の体積と水の体積の和が79mLになりました。水の体積は50mL,空気の体積は20mLですから,水溶液から9mLの二酸化炭素が出てきたことになります。したがって,このとき水溶液中に溶けている二酸化炭素の体積は,21−9=12〔mL〕となります。また,二酸化炭素の分圧は,1.0×9/29=0.31〔atm〕です。
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溶けている二酸化炭素の体積〔mL〕
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溶け残りの二酸化炭素の分圧〔atm〕
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分圧/体積
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1
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40
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1.0
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0.025
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2
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21
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0.49
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0.023
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3
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12
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0.31
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0.026
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分圧/体積 の値は,ほぼ一定になりますね。
<発展>
大気中には,0.034 %の二酸化炭素が含まれています。二酸化炭素の溶解度と電離度,分圧の法則を用いて,雨水のpHを計算してみると,次のようになります。
20℃,1気圧の条件では,二酸化炭素は,水1Lに870mL溶けます。20℃,1気圧における二酸化炭素の密度は0.0018g/cm3だから,水1Lに約1.6 gの二酸化炭素が溶けることになります。しかし,空気中には二酸化炭素は体積で0.034%しか含まれていないため,分圧は0.00034atmです。したがって,大気中の二酸化炭素は水1Lに0.00054
g溶けることになります。その水溶液の濃度は,約0.000012mol/Lです。 炭酸は,次の2段階で電離します。
H2CO3 → H+ + HCO3− (電離定数:4.4×10-7)
HCO3− → H+ + CO32− (電離定数:5.6×10-11) 近似的には第1段階の電離だけと考えてもいいので,水素イオン濃度は次のようになります。 水素イオン濃度[H+]=cα=√cKa=√(1.2×10-5×4.4×10-7)=√(5.28×10-12)≒2.3×10-6〔mol/l〕 したがって,
pH=−log(2.3×10−6)=−log2.3+6=−0.36+6≒5.6 となります。すなわち,大気中に含まれている二酸化炭素の影響で雨水のpHは,5.6
程度であることがわかります。酸性雨の定義がpH5.6以下の雨となっている理由です。 |
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