物質が燃焼すると,大きな発熱がありますね。燃焼は,熱や光を出しながら激しく物質と酸素が化合する化学反応であり,燃焼しはじめると,発生した熱によって連続的に激しく空気中の酸素と化合して,熱を出し続けます。蒸気機関車は石炭を燃やして得られる熱エネルギーを運動エネルギーに変換しています。 このように物質が変化するときは,必ず熱の出入りがあります。また,物質の状態変化に比べて化学変化のときには,多量の熱が発生したり吸収されたりします。どうして熱の出入りがあるのでしょうか。 この章の学習内容は,次の通りです。 (1) 熱と熱量 (2) 反応熱 (3) 熱化学方程式 (4) いろいろな反応熱
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水の比熱は4.2J/(g・℃)です。したがって,1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量は,Q=4.2×1×1=4.2〔J〕となりますね。4.2Jは1calと等しい熱量です。1Jは約0.24calです。 次は,反応熱です。 携帯用カイロは,鉄の酸化による発熱を利用しています。また,生石灰CaOと水の反応を利用した,加熱器具を使わないでも温まる弁当などもあります。一方,硝酸アンモニウムNH4NO3などが水に溶解するときの吸熱反応を利用したのが瞬間冷却パックです。 |
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化学変化や状態変化にともなう熱の出入りは,熱化学方程式で表現します。このとき注意することは,→ではなく,=を使うことです。よく間違えますから,注意して下さい。熱化学方程式では,左辺と右辺のエネルギーの和が等しいことを意味します。次の2つの例を参考にして下さい。 |
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反応熱には,特別の名前で呼ばれているものがあります。それらの意味をしっかりと把握して下さい。中心になるものが1molになるよう定義されています。生成熱については,後ほど扱うことにします。 |
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水溶液はaqと付記するのでしたね。aqは多量の水を表します。 自然は,よりエネルギーの低い方に移動する傾向があります。発熱反応はエネルギーを放出するわけですから,よりエネルギーの低い方に移動しています。一方,吸熱反応はエネルギーを得てより高いエネルギー状態に移動しています。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。実は自然界の自発的な反応の推進力は発熱だけではないのです。エントロピーの増大も関係します。エントロピーとは,簡単に言えば乱雑さです。しかし,高等学校の化学では,エントロピーは扱っていません。詳しくは,大学で勉強してください。 それでは,この章の学習内容の確認です。
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答
1.Q=cmt
2.発熱反応
3.吸熱反応
4. H2(気)+1/2O2(気)=H2O(液)+286kJ
5.燃焼熱は物質1molが完全燃焼するときに発生する熱,中和熱は酸と塩基の反応で1molの水が生成するときに発生する熱,溶解熱は溶質1molを多量の溶媒に溶かしたときに出入りする熱である。