この章では,生成熱や結合エネルギーについて学びましょう。この章の内容も,ヘスの法則と関係があります。
結合エネルギーは,化学 II で扱う内容ですが,ここで紹介しておきます。結合エネルギーは,共有結合を切るために必要なエネルギーです。この結合エネルギーを使っても,反応熱を求めることができます。 この章の学習内容は,次の通りです。 (1)生成熱 (2)結合エネルギー では,生成熱からはじめましょう。単体の生成熱が0になることに注意してください。 |
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「反応熱=生成物の生成熱の和−反応物の生成熱の和」の関係ををしっかり覚えておきましょう。 次は結合エネルギーです。多くの結合エネルギーが求められていますが,異なる化合物から求めた結合エネルギーの値は,必ずしも一致しません。例えば,C=Oの結合エネルギーは,ケトン類(詳しくは有機化学で)と二酸化炭素では異なりますから,注意して下さい。結合エネルギーからも,ヘスの法則に基づいて生成熱を計算で求めることができます。 |
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ヘスの法則が理解できていないと,この章の内容は難しいですね。ヘスの法則は大切です。必要に応じて,復習して下さい。それと,計算練習を数多くこなすことが必要です。 それでは,この章の学習内容を確認しましょう。
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答
1.物質1molが,その成分元素の単体から生成するときの反応熱
2.反応熱=生成物の生成熱の和−反応物の生成熱の和
3.反応熱Q =生成物の生成熱の和−反応物の生成熱の和=(111+0)−(0+242)=−131〔kJ〕
4.共有結合を切るとき必要なエネルギー
5.生成物と反応物の結合エネルギーの差が,反応熱と等しくなる。
6.1molの水素分子を2molの水素原子にするのに436kJが必要だから,H2=2H−436kJ と表すことができる。同様に,Cl2=2Cl−243kJ と表すことができる。一方,2molのH原子と2molのCl原子から2molのHCl分子ができるとき,2×432kJのエネルギーを放出するから,2H+2Cl=2HCl+2×432kJ と表すことができる。したがって,3つの熱化学方程式をたすと,H2+Cl2=2HCl+185kJ となる。
7.(1) 2H2(気)=4H(気)−432×2kJ
−)C(黒鉛)+2H2(気)=CH4(気)+74.5kJ
CH4(気)=C(黒鉛)+4H(気)−432×2kJ−74.5kJ
+)C(黒鉛)=C(気)−715kJ
CH4(気)=C(気)+4H(気)−1653.5kJ
したがって,C-H結合の結合エネルギーは1653.5÷4=413〔kJ/mol〕である。
(2) CH2=CH2(気)+H2(気)=CH3-CH3(気)+Q kJ
生成物の結合エネルギーの和=C-H結合×6+C-C結合=413×6+368=2846〔kJ/mol〕
反応物の結合エネルギーの和=C-H結合×4+C=C結合×1+H-H結合×1=413×4+590+436=2678〔kJ/mol〕
Q =2846−2678=168〔kJ/mol〕