08ko-058 第58章 銅と銀
 この章では,銅や銀について学習しましょう。銅や銀といえば,オリンピックのメダルを思い出しますね。      
 
この章の学習内容は,次の通りです。
(1)
(2)
 人類が銅を利用した歴史は大変古く,最古のものは,紀元前8800年頃の小玉が北イラクで発見されています。もちろん,当時は還元の技術がなかったと思われますから,天然の銅を使ったのでしょう。精錬がはじめられたのは,紀元前500年頃であると考えられています。
 銅は黄銅鉱CuFeSとして産出されます。これに石灰石やけい砂を混ぜて加熱し,電気精錬によって銅をつくります。純銅だけではなく,青銅(銅とスズ),真鍮(銅と亜鉛)などの合金としてもよく使われています。銅は延性,展性に富み,電気伝導性や熱伝導性は銀に次いでいます。
 大阪城の屋根が何色か知っていますか。緑色ですね。あれは緑青です。湿った空気中では赤色の酸化銅(I)の被膜ができ,長く風雨にさらすと緑色の緑青になるのです。緑青の主成分は,塩基性炭酸銅CuCO・Cu(OH)です。
  
思えているかな?
1.銅の化合物は,酸化数がいくらのものが多いですか?
+2の化合物
2.酸化数+2の銅の酸化物の名称と化学式を答えなさい。
酸化銅(II),CuO
3.酸化数+2の銅の塩化物の名称と化学式を答えなさい。
塩化銅(II),CuCl
 銅は酸化数+2の化合物が多いのですが,酸化数+1の化合物も存在します。例えば,酸化銅(I)CuOや塩化銅(I)CuClなどです。 
 2価の銅イオンを含んだ水溶液は青色だといいますが,詳しくいえばテトラアクア銅(II)イオン[Cu(HO)2+が青色の原因なのです。
  

第58章 銅と銀
(1)
 Cu copper ← cyprusキプロス島(古代の銅鉱山)
 酸化数+2の化合物が多い,+1の化合物も存在
 CuSO・5HO(青色)⇔CuSO(白色)
 水の検出
 熱濃硫酸と反応して,二酸化硫黄を発生
 Cu 2H CuSO 2H
酸化数0 +6 加熱 +2 +4

<塩基との反応>
 銅(II)イオンに塩基を加えると水酸化銅(II)Cu(OH)になる
 Cu2+ 2OH Cu(OH)
 CuSO 2NaOH Cu(OH) NaSO
 アンモニア水を加えると,
 テトラアンミン銅(II)イオン[Cu(NH2+になる
 Cu(OH) 4NH [Cu(NH2+ 2OH
テトラアンミン銅(II)イオン

<加熱>
 水酸化銅(II)を加熱すると酸化銅(II)CuOになる
 Cu(OH) CuO

<酸との反応>
 酸化銅(II)に希硫酸を加えると銅(II)イオンCu2+になる 
 CuO 2H Cu2+
 CuO SO CuSO
 水の検出方法としては,塩化コバルトが有名です。中学校の教科書でも,青色の塩化コバルト紙が登場しましたね。塩化コバルト以外に硫酸銅(II)(無水硫酸銅)CuSOでも水を検出することができるのです。
 
 次は銀です。銀は紀元前3000年頃には使われていたと考えられています。語源は輝く,明るいという意味だそうです。当時,銀は金よりも価値があったようです。銀行の銀はもちろんAgのことです。
 銀は主として輝銀鉱AgSとして産出します。また,遊離銀として存在することもあります。
 銀は,金属の中でも最も電気伝導性や熱伝導性に優れた金属です。また,空気中では酸化されにくい金属です。したがって,指輪や食器に使われるのです。
 
 
銀の酸化数は,主に+1ですが,+2や+3も存在します。高校では,+1だけと考えても大丈夫です。
 銀といえば感光性ですね。写真のフィルムの感光膜は,塩化銀や臭化銀の微粒子を分散させたものです。これが光に当たると,銀塩が分解して,遊離した銀原子が数個集まって潜像ができます。これに還元剤を加えうると,銀塩が還元されて銀の粒子が大きくなり,黒い像が見えるようになるのです。
  

(2)
 Ag silver argentum(ラテン語で輝く)
 酸化数+1の化合物をつくる
 Ag 2HNO AgNO NO

 
<塩基との反応>
 銀(I)イオンに塩基を加えると酸化銀Ag
0になる
 2Ag 2OH AgO↓
 2AgNO 2NaOH AgO↓ 2NaNO
 さらにアンモニア水を加えるとジアンミン銀(T)イオン
[Ag(NH)になる
 Ag 4NH 2[Ag(NH) 2OH
ジアンミン銀(T)イオン

<ハロゲン化銀>
 塩化銀,臭化銀にアンモニア水を加えるとジアンミン銀(I)イオン
[Ag(NH)になる
 AgCl 2NH [Ag(NH) Cl
 AgBr 2NH [Ag(NH) Br
 ヨウ化銀AgIはアンモニア水に溶けない
 塩化銀,臭化銀にチオ硫酸イオンを加えると錯イオンになる
 AgCl 2S2− [Ag(S)3− Cl
チオ硫酸イオン ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオン
 AgBr 2S2− [Ag(S)3− Br
 ヨウ化銀はチオ硫酸ナトリウムNa水溶液に少し溶ける

<感光性>
 AgBrの感光性が最大
 2AgX 2Ag
 感光性を調べる実験は,天気のいい日が最適です。
    
 ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオンについて,説明しましょう。ビスbisとは複合置換基の倍数接頭語です。2がビスで3がトリスです。チオスルファトthiosulfateとはチオ硫酸イオンS2−のことですね。したがって,ビス(チオスルファト)とはチオ硫酸イオンS2−が2個という意味になります。これが1価の銀イオンAgと塩をつくり,全体として3価の陰イオンになっているのです。〜酸イオンとは錯陰イオンのことでしたね。
 次の章は,クロムCrとマンガンMnです。クロムとマンガンといえば,酸化剤を思い出すでしょう。遷移元素の特徴の一つは,同一元素でも複数の酸化数を示すことが多いことですね。そして,酸化数の高い化合物は,酸化力が強いのです。二クロム酸カリウムKCrや過マンガン酸カリウムKMnOは代表的な酸化剤です。
 この章の学習内容を確認しましょう。
確認しよう
1.電気分解を使って,純銅つくる方法を何といいますか?
2.硫酸銅(II)五水和物と硫酸銅(II)の色の違いを答えなさい。
3.銅(II)イオンに塩基を反応させると,何の沈殿ができますか。
4.3の沈殿を加熱すると,何になりますか?
5.3の沈殿にアンモニア水を加えると,何イオンになりますか?
6.銀(I)イオンに塩基を反応させると,何の沈殿ができますか?
7.6にアンモニア水を加えると,何イオンになりますか?


1.電解精錬
2.硫酸銅(II)五水和物は青色,硫酸銅(II)は白色
3.水酸化銅(II)Cu(OH)
4.酸化銅(II)CuO
5.テトラアンミン銅(II)イオン[Cu(NH2+
6.酸化銀Ag
7.ジアンミン銀(I)イオン[Ag(NH