この章では,銅や銀について学習しましょう。銅や銀といえば,オリンピックのメダルを思い出しますね。 この章の学習内容は,次の通りです。 (1)銅 (2)銀 人類が銅を利用した歴史は大変古く,最古のものは,紀元前8800年頃の小玉が北イラクで発見されています。もちろん,当時は還元の技術がなかったと思われますから,天然の銅を使ったのでしょう。精錬がはじめられたのは,紀元前500年頃であると考えられています。 銅は黄銅鉱CuFeS2として産出されます。これに石灰石やけい砂を混ぜて加熱し,電気精錬によって銅をつくります。純銅だけではなく,青銅(銅とスズ),真鍮(銅と亜鉛)などの合金としてもよく使われています。銅は延性,展性に富み,電気伝導性や熱伝導性は銀に次いでいます。 大阪城の屋根が何色か知っていますか。緑色ですね。あれは緑青です。湿った空気中では赤色の酸化銅(I)の被膜ができ,長く風雨にさらすと緑色の緑青になるのです。緑青の主成分は,塩基性炭酸銅CuCO3・Cu(OH)2です。
2価の銅イオンを含んだ水溶液は青色だといいますが,詳しくいえばテトラアクア銅(II)イオン[Cu(H2O)4]2+が青色の原因なのです。 |
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水の検出方法としては,塩化コバルトが有名です。中学校の教科書でも,青色の塩化コバルト紙が登場しましたね。塩化コバルト以外に硫酸銅(II)(無水硫酸銅)CuSO4でも水を検出することができるのです。 次は銀です。銀は紀元前3000年頃には使われていたと考えられています。語源は輝く,明るいという意味だそうです。当時,銀は金よりも価値があったようです。銀行の銀はもちろんAgのことです。 銀は主として輝銀鉱Ag2Sとして産出します。また,遊離銀として存在することもあります。 銀は,金属の中でも最も電気伝導性や熱伝導性に優れた金属です。また,空気中では酸化されにくい金属です。したがって,指輪や食器に使われるのです。 銀の酸化数は,主に+1ですが,+2や+3も存在します。高校では,+1だけと考えても大丈夫です。 銀といえば感光性ですね。写真のフィルムの感光膜は,塩化銀や臭化銀の微粒子を分散させたものです。これが光に当たると,銀塩が分解して,遊離した銀原子が数個集まって潜像ができます。これに還元剤を加えうると,銀塩が還元されて銀の粒子が大きくなり,黒い像が見えるようになるのです。 |
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感光性を調べる実験は,天気のいい日が最適です。 ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオンについて,説明しましょう。ビスbisとは複合置換基の倍数接頭語です。2がビスで3がトリスです。チオスルファトthiosulfateとはチオ硫酸イオンS2O32−のことですね。したがって,ビス(チオスルファト)とはチオ硫酸イオンS2O32−が2個という意味になります。これが1価の銀イオンAg+と塩をつくり,全体として3価の陰イオンになっているのです。〜酸イオンとは錯陰イオンのことでしたね。 次の章は,クロムCrとマンガンMnです。クロムとマンガンといえば,酸化剤を思い出すでしょう。遷移元素の特徴の一つは,同一元素でも複数の酸化数を示すことが多いことですね。そして,酸化数の高い化合物は,酸化力が強いのです。二クロム酸カリウムK2Cr2O7や過マンガン酸カリウムKMnO4は代表的な酸化剤です。 この章の学習内容を確認しましょう。
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答
1.電解精錬
2.硫酸銅(II)五水和物は青色,硫酸銅(II)は白色
3.水酸化銅(II)Cu(OH)2
4.酸化銅(II)CuO
5.テトラアンミン銅(II)イオン[Cu(NH3)4]2+
6.酸化銀Ag2O
7.ジアンミン銀(I)イオン[Ag(NH3)2]+