08ko-064 第64章 脂肪族炭化水素
 この章から有機化合物を学習しましょう。。有機化合物については,炭素のところで簡単に説明しましたね。
  
思えているかな?
1.有機化合物とはどのような化合物ですか?
炭素を含む化合物
2.1の例外を具体的にあげなさい。
COやCOのような酸化物,CSのような硫化物,(NHCOやCaCOなどの炭酸塩,KCNやHCNなどのようなシアン化物
 有機という言葉から推察できるように,元来は生物によって生成されるものと考えていました。 英語名organic compoundは,生物organismにちなんでつけられたとされています。1828年ドイツのウェーラーは,シアン酸アルカリとアンモニウム化合物からシアン酸アンモニアウムNHOCN(無機物)をつくろうと実験しましたが,得られたものはシアン酸アンモニウムではなく尿素NHCONH(有機物)でした。このことより,無機物が有機物に変わることを発見したと言えます。
  
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)アルカン
(2)アルケン
(3)アルキン
 メタンなどの鎖式の飽和炭化水素をアルカンと総称します。また,アルカンはメタン系炭化水素またはパラフィンともよばれます。エチレンなどの分子中に二重結合を1つ含み,他はすべて単結合の鎖式炭化水素をアルケンと総称します。アルケンは,エチレン系炭化水素またはオレフィンともよばれます。アセチレンなどの分子中に三重結合を1個含む鎖式炭化水素をアルキンと総称します。アルキンはアセチレン系炭化水素ともよばれます。この章では,アルカン,アルケン,アルキンについて勉強しましょう。
 炭素数1のアルカンはメタンです。メタンは,下のモデルのような正四面体構造をしており,正四面体の中心に炭素原子が,各頂点に4個の水素原子が位置しています。水素原子−炭素原子−水素原子の結合角は約109.5°になります。炭素数の多いアルカン分子では,各炭素原子がそれぞれ正四面体の中心に存在し,その頂点方向で他の原子と結合した構造をしています。 

第64章 脂肪族炭化水素
(1)アルカン alkane C+2
=1 CH メタン methane
=2 エタン ethane
=3 プロパン propane
=4 10 ブタン butane

 ブタンとイソブタンは
構造異性体
 
異性体…分子式が同じで性質が異なる化合物
 
構造異性体…分子の構造式が異なる異性体
 アルカンは光を当てると
ハロゲン化する(置換反応
 CH CHCl CHCl CHCl CCl
 メタン クロロメタン ジクロロメタン トリクロロメタン テトラクロロメタン
(塩化メチル) (塩化メチレン) (クロロホルム) (四塩化炭素)
 置換反応…分子中の原子や原子団(基)が置き換わる反応

=1 CH メタン methane

=2 C エタン ehtane

=3 C プロパン propane

=4 C10 ブタン butane
ブタン
イソブタン(2-メチルプロパン)
 アルカンの語尾は-aneであることに注目してください。アルカンは燃焼熱が大きいので,燃料として使われます。私たちが使っている都市ガスの主成分はメタンです。また,プロパンはボンベに詰めて使われていますね。
    
 アルケン分子では,二重結合をしている炭素原子2個と,これに結合する原子4個は同一平面上に存在し,結合角は約120°になります。アルケン分子では,構造異性体だけではなく,幾何異性体も存在することに注意して下さい。一般に炭素原子間の二重結合は,それを軸として回転することは難しいのです。このため,2−ブテンでは,下のモデルのように,メチル基が二重結合をはさんで反対側にあるトランス形と,同じ側にあるシス形の異性体が存在するのです。

(2)アルケン alkene C≧2)
 分子中に二重結合を1つ含む鎖式炭化水素
=2 エチレン ethene
=3 プロピレン propene
=4 ブテン butene

 メチルプロペン,1-ブテン,2-ブテンは構造異性体
 トランス-2-ブテンとシス-2-ブテンは
シス-トランス異性体
 
シス-トランス異性体…炭素原子間の二重結合などが原因で生じる幾何異性体
 アルケンは
付加反応しやすい
 CH=CH Br CHBr−CHBr
 エチレン 1,2-ジブロモエタン
 付加反応…不飽和結合が切れて他の原子が付加する反応

=2 C エチレン ethene

=3 C プロピレン propene

=4 C ブテン butene
メチルプロペン
1-ブテン
トランス-2-ブテン
シス-2-ブテン
 エチレンは果物を成熟させる作用があるといわれています。
  
 アルキン分子では,三重結合をしている炭素原子とこれに結合する2個の原子は,一直線上に存在します。したがって,結合角は180°になりますね

(3)アルキン alkyne C−2≧2)
 分子中に三重結合を1つ含む鎖式炭化水素
=2 アセチレン ethyne
=3 プロピン propyne
=4 ブチン butyne

 1-ブチンと2-ブチンは構造異性体
 アルキンは
付加反応しやすい
 CH≡CH HCl CH=CHCl
塩化ビニル
 CH≡CH CHCOOH CH=CHOCOCH
酢酸ビニル
 CH≡CH HCN CH=CHCN
アクリロニトリル
 CH≡CH CHCHO
アセトアルデヒド

=2 C アセチレン ethyne

=3 C プロピン propyne

=4 C ブチン butyne
1-ブチン
2-ブチン
 アセチレンCH≡CHと水の反応では,中間体としてビニルアルコールCH=CH(OH)ができますが,このこの物質は不安定なため,すぐにアセトンになります。なお,この反応では水銀塩を触媒とするため,水銀公害の問題が生じます。現在では,エチレンの酸化によってアセトアルデヒドがつくられています。
 2CH=CH 2CHCHO
触媒はPdClとCuCl
 アセチレンは,溶接切断用やクロロプレンなどの原料に用いられています。
  

 また,アセチレンに塩化水素や酢酸,シアン化水素などを付加させると塩化ビニル,酢酸ビニル,アクリロニトリルなどのビニル化合物ができます。塩化ビニルからポリ塩化ビニルができます。ポリ塩化ビニルは水道管などに使われています。酢酸ビニルからはポリ酢酸ビニルができます。ポリ酢酸ビニルは接着剤やガムの原料になります。アクリロニトリルからはポリアクリロニトリルができます。アクリル製品にはセーターや毛布などがあります。
     
 いきなりいろいろな化合物が出てきて,驚いている人も多いでしょう。しかし,心配はいりません。すぐに慣れます。炭素原子には不対電子が4個有り,4カ所で共有結合ができること,二重結合は不対電子が4個,三重結合は不対電子が6個関係していることを理解しておけば,構造はある程度類推できます。また,有機化合物には多くの慣用名がありますが,現在では命名法によって整理されています。命名法をマスターすれば,名前から構造を知ることができるのですよ。とても便利です。
 それでは,この章の学習内容の確認です。
確認しよう
1.メタン分子は,どのようなかたちをしていますか?
2.分子中の原子が,他の原子や原子団(基)に置き換わる反応を何といいますか?
3.エチレン分子は,どのようなかたちをしていますか?
4.不飽和結合が切れて他の原子が付加する反応を何といいますか?
5.アセチレン分子は,どのようなかたちをしていますか?
6.分子式が同じで性質が異なる化合物を何といいますか?
7.6のうちで,分子の構造が異なるものを何といいますか?
8.6のうちで,原子のつながり方や結合の種類は同じであるが,分子の立体的な構造が異なるために生じるものを何といいますか?


1.正四面体構造
2.置換反応
3.平面構造
4.付加反応
5.直線構造
6.異性体
7.構造異性体
8.立体異性体