08ko-068 第68章 アルコールとエーテル
 この章では,アルコールとエーテルについて学びましょう。お酒やみりんにはアルコールの一種であるエタノールが含まれています。アルコールとはエタノールのことだと思っている人はいませんか。エタノール以外にもいろいろなアルコールがあります。
    
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)アルコール
(2)アルコールの性質
(3)エーテル
 それでは,アルコールからはじめましょう。アルコールは炭化水素の水素原子をヒドロキシ基−OHで置換した形の化合物ですが,ヒドロキシ基などのようにその化合物の性質を特徴づける基を官能基といいます。官能基は英語でfunctional groupといいますが,functionが「働き」という意味ですから官能基とは誤訳であるという意見があります。「反応基」の意味であるというのです。あなたはどう思いますか?
 分子中にヒドロキシ基が1個のものを1価アルコールといいます。 個であれば 価アルコールです。また,ヒドロキシ基の結合している炭素原子に,他の炭素原子が何個結合しているかによって,第一級アルコール,第二級アルコール,第三級アルコールに分類されます。

第68章 アルコールとエーテル
(1)アルコールalcohol
 炭化水素の水素原子を
ヒドロキシ基−OHで置換した形の化合物
CH メタン methane CHOH メタノール methanol
エタン ethane OH エタノール ethanol
プロパン propane OH プロパノール propanol
10 ブタン butane OH ブタノール butanol
12 ペンタン pentane 11OH ペンタノール pentanol

 プロパノールには,2種類の構造異性体がある。
 

 ブタンには2種類の構造異性体がある。
 

 ブタノールには4種類の構造異性体がある。
 

 ペンタンには3種類の構造異性体がある。
 
 ペンタノールには8種類の構造異性体がある。
 


メタン methane メタノール methanol

エタン ehtane エタノール ethanol

プロパン prppane 1-プロパノール 1-propanol
 
1-プロパノール 1-propanol 2-プロパノール 2-propanol

n-ブタン n-butane 1-ブタノール 1-butanol

n-ペンタン n-pentane 1-ペンタノール 1-pentanol
 ブタノールの構造異性体には,1-ブタノール,2-ブタノール,2-メチル-1-プロパノール,2-メチル-2-プロパノールがあります。1-ブタノール,2-メチル-1-プロパノールは第一級アルコールです。2-ブタノールは第二級アルコールです。2-メチル-2-プロパノールは第三級アルコールです。
 ペンタノールの構造異性体には,1-ペンタノール,2-ペンタノール,3-ペンタノール,2-メチル-1-ブタノール(活性アミルアルコール),2-メチル-2-ブタノール,3-メチル-1-ブタノール(イソアミルアルコール),3-メチル-2-ブタノール,2,2-ジメチル-1-プロパノール,があります。
 次は,アルコールの性質について考えてみます。
思えているかな?
1.金属ナトリウムは冷水と反応しますか?
激しく反応して水素を発生する。
2.金属ナトリウムはどのようにして保存しますか?
石油(灯油)中などに保存する。
 

(2)アルコールの性質
<Naとの反応>
 2R−OH 2Na 2R−ONa
ナトリウムアルコキシド

<酸化>
 R−CH−OH (O) R−CHO
 第一級アルコール アルデヒド
 炭素数4の第一級アルコール…1-ブタノール,2-メチル-1-プロパノール

 RR’CH−OH (O) RR’C=O
 第二級アルコール ケトン
 炭素数4の第二級アルコール…2-ブタノール

 第三級アルコールは酸化されにくい
 炭素数4の第三級アルコール…2-メチル-2-プロパノール


1-ブタノール 1-butanol 2-メチル-1-プロパノール
2-methyl-1-propanol

2-ブタノール 2-butanol

2-メチル-2-プロパノール 2-methyl-2-propanol
 アルコールに適当な酸化剤を加えて酸化すると,第一級アルコールはアルデヒドになります。たとえば,エタノールCHCHOHを酸化するとアセトアルデヒドCHCHOになります。このアセトアルデヒドをさらに酸化すると酢酸CHCOOHになりますが,詳しいことは,アルデヒドのところで説明しましょう。第二級アルコールを酸化するとケトンになります。たとえば2-プロパノールCHCH(OH)CHを酸化するとアセトンCHCOCHになります。また,第三級アルコールは酸化されにくいことも覚えておきましょう。
   

   
 次はエーテルです。酸素原子に2個の炭化水素基が結合した形の化合物です。
思えているかな?
3.エタノールに濃硫酸を加えて160℃以上に熱すると,何ができますか?
エチレン
4.3の反応を化学反応式で示しなさい。
OH→C+H

(3)エーテル
 酸素原子に炭化水素基が2個結合した形の化合物
CH−O−CH ジメチルエーテル dimethyl ether
CH−O−C エチルメチルエーテル ethyl methyl ether
−O−C ジエチルエーテル diethyl ether

ジメチルエーテル dimetyl ether
 
エチルメチルエーテル ethyl methyl ether(アルファベットの順)
 
ジエチルエーテル diethyl ether

 エタノールに濃硫酸を加えて約140℃で加熱するとジエチルエーテルが生じる
SO
 2COH −O−C (縮合)
140℃
 縮合…2つの分子から水のような簡単な分子がとれて1つの分子ができること
 C−O−
HO−C→C−O−C

 エタノールに濃硫酸を加えて
約160℃以上で加熱するとエチレンを生じる
SO
 COH (脱離)
160℃
 脱離…水などの小さい分子がとれて二重結合を生じる反応
  OH
 |
 CH CH CH=CH
 エタノールに濃硫酸を加えて加熱すると,温度によって生成物が違うのです。少しややこしいですが,縮合の方が脱離より低い温度(少ないエネルギー)で起こる,すなわち起こりやすいことを理解しておけば大丈夫だと思います。とくに縮合は,この後何度も出てきます。
 ところで,炭素数の等しいアルコールとエーテルを比較すると,沸点の違いに気がつくと思います。エタノールの沸点は78℃ですが,ジメチルエーテルの沸点は−25℃です。この違いを説明できますか。アルコール分子どうしは水素結合で結ばれています。これに対してエーテルは分子の極性が小さいので,分子間の引き合いが小さいのです。
 それでは,今日の学習内容の確認です。
確認しよう
1.アルコールに共通する官能基は何ですか?
2.アルコールは,分子量の似た炭化水素に比べて融点や沸点は高いですか,低いですか?
3.アルコールがナトリウムNaと反応すると,何ができますか?
4.第一級アルコールを酸化すると,何ができますか?
5.第二級アルコールを酸化すると,何ができますか?
6.エタノールに濃硫酸を加え,約140℃で加熱すると,何ができますか?
7.エタノールに濃硫酸を加え,約160℃以上で加熱すると,何ができますか?


1.ヒドロキシ基(−OH)
2.高い
3.ナトリウムアルコキシド(ナトリウムアルコラート)と水素
4.アルデヒド
5.ケトン
6.ジエチルエーテル
7.エチレン