08ko-074 第74章 カルボン酸とエステル
 この章では,カルボン酸とエステルについて学習しましょう。
 代表的なカルボン酸には酢酸CHCOOH acetic acid がありますね。酢酸は食酢に含まれており,私たちには身近なカルボン酸です。
思えているかな?
1.第一級アルコールを酸化すると何になりますか?
アルデヒド
2.アルデヒドをさらに酸化すると何になりますか?
カルボン酸
3.純粋な酢酸を何といいますか?
氷酢酸
4.どうして表酢酸というのですか?
融点が17℃で,冬に凍るから
    
 ギ酸HCOOH formic acid は,カルボン酸であり同時にアルデヒドでもあります。当然,アルデヒドの代表的な性質である還元性をもっています。しかし,アルデヒド基をもっているにもかかわらず,通常の条件ではフェーリング液を還元しない(極めて遅い)ようです。
     
 氷酢酸と無水酢酸(CHCO)O acetic anhydride はよく混同しますから注意して下さい。
     
 ジカルボン酸であるマレイン酸HOOC−CH=CH−COOH maleic acid とフマル酸HOOC−CH=CH−COOH fumaric acid の区別にも注意して下さい。シス形がマレイン酸,トランス形がフマル酸です。発泡入浴剤やベーキングパウダーにはトランス形のフマル酸が含まれています。
     
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)カルボン酸
(2)エステル
 では,カルボン酸からはじめましょう。

第74章 カルボン酸とエステル
(1)カルボン酸
 カルボキシル基 -COOH をもった化合物 R-COOH
 RCOOH ⇔ RCOO + H
 
炭酸水より酸性が強い
 NaCO+2CHCOOH→2CHCOONa+HO+CO

<ギ酸>
 HCHO + (O) → HCOOH
 アルデヒド基→還元性
 HCOOH → CO
 + 2H + 2e−

<氷酢酸と無水酢酸>
 氷酢酸…純粋な酢酸(mp.17℃)
 環状の二量体
 無水酢酸…2分子の酢酸が縮合したもの

 

<ジカルボン酸>
シュウ酸 HOOC−COOH
マレイン酸 HOOC−CH=CH−COOH (シス形)
フマル酸 HOOC−CH=CH−COOH (トランス形)
アジピン酸 HOOC−(CH−COOH

シュウ酸 oxalic acid

マレイン酸(シス形) maleic acid フマル酸(トランス) fumaric acid
 
アジピン酸 adipic acid
 アジピン酸は,6,6−ナイロンの原料に使われますね。
       
 カルボン酸には,これ以外に高級脂肪酸やヒドロキシ酸があります。高級脂肪酸は,天然油脂中でグリセリンと結合しています。この結合を切ると,セッケンができるのです。また,ヒドロキシ酸には光学異性体というものがあります。セッケンや光学異性体も大切なのですが,とりあえずエステルに進むことにしましょう。
 酸とアルコールから水分子がとれて生成する化合物をエステルといいます。低分子のエステルは,一般に芳香をもった液体で,有機溶媒によく溶けます。
     

(2)エステル
 酸とアルコールから水分子がとれてエステル結合 -COO- をもつ化合物
 →
エステル
 R-COOH O-R’ R-COO-R’
   酸 アルコール  エステル
 エステルの生成反応→エステル化
 
縮合…2つの分子から水のような簡単な分子がとれて1つの分子ができる反応


<酢酸エチル>
 酢酸とエタノールの混合物に濃硫酸を加えて加熱
 CHCOOH HO-C CHCOO-C
 酢酸 エタノール 酢酸エチル
 水に溶けにくい液体
 果実のような強い香気

<けん化>
 エステルに水を加えて加熱→加水分解
 塩基によるエステルの加水分解→
けん化
 R-COO-R’ NaOH R-COONa R’-OH
 エステル 塩基 カルボン酸の塩 アルコール

酢酸エチル ethyl acetate 酢酸イソアミル isoamyl acetate
 桂皮酸メチルは松茸の香りがします。最近,めっきり松茸を食べる機会が少なくなりました。松茸を食べたくなったら,桂皮酸メチルをつくるといいですよ。ちなみに,桂皮酸とはCCH=CHCOOHで,ふつうはトランス形のものをいうそうです。
      
 実は,松茸の香りの主成分は,桂皮酸メチルだけではないようです。マツタケオール(アミルビニルカルビノールCH=CHCH(OH)CHCHCHCHCH)が主成分であるという説もあります。
  
 それでは,この章の学習内容の確認です。
確認しよう
1.鎖状の炭化水素基の末端にカルボキシル基1個が結合したものを何といいますか?
2.炭酸水とカルボン酸の水溶液とでは,どちらが酸性が強いですか?
3.最も酸性が強い飽和脂肪酸は何ですか?
4.純粋な酢酸を何といいますか?
5.マレイン酸とフマル酸のうち,カルボキシル基がシス型についているのはどちらですか?
6.アジピン酸とヘキサメチレンジアミンから何ができますか?
7.カルボン酸とアルコールが縮合すると何ができますか?
8.けん化とはどのような反応ですか?


1.脂肪酸
2.カルボン酸
3.ギ酸
4.氷酢酸
5.マレイン酸
6.6,6−ナイロン
7.エステル
8.塩基によるエステルの分解反応