この章では,カルボン酸とエステルについて学習しましょう。 代表的なカルボン酸には酢酸CH3COOH acetic acid がありますね。酢酸は食酢に含まれており,私たちには身近なカルボン酸です。
ギ酸HCOOH formic acid は,カルボン酸であり同時にアルデヒドでもあります。当然,アルデヒドの代表的な性質である還元性をもっています。しかし,アルデヒド基をもっているにもかかわらず,通常の条件ではフェーリング液を還元しない(極めて遅い)ようです。 氷酢酸と無水酢酸(CH3CO)2O acetic anhydride はよく混同しますから注意して下さい。 ジカルボン酸であるマレイン酸HOOC−CH=CH−COOH maleic acid とフマル酸HOOC−CH=CH−COOH fumaric acid の区別にも注意して下さい。シス形がマレイン酸,トランス形がフマル酸です。発泡入浴剤やベーキングパウダーにはトランス形のフマル酸が含まれています。 この章の学習内容は,次の通りです。 (1)カルボン酸 (2)エステル では,カルボン酸からはじめましょう。 |
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アジピン酸は,6,6−ナイロンの原料に使われますね。 カルボン酸には,これ以外に高級脂肪酸やヒドロキシ酸があります。高級脂肪酸は,天然油脂中でグリセリンと結合しています。この結合を切ると,セッケンができるのです。また,ヒドロキシ酸には光学異性体というものがあります。セッケンや光学異性体も大切なのですが,とりあえずエステルに進むことにしましょう。 酸とアルコールから水分子がとれて生成する化合物をエステルといいます。低分子のエステルは,一般に芳香をもった液体で,有機溶媒によく溶けます。 |
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桂皮酸メチルは松茸の香りがします。最近,めっきり松茸を食べる機会が少なくなりました。松茸を食べたくなったら,桂皮酸メチルをつくるといいですよ。ちなみに,桂皮酸とはC6H5CH=CHCOOHで,ふつうはトランス形のものをいうそうです。 実は,松茸の香りの主成分は,桂皮酸メチルだけではないようです。マツタケオール(アミルビニルカルビノールCH2=CHCH(OH)CH2CH2CH2CH2CH3)が主成分であるという説もあります。 それでは,この章の学習内容の確認です。
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答
1.脂肪酸
2.カルボン酸
3.ギ酸
4.氷酢酸
5.マレイン酸
6.6,6−ナイロン
7.エステル
8.塩基によるエステルの分解反応