08ko-079 第79章 実験−ベンゼン
 この章では,ベンゼンの性質を調べ,ベンゼンからニトロベンゼンやベンゼンスルホン酸ナトリウムを合成する実験を紹介します。
      
 濃硫酸のとりあつかいには,くれぐれも注意してください。試験管は,乾いたものを使います。
思えているかな?
1.濃硫酸の性質を説明しなさい。
粘性の大きい重い液体,沸点が高い(18mol/Lで338℃),吸湿性が強い
2.濃硫酸には有機物中の水素原子と酸素原子を水分子として取り除く作用があります。これを何といいますか?
脱水作用
3.硫酸は不揮発性の酸なので,揮発性の酸の塩と熱するとどのような反応がみられますか?
揮発性の酸が遊離する。
4.熱濃硫酸の性質を説明しなさい。
酸化作用が強い。
 また,濃硝酸を皮膚につけると,皮膚が黄色くなります。この反応をキサントプロテイン反応と言います。ベンゼン環をもつアミノ酸が,私たちのタンパク質に含まれています。そのアミノ酸のベンゼン環がニトロ化されるからです。また,混酸をつくるときは発熱しますから,水道水で冷やしながら,少しずつ加えてよく混ぜてください。

第79章 実験−ベンゼン
<ベンゼンとニトロベンゼンの性質>
1−1 実験36で行っているので省略
1−2 ベンゼンCおよびニトロベンゼンCNOを各1mLを試験管に別々にとり,色や臭いを調べる。
1−3 2の各試験に水2mLを入れ,よく振った後,静置し,各物質の水溶性と水に対する比重を調べる。



におい 水溶性 水より重い・軽い
ベンゼン



ニトロベンゼン



 実験結果を確認しましょう。


におい 水溶性 水より重い・軽い
ベンゼン 無色 ある 溶けにくい 軽い
ニトロベンゼン 淡黄色 ある 溶けにくい 重い
 ベンゼンは無色ですが,ニトロベンゼンは淡黄色です。においはともにあります。また,水にはともに溶けません。ベンゼンの比重は0.88(20℃)で,ニトロベンゼンの比重は1.20(20℃)です。したがって,ベンゼンは水に浮きますが,ニトロベンゼンは沈みます。 

<ニトロベンゼンの合成>  
2−1 乾いた試験管に濃硝酸1mLをとり,冷水で冷やしながら,濃硫酸1mLを注意しながら少しずつ加え,混酸をつくる。
2−2 1の試験管にベンゼン1mLを1滴ずつ,よく振りながら加える。試験管の温度が高くなりすぎるようなら水道水で冷やす。
2−3 約5分間よく振った後,内容物を水50mL入れたビーカーに流し出し,ガラス棒でよくかき混ぜ,静置する。ビーカーの底に沈んでいる物質の色・においを調べる。

 
 
 実験結果を確認しましょう。
2−2では,溶液が無色から黄色に変化し,かなり発熱します。
2−3では,淡黄色,油状の液体がビーカーの底にたまります。これがニトロベンゼンですね。
  

<ベンゼンスルホン酸ナトリウムの合成>
3−1 
乾いた試験管(21mm)にベンゼン2mLと濃硫酸5mLをとり,よく振りながら,ときどき弱火で加熱する(素手で持てる程度の加熱)。油層と濃硫酸の層の区別がなくなるまで操作を続ける。
3−2 ビーカーに塩化ナトリウム水溶液を15mLとり,1の溶液をガラス棒でかき混ぜながら注ぎ,氷水で10分ほど冷やす。

 
 実験結果を確認しましょう。
3−2では,白色,光沢のある小板状結晶ができます。これがベンゼンスルホン酸ナトリウムです。
  
 それでは,考察です。

 ベンゼンとシクロヘキサンの燃焼の違いは,
シクロヘキサンC12よりベンゼンCの方が炭素含有率が高い。したがって,不完全燃焼し,多量のすすを出す。
 ベンゼンの完全燃焼を化学反応式で示すと,
2C+15O→12CO+6H
 ベンゼンからニトロベンゼンの生成を化学反応式で示すと,
+HNO→CNO+H
または,
+HO-NO→CNO+H
 ベンゼンからベンゼンスルホン酸の生成を化学反応式で示すと,
+HSO→CSOH+H
または,
+HO-SOH→CSOH+H
 ベンゼンで起こりやすい反応は,
置換反応である。具体的には,ハロゲン化,ニトロ化,スルホン化などである。

 ベンゼンは付加反応が起こりやすいと思うかも知れませんが,通常の条件では,置換反応が主です。
 この章の実験のポイントは,次の通りです。
確認しよう
1.ベンゼン,ニトロベンゼンとも水に溶けません。ベンゼンは水に浮きますが,ニトロベンゼンは沈みます。
2.混酸の入った試験管にベンゼンを加えてよく振り,水の入ったビーカーに内容物を流し出すと,ビーカーの底にニトロベンゼンが見られます。
3.ベンゼンに濃硫酸を加えて加熱し,塩化ナトリウム水溶液の入ったビーカーに注ぎ,氷水で冷やすとベンゼンスルホン酸ナトリウムの結晶が見られます。