この章から化学II の内容に入ります。化学II の最初は化学結合の内容ですが,化学結合はすでに以前の章で扱いました。また,結合エネルギーも以前の章で扱いました。自信のない人は復習しておいてください。次の項目をクリックすると,復習できます。 1.イオン結合とイオン結晶 2.共有結合によって結びついた物質 3.結合エネルギー 4.分子の極性 5.共有結合の結晶とその例 6.配位結合 7.分子間力 8.金属結合と金属 この章から学習する内容は,物質の状態変化です。 ところで,空に浮かぶ雲は,水蒸気が水滴や氷の粒に変わったものですね。このように,物質は,そのときの条件で,固体,液体,気体とすがたを変えます。
(1)拡散 (2)粒子の熱運動 (3)気体の圧力 (4)物質の状態と粒子 それでは,最初に拡散について考えてみましょう。 ここに水素の入った集気瓶と,空気の入った集気瓶があります。この2つの集気瓶を,ガラス板をはさんで口を重ねた後,しきりのガラス板を取り除きます。このとき,水素の入った集気瓶を上にします。水素は最も軽い気体でしたね。水素と空気は混ざるのでしょうか。 |
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では,どうして水素は瓶の中で均一に広がっていったのでしょうか。実は,気体の状態では,粒子はいろいろな速さでいろいろな向きに絶えず動き回っているのです。このような粒子の運動を熱運動といいます。気体の拡散は気体分子の熱運動で起こるのです。気体の温度を上げると,加わった熱エネルギーが気体の運動エネルギーにかわり,気体分子の運動速度が増します。また,分子量の小さい気体ほど速く運動します。 もちろん運動している気体分子どうしの衝突が起こります。また,気体分子は器壁にも衝突します。したがって,同じ温度でもすべての気体分子が同じ速度で運動しているわけではありません。速いものやおそいものがあるのです。しかし,温度が高くなると,分子の運動エネルギーの総和は大きくなり,その分子の速さの平均値は大きくなります。すなわち,気体分子の速度分布は速度の大きい方に移動します。 |
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気体分子は,他の分子や物体と絶えず衝突しています。その結果,衝突した物体に力を及ぼすわけです。この力が気体の圧力の原因になっています。 温度が高いと熱運動は激しくなります。また,体積を小さくすると単位時間に衝突する分子の数が多くなります。このように,熱運動が激しいほど,また衝突する分子の数が多いほど,気体の圧力は大きくなります。 気体の圧力は,単位面積あたりにかかる力で定義されています。国際単位系での圧力の単位はPa(パスカル)です。1Pa=1N/m2です。一般に圧力を表すときは,Paの100倍の単位のhPa(ヘクトパスカル)を使用します。大気圧は1013hPaで,水銀の高さ76cm(760mm)の圧力です。 国際単位系(SI)のSI接頭語を紹介しましょう。
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固体では,粒子の熱運動に比べて粒子間にはたらく引力の方が強くなっています。したがって,粒子はほぼ一定の位置に固定され,その位置で振動しています。 液体では,熱運動により位置を自由に変えることができます。したがって,流動性が出てきます。しかし,粒子間に働く引力もかなり強いため,液体はほぼ一定の体積を示します。 気体では,粒子の間の距離が大きく,粒子間の引力がほとんど働きません。したがって,粒子が空間を自由に飛び回ることができるのです。また,体積や形が一定しないのです。 |
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同じ物質でも,液体から固体に変化すると,分子間距離が約6倍になり,その結果分子間力は1/280000〔倍〕になるのです。気体の分子では,ほとんど引力が働いていないことがわかりますね。 それでは,この章の学習内容を確認しましょう。
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答
1.拡散
2.熱運動
3.Pa(パスカル)
4.1013hPa
5.76cm
6.気体