08ko-095 第95章 混合気体
  気体を発生させて水上置換で捕集するとき,捕集した気体の圧力は大気圧に等しいでしょうか。この章では,混合気体の圧力について考えてみましょう。
思えているかな?
1.空気の主な成分は何ですか?
窒素と酸素
  
2.乾燥空気中には,それぞれ体積で何%含まれていますか?
窒素は約78%,酸素は約21%
3.気体の圧力の単位は?
国際単位系(SI)による圧力の単位はPa(パスカル)であり,1Paは面積1mあたりに1N(ニュートン)の力がはたらくときの圧力を表す。また,100Paを1hPa(ヘクトパスカル)という。
 空気を一定容器に入れたとき,気体分子はそれぞれ独立に熱運動し,器壁に衝突して圧力を及ぼします。このとき,空気のような混合気体が示す圧力を全圧,窒素や酸素のように各成分気体がそれぞれ単独で混合気体と同じ体積を占めたときの圧力を,各成分気体の分圧といいます。では,全圧と分圧との間には,どのような関係があるでしょうか。
 
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)分圧の法則
(2)分圧とモル分率
(3)混合気体の分子量
 最初に実験を紹介しましょう。この実験では,気体Aと気体Bはともに空気ですが,違う種類の気体と考えてください。

第95章 混合気体
<実験> 
1 内容積450mL のフラスコから空気を80mL 抜く。
 =(   )〔mmHg〕
2 大気圧下で100mL の空気をとり,フラスコ内に圧入する。
 =(   )〔mmHg〕
 =(   )〔mmHg〕
3 フラスコ内の気体Bの圧力をBとすると,
 ボイルの法則より,pv(一定)
 大気圧×100=B×450
 B=大気圧×100/450=(   )〔mmHg〕

 
 
 の間には,どのような関係があるでしょうか。結果の確認をしてみましょう。
大気圧766mmHgのとき,=656〔mmHg〕,=830〔mmHg〕になりました。=174〔mmHg〕になりますね。また,=766×100/450=174〔mmHg〕です。すなわち,の関係が成立します。
  
 さて,ドイルトンを覚えていますね。倍数比例や原子説で有名な化学者です。分圧の法則も,彼が発見したものです。先ほどの実験で,全圧と分圧の関係がわかりますね。

(1)分圧の法則 
 混合気体が示す圧力→
全圧
 各成分気体がそれぞれ単独で混合気体と同じ体積を占めたときの圧力→
分圧
 大きさの違う容器A,Bがコックを閉じた状態で連結されている。
 A,Bそれぞれの容器には,種類の違う気体(気体A,気体B)が入っている。
 気体Aの圧力…,Aの容器の体積…
 気体Bの圧力…,Bの容器の体積…

 
 
 コックを開くと,気体A,気体Bが均一に混ざる。
 気体A,気体Bそれぞれについてボイルの法則が成り立つ。
 pv)…(1)
 pv)…(2)
(1)+(2)より,)=()(
したがって,
 1801年 ドルトン(イギリス)
 
混合気体の全圧は,各成分気体の分圧の和に等しい
 →
分圧の法則

 ひじょうにすっきりとした法則ですね。ところで,アボガドロの法則を覚えていますね。
 「同温・同圧のもとで,同体積の気体は,気体の種類に関係なく同数個の分子を含む。」 
です。したがって,同温・同圧のもとで,気体の体積は分子数に比例するわけですから,言い換えると気体の体積は物質量に比例するともいえますね。そこで,全圧と分圧および物質量の関係は,次のようになります。
  

(2)分圧とモル分率 
 温度,圧力が一定のとき,気体の体積は物質量に比例するから,
 knknである。
 pv)より,
 pv/()=pknknkn)=pn/(
 pv)より,
 pv/()=pknknkn)=pn/(
 
分圧=全圧×モル分率
 空気の主な成分気体は窒素と酸素です。窒素の分子量は28.0,酸素の分子量は32.0ですね。では,空気の分子量というものを考えることはできないでしょうか。すなわち,混合気体を,ただ1種類の仮想の分子からなる単一の気体として取り扱うことはできないかということです。
  

(3)混合気体の分子量 
 空気中の窒素と酸素の体積を4:1とすると,
 空気1molの質量=28.0〔g/mol〕×4/5〔mol〕+32.0〔g/mol〕+1/5〔mol〕
 =28.8〔g/mol〕
 したがって,空気の平均分子量は28.8
 混合気体中の成分気体Aの分子量=,物質量=
 混合気体中の成分気体Bの分子量=,物質量=
 混合気体の平均分子量/()+/(
 =//

 水素や酸素など,水に溶けにくい気体は水上置換で捕集しますね。そして,その捕集された気体の圧力は,水圧の影響を考えなければ大気圧と等しいと考えてきました。これは正しいでしょうか。
 気体を捕集している容器には水分子(水蒸気)が存在しますね。その温度における飽和蒸気圧がその水分子による圧力です。したがって,捕集した気体の圧力と水の飽和蒸気圧の和が大気圧になるのです。27℃における水蒸気圧は36hPaですから,大気圧を1013hPaとすると,約3.6%の圧力になるのです。決して無視できませんね。
    
 それでは,この章の学習内容を確認しましょう。
確認しよう
1.混合気体の圧力を何といいますか?
2.各成分気体が単独に混合気体の全体積を占めるときの圧力を何といいますか?
3.1の圧力と2の圧力との間には,どのような関係がありますか?
4.3の関係を何といいますか?
5.2の圧力と物質量の割合(モル分率)にはどのような関係がありますか?
6.体積比で,酸素:窒素=1:4の混合気体の平均分子量を求めなさい。


1.全圧
2.分圧
3.混合気体の全圧は,各成分気体の分圧の和に等しい。
4.分圧の法則
5.分圧は,各成分気体のモル分率に比例する。
6.28.8