08ko-099 第99章 気体の溶解度
  炭酸飲料水の入っている容器の栓を開けると,水溶液からさかんに気泡が発生しますね。もちろんこの気泡は二酸化炭素COです。
   
 では,どうして栓を開けると,二酸化炭素の気泡が発生するのでしょうか。   
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)気体の溶解度
(2)ヘンリーの法則
(3)二酸化炭素の溶解
思えているかな?
1.溶解度とは何ですか?
水100gに物質を溶かして飽和水溶液にしたとき,溶けた溶質の質量〔g〕の値。(中学校理科)
ある温度,ある圧力で,溶質がそれ以上溶けなくなった溶液を飽和溶液といい,その溶液の濃度を溶解度(普通,溶媒100gに溶解する溶質の質量〔g〕で表す)という。(高等学校化学)
2.固体の溶解度は,一般に温度を上げるとどのようになりますか?
溶解度の大きくなるものが多い。
 では,気体の溶解度はどうでしょうか。固体や液体の水に対する溶解度は,一般に温度を上げると大きくなるものが多いですが,気体では逆に温度が上がると溶解度は小さくなるものが多いのです。これは,温度が上がると水溶液中の水分子や溶質の気体分子の運動が活発になり,気体分子が溶液から飛び出しやすくなるからです。

第99章 気体の溶解度
(1)気体の溶解度 
 一般に高温ほど小さくなる
 温度が高くなる→溶質の気体分子の運動が激しくなる
 →溶液から飛び出しやすくなる

 ただし,例外もあります。
10 20 30 40 50 60 70 80〔℃〕
He 0.421 0.402 0.390 0.386 0.387 0.393 0.403 0.418
Ne 0.562 0.504 0.465 0.440 0.426 0.421 0.423 0.431
0.974 0.875 0.806 0.761 0.733 0.718 0.716 0.723 0.740
 表の数値は,1013hPaにおいて水1L に溶ける気体の物質量を1000倍したものです。温度が高くなると,熱運動が活発になり,分子の運動エネルギーも大きくなって,分子は水溶液から飛び出しやすくなります。ところで,運動エネルギーは,質量と速度の2乗に比例しますね。水素やヘリウムなどの質量の小さい分子では,分子の熱運動の増加よりも,水分子が拡散にはたらくエネルギーの増加の影響を大きく受けるそうです。そのため,温度が高くなっても空間に飛び出す分子が減少するという現象がみられるということです。

(2)ヘンリーの法則 
 気体の溶解度は,圧力が高い方が大きい。
 
ヘンリーの法則…一定温度のもとで,溶解度の小さい気体が一定量の溶媒に溶けるとき,気体の溶解度(物質量,質量)は,その気体の圧力に比例する。
 ボイルの法則pv より,体積は圧力に反比例
 
一定温度で,一定量の溶媒に溶ける気体の体積は,圧力に無関係で一定になる。
 
 
 炭酸飲料水は,高圧にして二酸化炭素を溶かしています。ところが,栓を開けると二酸化炭素の分圧が小さくなります。したがって,溶けきれなくなった二酸化炭素が気体として発生するのです。
  
 それでは,ヘンリーの法則を確認してみましょう。使うのは注射器と二酸化炭素と水です。
  
  1本の注射器に50mLの二酸化炭素を取り,もう1本の注射器に50mLの水を入れます。2本の注射器をつないで,二酸化炭素の入った注射器のピストンを押します。水と二酸化炭素の入った注射器をよく振ると,二酸化炭素が水に溶けて体積が減少するのが分かります。そこで,水と二酸化炭素全体の体積を調べます。水の体積は変わらないとすると,全体の体積から水の体積を引くと,溶け残った二酸化炭素の体積が分かりますね。

(3)二酸化炭素の溶解 
<実験>
 溶け残った二酸化炭素を捨て,かわりに空気を入れる。
1 注射器の中の水溶液(炭酸水)をこぼさないように注意して,溶け残った二酸化炭素をすべて出す。
2 注射器のピストンを下げながら,空気を20mL入れる。
3 体積の変化がなくなるまで注射器をよく振る。
4 水と気体全体の体積を調べる。



溶けている二酸化炭素の体積〔mL〕
溶け残りの二酸化炭素の分圧〔hPa〕
分圧/体積


1000









 実験結果を確認しましょう。
1では,二酸化炭素の体積と水の体積の和が60mLになりました。溶け残った二酸化炭素は10mLですから,溶けた二酸化炭素の体積は40mLとなります。もちろん圧力は大気圧に等しいですから,約1000hPaです。
 2では,気体の体積と水の体積の和が89mLになりました。水の体積は50mL,空気の体積は20mLですから,水溶液から19mLの二酸化炭素が出てきたことになります。したがって,このとき水溶液中に溶けている二酸化炭素の体積は,40−19=21〔mL〕となります。また,二酸化炭素の分圧は,1000×19/39≒490〔hPa〕です。
 3では,気体の体積と水の体積の和が79mLになりました。水の体積は50mL,空気の体積は20mLですから,水溶液から9mLの二酸化炭素が出てきたことになります。したがって,このとき水溶液中に溶けている二酸化炭素の体積は,21−9=12〔mL〕となります。また,二酸化炭素の分圧は,1000×9/29=310〔hPa〕です。

溶けている二酸化炭素の体積〔mL〕
溶け残りの二酸化炭素の分圧〔hPa〕
分圧/体積

40
1000
25

21
490
23

12
310
26
  それでは,考察です。

 分圧/体積の値は,
ほぼ一定になる。
 注射器を使っているため,水溶液にかかる圧力はつねに約1000hPaで,溶けている二酸化炭素の体積は物質量に比例する。したがって,圧力/物質量の値は一定といえるから,
溶けている二酸化炭素の物質量は圧力に比例する
 後半は少し難しかったかも知れません。
  
 それでは,この章の学習内容を確認しましょう。
確認しよう
1.気体の溶解度は,一般に高温ほどどのようになりますか?
2.1の理由は?
3.気体の溶解度と圧力の関係を示す法則を何といいますか?
4.3の法則を説明しなさい。
5.溶液に溶ける気体の体積と圧力の関係は?


1.小さくなる。
2.温度が高いと,溶液中に溶けている気体分子の運動が激しくなり,溶液から飛び出しやすくなる。
3.ヘンリーの法則
4.一定温度のもとで,溶解度の小さい気体が一定量の溶媒に溶けるとき,気体の溶解度は,その圧力に比例する。
5.圧力に無関係で一定になる。