08ko-100 第100章 沸点上昇と凝固点降下
 水と砂糖水とでは,水だけの方が早く蒸発するのを知っていますか。また,海水でぬれた水着は,真水でぬれた水着より乾きにくいですね。どうしてでしょう。
    
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)蒸気圧降下
(2)沸点上昇
(3)凝固点降下
(4)電解質の凝固点降下度
思えているかな?
1.蒸気圧とは何ですか?
密閉し容器内に適当量の水を入れて放置すると,その上部の空間に蒸発した水蒸気が,一定温度では一定の圧力を示すようになる。このとき,上部の空間は水蒸気が飽和した状態になっており,このときの圧力を水の飽和蒸気圧(または単に蒸気圧)という。
2.電解質とは何ですか?
水溶液が電気を通す物質をいう。
 それでは,溶媒の蒸気圧と溶液の蒸気圧を比べてみましょう。

第100章 沸点上昇と凝固点降下
(1)蒸気圧降下 
 溶媒の蒸気圧>不揮発性物質を溶かした溶液の蒸気圧
 
蒸気圧降下
 溶質が増えると,水面に並ぶ水分子が減る
 →蒸発する水分子が減る
 →蒸気圧が小さくなる


 
 
 溶液の方が蒸気圧が小さくなるのですね。蒸気圧が小さくなれば,沸点はどのようになるのでしょうか。次は沸点について考えてみましょう。
 
 ところで,水の状態図を覚えていますか。三重点から右にのびている曲線が蒸気圧曲線,左上にのびている部分が融解曲線,左下にのびている曲線が昇華曲線でしたね。

(2)沸点上昇 
 蒸気圧降下→沸点上昇
 溶媒の沸点=
〔℃〕
 溶液の沸点= 〔℃〕
 
Δt  沸点上昇度
 溶質の種類に無関係
 溶媒に固有の値
 水のモル沸点上昇=0.52〔K〕
 
溶液の質量モル濃度に比例
 
  
 沸騰しているみそ汁は,本当に熱いですね。沸点上昇により100℃を超えているのです。
   
 それでは,溶液の凝固点はどうなるのでしょうか。溶液の凝固点は水の凝固点よりも低くなります。

(3)凝固点降下 
 水の凝固点=0〔℃〕
 水溶液の凝固点=− 〔℃〕
 0−(− )=Δt  
凝固点降下度
 溶質の種類に無関係
 溶媒に固有の値
 水のモル凝固点降下=1.85〔K〕
 
溶液の質量モル濃度に比例
 沸点上昇も凝固点降下も,共に溶質の種類に無関係で溶媒に固有の値であることがポイントです。また,質量モル濃度に比例することを押さえておきましょう。
 ところで,凍結防止剤を知っていますか。冬に橋のたもとや峠においてあります。その袋を見ると,塩化カルシウムCaClとかいてあります。どうして,塩化カルシウムなのでしょうか。
   

(4)電解質の凝固点降下度 
 NaCl→Na+Cl
 NaClが mol→Na mol,Cl mol
 凝固点降下度は全溶質粒子の質量モル濃度の総和に比例
 イオン濃度は溶質の2倍の濃度→凝固点降下も2倍

 CaCl→Ca2++2Cl
 CaCl mol→Ca2+ mol,Clが2 mol
 イオン濃度は溶質の3倍の濃度→凝固点降下も3倍

 砂糖なら塩化カルシウムの3倍の物質量が必要なのですね。道路が砂糖だらけになってしまいます。
   
 それでは,この章の学習内容を確認しましょう。
確認しよう
1.一般に,溶媒より沸点の高い不揮発性物質を溶かした溶液のに蒸気圧は,純溶媒に比べて低くなります。この現象を何といいますか?
2.溶液の沸点は純溶媒より高くなります。この現象を何といいますか?
3.純溶媒と溶液の沸点の差を何といいますか?
4.溶質の濃度が1mol/kgに相当するときの溶液の沸点上昇度を何といいますか?
5.溶液中の溶媒が凝固し始める温度は,純溶媒の凝固点より低くなります。この現象を何といいますか?
6.純溶媒と溶液の凝固点の差を何といいますか?に
7.溶質の濃度が1mol/kgに相当するときの溶液の凝固点降下度を何といいますか?


1.蒸気圧降下
2.沸点上昇
3.沸点上昇度
4.モル沸点上昇
5.凝固点降下
6.凝固点降下度
7.モル凝固点降下度