今までにいろいろな化学平衡を学んできましたが,この章では溶解平衡について考えてみましょう。 塩化ナトリウムを水に加えていくと,はじめはよく溶けますが,やがて溶けなくなります。このとき,次のような平衡が成立しています。
この章の学習内容は,次の通りです。 (1)溶解平衡と共通イオン効果 (2)難溶性の塩の溶解平衡 (3)硫化物の沈殿 (4)ヨウ化鉛(II)の沈殿 まず最初に,溶解平衡と共通イオン効果からはじめましょう。 |
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塩化物イオンの検出には,硝酸銀AgNO3水溶液を使いますね。塩化銀AgClの白色沈殿ができるからです。塩化物の沈殿は,塩化銀と塩化鉛PbCl2だけです。ともに白色沈殿ですが,塩化鉛PbCl2は熱湯に溶解します。 ハロゲン化銀のうち,フッ化銀AgFは水に溶けます。ところが,カルシウム塩のうち,フッ化カルシウムCaF2だけは水に溶けないのです。どうしてでしょうか。次の表を見てください。
それでは,塩化銀は水に少しも溶けないのでしょうか。理科年表によると,塩化銀の溶解度は20℃で0.000155(100gの飽和溶液中に存在する各物質の質量〔g〕)となっています。少しも溶けないということではないのですね。 |
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金属イオンの分離・確認の重要な沈殿物として,金属の硫化物がありますね。色の違いや液性によって沈殿の様子が変わるのが特徴です。溶液のpHに関係なく沈殿するイオンは,Ag+(Ag2S黒),Pb2+(PbS黒),Cu2+(CuS黒),Cd2+(CdS黄)などです。中性や弱塩基性で沈殿するイオンはNi2+(NiS黒),Zn2+(ZnS白;弱酸性でも沈殿する),Fe2+(FeS黒;アンモニア塩基性で沈殿する)などです。どうして,液性の違いによって沈殿したり,しなかったりするのでしょうか。 |
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水溶液のpHと硫化物の沈殿の生成について,定量的に考えてみることにしましょう。
ヨウ化カリウムKI 水溶液に硝酸鉛(II)Pb(NO3)2水溶液を加えると,ヨウ化鉛(II)の沈殿が生じます。この沈殿ができる瞬間が溶解平衡と考えると,このときの鉛(II)イオンの濃度[Pb2+]とヨウ化物イオンの濃度[I-]がわかれば,溶解度積を求めることができます。 硝酸鉛(II),ヨウ化カリウムは,それぞれ次のように電離(解離)します。
[Pb(NO3)2]=[Pb2+] [KI]=[I−] いま,硝酸鉛(II)水溶液の体積をx mL,溶解平衡に達したときのヨウ化カリウム水溶液の体積をy mLとします。
Ksp(PbI2)=[Pb2+] [I−]2 は一定になるはずです。 |
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それでは,この章の学習内容の確認です。
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答
1.溶解平衡
2.共通イオン効果
3.溶解度積
4.CuS,Ag2S