この章から,高分子化合物について学習しましょう。普通の化合物の分子量は500以下であることが多いですが,分子量が1万を超えるような巨大な分子を高分子といい,その化合物を高分子化合物といいます。 高分子化合物は,食品,衣料,材料などとして私たちの生活を支えています。また,私たちを含む生命体を構成し,生命を維持する物質も高分子化合物です。 この章からしばらくの間は食品の化学です。私たちは生命と健康を維持するために食物を摂取しています。食品に含まれているデンプンやタンパク質などは天然の高分子化合物です。生活に欠かすことのできない大切な物質です。これらの物質を化学的にみていきましょう。 この章では,単糖類について学びます。これ以上加水分解されない糖類の構成単位が単糖類であり,代表的なものはグルコース(ブドウ糖),フルクトース(果糖),ガラクトースなどです。 単糖類分子が環状構造をとるとき,原子6個からなる六員環構造と,原子5個からなる五員環構造があります。六員環構造をピラノースpyranoseといいます。ピラノース環は,シクロヘキサンC6H12と同じく,いす型配座と舟型配座の両方をとることができますが,いす型配座の方が安定です。 グルコースには,α-グルコースとβ-グルコースがあり,水溶液中では鎖状構造とともに平衡状態になっています。α-グルコースとβ-グルコースの違いは,1番炭素に結合しているヒドロキシ基(-OH)の向きです。この違いに注意して下さい。 グルコースの鎖状構造では,1番炭素がアルデヒド基(-CHO)になっています。
なお,グルコースは植物の果実,花の蜜などに含まれており,血液中には約0.1%存在しています。蜂蜜の主成分であり,甘みはショ糖の0.6倍だそうです。 この章の学習内容は,次の通りです。 (1)グルコース (2)フルクトース 両方とも,代表的な単糖類です。 それでは,グルコースからはじめましょう。 |
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グルコースの次はフルクトースです。 フルクトースは,結晶中では六員環の環状構造であるβ-フラクトピラノースになっていますが,水溶液中では五員環の環状構造であるβ-フラクトフラノースと鎖状構造との平衡状態になっています。 鎖状構造では,一見アルデヒド基はないように思えます。2番炭素はケトン基(>C=O)になっており,1番炭素にはヒドロキシ基(-OH)が結合しているだけです。しかし,この構造には異性体の平衡が存在し,1番炭素がアルデヒド基(-CHO)になりうるのです。少し難しいかもしれませんが,このアルデヒド基により,還元性が説明できるのです。 鎖状構造の6番炭素のヒドロキシ基(-OH)の酸素原子が2番炭素を攻撃して結合ができると,六員環構造のピラノース型になります。また,鎖状構造の5番炭素に結合しているヒドロキシ基の酸素原子が2番炭素を攻撃して結合ができると,五員環構造のフラノース型になります。水溶液中では,大部分が六員環構造のピラノース型であるといわれています。 なお,フルクトースは果物の汁や蜜に含まれており,糖類の中では甘みは最大といわれています。 |
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単糖類には,グルコースやフルクトース以外に,ガラクトースgalactoseもあります。ガラクトースはラクトース(乳糖)の成分で,Galactumとは乳という意味だそうです。 単糖類は,糖類の構成単位です。ですから,しっかりと理解しておいて下さい。そして,せめてα-グルコースの構造式がかけるようになって下さい。また,還元性を示す理由も大切です。 それでは,この章の学習内容の確認です。
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答
1.単糖類
2.C6H12O6
3.グルコース,フルクトース,ガラクトースなど
4.還元性
5.六員環構造;ピラノース,五員環構造;フラノース