この章では,二糖類について学びましょう。二糖類とは,単糖類分子2個が脱水縮合したかたちの化合物です。
右側のα-グルコースの1番炭素と,1番炭素と5番炭素の間の酸素原子との間の共有結合が切れると,開環構造になります。そのとき,1番炭素はアルデヒド基になりますから,還元性を示します。 この章の学習内容は,次の通りです。 (1)マルトース (2)スクロース (3)セロビオース それでは,マルトースからはじめましょう。 |
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次はスクロースです。私たちに最もなじみ深い糖ですね。スクロース=ショ糖ですが,砂糖はスクロースの製品のことを示しているようです。最も純度の高いものは,結晶状になった氷砂糖です。 スクロースはα-グルコース分子とβ-フルクトフラノース分子が,1−2結合した構造をしています。α-グルコースが還元性を示すのは,開環構造のときに1番炭素がアルデヒド基になるのでしたね。また,β-フルクトースが還元性を示すのは,開環構造のときに2番炭素のケトン基(>C=O)がヒドロキシ基(-OH)に変わり,1番炭素のヒドロキシ基がケトン基になって,結局1番炭素はアルデヒド基(-CHO)になったのでしたね。ところが,スクロース分子では,α-グルコースの1番炭素と,β-フルクトースの2番炭素が酸素原子を挟んで結合しているため,開環構造をとれないのです。その結果,還元性を示さないことになります。 ところが,スクロースを加水分解すると,グルコースとフルクトースの等量混合物になります。この混合物を転化糖といい,転化糖は還元性を示すようになります。転化糖はハチミツの主成分です。 スクロースは右旋性です。加水分解して生じるグルコースは右旋性,フルクトースは強い左旋性です。したがって,この混合物は偏光を左に旋回するのです。そこで,この加水分解の過程を転化といい,分解によって生じる混合物を転化糖というのです。 旋光性については,アミノ酸の学習の前に扱います。 |
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セロビオースはあまりなじみがありませんね。しかし,セルロースはよく知っていると思います。実は,セロビオースとセルロースは関係があるのです。詳しくは,多糖類のところで説明しましょう。 セロビオースは,β-グルコース分子2個が,1−4結合しています。頭の中で想像するのは難しいのですが,β-グルコース分子の1番炭素に結合しているヒドロキシ基(-OH)は上向きですね。また,4番炭素に結合しているヒドロキシ基は下向きです。ちなみに,マルトースでは,2個のα-グルコース分子が1−4結合しています。1番炭素に結合しているヒドロキシ基は下向き,4番炭素に結合しているヒドロキシ基も下向きです。 分子モデルをみて下さい。右側のβ-グルコース分子が裏返っているのがわかりますか。その結果,下の分子モデルでわかるように,平面的な分子になっているのです。実は,この構造がセルロースのかたちに大きく影響するのです。 |
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二糖類には,他にラクトースがあります。ラクトースは乳糖ともよばれており,β−ガラクトース分子とα−グルコース分子が1−4結合した構造をしています。α−グルコース分子の1番炭素は結合に関与していませんから,還元性を示します。 それでは,この章の学習内容の確認を行いましょう。
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答
1.α-グルコース
2.α-グルコースとβ-フルクトース
3.β-グルコース
4.スクロース
5.還元性を示す構造をつくるα-グルコースの1番炭素原子とβ-フルクトースの2番炭素原子が酸素原子をはさんで結合しているため。