08ko-134 第134章 ゴム
 
 この章では,ゴムについて学びましょう。本校の化学講義室の後ろに鉢植えのゴムの木があります。以前,あのゴムの木からラテックスを採取しようとした生徒がいました。おかげで,ゴムの木は傷だらけになってしましました。
  
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)天然ゴム
(2)合成ゴム
(3)ゴムの弾性
 ゴムは伸び縮みが特徴ですね。分子の構造に注目しましょう。
     
思えているかな?
1.付加反応とはどのような反応ですか。
不飽和結合が切れて他の原子が付加する反応
2.付加重合とはどのような反応ですか?
付加反応が連続して起こり,分子量の大きい化合物(高分子化合物)を生じる反応

第134章 ゴム
(1)天然ゴム
 イソプレンが鎖状に付加重合したもの
 CH=C(CH)−CH=CH -[-CH−C(CH)=CH−CH-]-
イソプレン ポリイソプレン
 トランス型ポリイソプレン…グタペルカ(熱可塑性樹脂状物質)
 生ゴム 硫黄 弾性ゴム
加硫

シス型ポリイソプレン

トランス型ポリイソプレン
 トランス型ポリイソプレンをグタペルカとよびますが,これは硬いのでゴルフボールの外皮や歯科用充填材などに利用されます。
  

      
 加硫によって,架橋構造ができますが,それにより弾性や強度が大きくなるそうです。硫黄が5%以下では軟質ゴムです。30%以上ではエボナイトになります。
 
次は合成ゴムです。
   

(2) 合成ゴム
 イソプレンやイソプレンによく似た分子構造の単量体を付加重合

<ポリブタジエンBR>
 CH=CH−CH=CH -[-CH−CH=CH−CH-]-
1,3−ブタジエン ポリブタジエン

ポリブタジエンBR

<ポリクロロプレンCR>
 CH=CCl−CH=CH -[-CH−CCl=CH−CH-]-
クロロプレン ポリクロロプレン

ポリクロロプレンCR

<スチレンブタジエンゴムSBR>
 スチレンと1,3−ブタジエンを共重合
 CH=CH
 | …CH−CH=CH−CH CH−CH−…
 C
  スチレン
 CH=CH−CH=CH
1,3−ブタジエン スチレンブタジエンゴム

スチレンブタジエンゴムSBRの一例

<アクリロニトリルブタジエンゴムNBR>
 CH=CH
 | …CH−CH=CH−CH CH−CH−…
 CN
 アクリロニトリル CN
CH=CH−CH=CH
1,3−ブタジエン アクリロニトリルブタジエンゴム

アクリロニトリルブタジエンゴムNBRの一例

<フッ素ゴムFKM>
CF=CH CF=CFCF −CFCH −CFCF(CF)−
 フッ化ビニリデン ヘキサフルオロプロペン

フッ素ゴムFKMの一例

<シリコーンゴムQ>
(CHSiCl −Si(CHO−
 ジクロロジメチルシラン

シリコーンゴムQの一例

 ブタジエンゴムBRはタイヤやホースなどに使われています。
  
 クロロプレインゴムCRはコンベアーベルトなどに使われています。
 
 スチレン−ブタジエンゴムSBRはタイヤやホース,パッキングなどに使われています。
 
 アクリロニトリル−ブタジエンゴムNBRはガソリンホースなどに使われています。
 
 シリコーンゴムQはほ乳瓶の乳首などに使われています。
     
 最後におもしろい実験を紹介します。

 ガラス管の中には,輪ゴムをつないだものが入っており,輪ゴムの下にはおもりを吊しています。このガラス管の中を,氷水と熱湯を通すと,おもりの位置はどのようになるでしょうか。
 

 氷水を通すと,ゴムは伸びます。逆に,熱湯を通すと,ゴムは縮みます。不思議な気がしませんか?冷やすと伸びるのですよ。また,温めると縮むのですよ。  

(3) ゴムの弾性
 輪ゴムを冷やす→のびる
 輪ゴムを温める→縮む
 高温→分子の動きが激しくなる→縮む

 ゴムの弾性を示す高分子化合物は,鎖状分子で,分子の対称性が悪く,室温付近では複雑に曲がりくねった構造をとる特徴があります。理由がわかっていても,温度を上げると縮むというのは,やはり不思議な気がしますね。
 それでは,この章の学習内容の確認です。
確認しよう
1.生ゴムを乾留すると,何が得られますか?
2.トランス形のポリイソプレンを何といいますか?
3.生ゴムに何を加えると弾性ゴムが得られますか?
4.ブタジエンゴムの原料である1,3-ブタジエンの示性式を示しなさい。
5.クロロプレンゴムの原料であるクロロプレンの示性式を示しなさい。
6.輪ゴムに熱湯をかけると,輪ゴムは伸びますか,縮みますか?


1.イソプレン
2.グタペルカ
3.硫黄
4.HC=CH−CH=CH
5.HC=CCl−CH=CH
6.縮む