葛城古道 葛木坐火雷神社(笛吹神社) 平成16年10月23日 秋晴
 
葛城古道のお地蔵様
 
茜色のとんぼがじっと枯れ草にとまって動かない。はや、迸る葛木の水は冷涼。葛城山麓公園から葛木火雷神社(笛吹神社)までの小径を、のんびりと、小半刻ほど逍遥した。道沿いの畑の大和芋の葉は、黄色にもみじしている。棚田の刈り取りはほぼ終えて、ところどころに黄金の稲穂を残す田がある。山口集落への上りの道をゆく。稲株あとが列をなす刈田ごしに平岡の極楽寺の屋根がのぞく。秋日に照る屋根瓦の向こうには大和盆地がのびやかに広がる。畝傍山を中に、左に耳成山、右に天香具山。その背に三輪山と多武峰がはるかに霞む。この二つの山の狭間を泊瀬街道がはしる。日は真上にある。腹がぐうと鳴ったので、刈田の畦に腰をおろして弁当。落ち着いたところでまた山際の道を歩いていく。
 
葛木坐火雷神社(笛吹神社)
 
すすきの銀穂は風にゆれ、群れすすきは白い波となる。溜池で釣りする人たちを見ながら、山際の道から少し下る。やがてこんもりしたイチイガシの林の杜に至れば、葛木坐火雷神社(笛吹神社)。御祭神は、火雷大神、天香山命。神さびた境内の階段を上る。すぐに据えられた大砲が目に入る。日露戦争記念の露西亜製の大砲である。砲身を斜め上に突きだし、錆てはいても、今にも弾を打ち出しそうな構え。さらに石段を上がると拝殿。拝礼。祭礼の準備をなさっていた方に会釈。祭りでは、十二振提灯を伊勢音頭で囃しながら奉納するという。山手の本殿裏にまわると、古墳の石室の開口部が見える。神社は笛吹古墳群にある。神社の前の小径は、一言主神社に通じ、「一言寺道」という名らしい。この道を平岡集落方向に復路をとる。白壁の美しい古家の間を抜けると、谷あいにつくられた田の道となる。その道脇に石の地蔵様が、凛としたお顔で、ただただ閑かに立っておられた。手を合わせる。青々した葱畑の香気をくぐりぬけて小坂を上がる。秋空にのんびりと軽飛行機が舞っていたので、空を見上げていたら、仕事着の初老の男性に何処に行くのかと尋ねられる。極楽寺だと言えばここだと教えられる。お寺の前にいたのに気かずにいたのだ。それほどにこじんまりとした平岡山極楽寺。参詣。少し遠回りして葛城山麓公園に戻る。あの人は寒山か拾得かであったかもしれない。