河内路 交野 磐船神社  平成15年12月7日 天晴
 
磐船神社拝殿と磐座(「天の磐船」)
 
初冬のひとひ、交野の里を貫流し淀川に注ぐ天野川を遡り、樫の林に覆われた渓谷の奥、生駒市田原との境に鎮座する磐船神社に参詣した。古く天野川に沿って「上つ鳥見路」という古代の道があり、後の世には「磐船街道」「割石越え」と呼ばれた。この古道は斑鳩に通じ、さらには熊野に至る道であった。御祭神は、物部氏の祖先神の饒速日命である。この神社は、巨石信仰の痕を残し、ご神体は巨石の磐座の「天の磐船」である。岩窟は行者霊場であり、岩窟めぐりで知られている。生駒山系の北端に位置し、饒速日命が天照大御神の詔により天孫降臨された地ともされ、「河内国河上哮ヶ峯」と呼ばれている。物部氏と蘇我氏との崇仏・排仏論争、修験道との関わりによる神仏習合、近隣の村どうしの争いなど、長い歴史をくぐり抜けて今に至る。深閑とした佇まい。身を清めて拝殿にて柏手を打つ。
 
磐船神社と天野川
 
天野川の川辺に下りる。川面にもみじ葉を浮かべてゆるやかに流れる。穏やかな静かな時間がここにある。本流は新しくできた天野川トンネルをくぐって流れている。神社から小坂を少し下れば、朱色の小さな鳥居が立つ。ほの暗い林に滝音がもれる。小径を行けば、ひんやりとした風がそよぐ。すぐに白龍の滝である。祠がいくつかお祀りされ、小滝の横には不動明王様がおいでる。神秘的な空間である。拝礼。こうして木枯らしの吹く季節の小散策を終えた。冬の寒さは、ものの真価を露わにする。