河内路 交野 七夕伝説  平成15年11月15日 曇り
 
機物神社(交野市倉治)
 
昨日から冷え込みがきつくなった。毛布一枚をよけいに掛けて寝はじめる季節。正午までなんやかや仕事を片付けて、(片づかないことばかりであるが片づくものは片づけ、ケリのつかないことは先送り)、昼から残り物を弁当箱に詰め込み携えて散歩に出る。本日の主題は「七夕伝説」。交野の地は、星に纏わる伝説が残り、地名に刻まれている。交野市倉治にある機物神社まで歩くことにした。紀貫之の歌、「一年に一夜に思へどたなばたの逢ひ見む秋の限りなき哉」(拾遺和歌集)を思いつつ、三角形の山形の交野山を目印に、府道と畦道をさくさくと歩く。その名も「天野川」に架かる逢合橋に至る。織り姫と彦星とが年に一度の逢瀬の所だ。ここは道の八街となっており、交通の要衝である。
 
天野川(逢合橋の下流から望む)
 
逢合橋を渡る。砂子坂あたりは、開店したばかりのショッピングセンター「いずみ」に買い物に向かう車で混雑。京阪電車交野線の踏切を横切る。住宅街を抜けて行く。道が大きく曲がる所に住吉神社。氏子総出で私部山から運び出して再建された石の大鳥居を見上げる。この住吉神社の御祭神は、底筒男命、中筒男命、表筒男命、息長帯姫神(神功皇后)。社殿は奈良春日神社の旧社殿を移築したもので、春日造り。本祭には渡御があり、宵宮祭から東西二台のだんじりが賑やかに曳き出されるとのこと。本日は七五三とあって、お参りする正装した家族に出会う。色の鮮やかな着物を着た稚児は、神様とのつながりを思わせる神秘的な雰囲気を感じる。拝殿では神主と巫女とが神事を行なっている。振られる玉鈴の音が響く。神社の裏手を流れる天野川の支流の小さな流れを辿っていく。静かな道端の草の上に座して弁当をつかう。こうして食べ物があることの幸せを思う。刈田を隔ててJR学研都市線と併行する府道を往く。田の畦に大豆が植えられている。さらに歩けば、大豆を収穫する老婦人に出会う。食生活を省みれば、ほとんどが食品として整えられているかたちで買い物する。その元のすがたを見ることはない。老農婦人の作業はまさに、地から生え出た大豆を食べ物として収穫するそのものであった。さらに乾燥させ実を取り出さねばならないものだ。
 
牽牛石(枚方市香里ヶ丘)
 
倉治の地に到達すれば、府道の脇に立つ鳥居によって機物神社と知れる。長い静かな参道を砂地を踏みながら山手側に進んでいく。大きな石の灯籠が並ぶ。機物神社の御祭神は、天棚機比売大神、栲機千々比売大神、地代主大神、八重事代主大神。創建の年代は未詳。社伝によれば、文明八年三月に神祇管領であったとのこと。当地の産土神である。参拝。門の所には、織機が無造作に保存されている。倉治の古い家並みの間を通って帰路につく。狭い路地で男子中学生3名に思わず挨拶をされる。突然なことであり戸惑ったものの、うれしかった。ひょっとすれば不審者への警告だったかも知れない。しかし、それはそれでしっかり者たちだ。なんだかとてもうれしかった。たこ焼きを買い小川のほとりで食べる。日は陰ってきた。こうして3時間あまりの小さな七夕伝説の逍遥を終えた。枚方市香里ヶ丘の小高い丘の観音寺の跡には、「牛石(牽牛石)」がある。ここから見渡せば、はるかに交野の地が広がっている。